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世の中には自分と同じ顔の人物が3人いる、なんてことを聞いたことはないだろうか?
それとは別にもう一人の自分というものに、ドッペルゲンガーというものがある。
これはわりと有名で、怪談話とかだと鉄板ネタだったりするんじゃないだろうか。
あとは二重人格というのもある。
こっちはドッペルゲンガーよりもさらに有名だと思う。
ドッペルゲンガーはいうなれば都市伝説的なオカルト寄りの話だが、二重人格の方は実際の病気として存在する。
つまりはドッペルゲンガーよりも、現実的にあり得る話だ。
なぜ、この3つの話をしたのかというと、今、俺が悩まされている事象に関して、この3つのどれかじゃないかと予想している。
ただ、どれも『近い』のであって、厳密に言うとどれも『違う』。
ことの始まりは、遡って考えると、あることがきっかけだったような気がする。
それは数年前にある宗教に勧誘されて、宇宙人に乗っ取られそうになったという現実離れしたことがあった。
ただ、これは今起こっている非現実的なことから考えて、共通しているというだけで、全然関係ない可能性もある。
なので、この話は一旦、置いておくとしよう。
直接、今回のことに関係あることから話すと、それはなんてことはない、風邪をひいて会社を休んだ普通の平日のことだ。
その時は物凄く体調が悪くて、逆に病院に行く気力さえもなかった。
だからずっと家で寝てたわけなのだが、今、思えば無理してでも病院に行けばよかった。
これはただの結果論だし、そんな想定の話をしても意味がないので話を進めよう。
とにかく体調不良で1日仕事を休み、次の日には若干、怠さは残っていたけれど普通に出勤した。
それで隣の同僚に「昨日は休んですみませんでした」と言った。
そしたら同僚に「ん?」って返された。
そして逆に「昨日の件だけど」と、仕事の話を振られた。
なんのことを言っているのかわからなかったけど、その場は何とか雰囲気で切り抜けて、パソコンを開いてみる。
驚くことに昨日は出勤していることになっていた。
仕事で使っているチャットでも普通に俺のアカウントから書き込みされているし、タスクも進んでいる。
もちろん、出勤した記憶はないし、仕事を終わらせた記憶もない。
なので昨日、休むと連絡した上司に聞きに行った。
「休むって連絡したけど、体調がよくなったって言って、来てたじゃないか」
そう上司に言われて、俺は頭を抱えることになった。
物凄く不気味なことだったけど、悩んだところでどうしようもないし、誰かに相談できることでもない。
だから自分の中で、単なる記憶違いということで無理やり納得させた。
それから数週間後。
俺は元々有休を取る予定があり、会社を休んだ。
その日はずっと待っていたゲームの発売日で、その日を休むためにタスクも前倒しで終わらせていた。
休みを取って1日中ゲーム三昧で楽しんだ。
そして休み明けの出勤日に、また同じようなことが起こった。
俺は出勤していて、仕事をしていることになっている。
上司には「当日に有休を取り消すのはあんまりよくないぞ」と注意された。
おかしい。
前回は風邪のせいで記憶が混濁してたという可能性がゼロではなかったけど、今回は違う。
ちゃんとゲームのセーブデータも残っている。
現実にゲームをしていた俺が存在していたという証明だ。
じゃあ、俺の代わりに出勤してたやつはなんなんだ、ということになる。
そこで俺は試しに、無断欠勤をしてみた。
そしたら、また、俺の代わりに誰かが出勤していた。
今度は会社の前でずっと見張ってみた。
けど、就業時間になっても俺らしきやつは現れなかった。
そして、上司から電話が来て、「遅刻するなら前もって連絡しろ」と怒られた。
色々実験してみたところ、俺が休めば必ず代わりに出勤し、俺が出勤すれば代わりのやつは絶対に現れない。
正体を探ろうとしても、現れないということがわかった。
完全にこっちの動きを把握しているとしか思えない。
ただ、色々と実験をしているせいで、俺の中でこの現象が恐怖感が薄れ、逆に利用するようになった。
自分が休んでも勝手に仕事をしてくれる。
こんな便利な存在を利用しない手はない。
そのときはそう思った。
今考えれば、これは完全に悪手だった。
俺は週に2回休むのを上限にしようと決めたが、1ヶ月もすると3回、4回と増えていった。
そうなると、今度は仕事自体が把握できなくなり、把握するのが大変になってくる。
そうなってくると、1ヶ月に1回、行くか行かないかになっていた。
もちろん、その間も普通に給料は振り込まれる。
だから働くのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
そして、ある土曜日のことだった。
家でゲームをしていると、家に誰かが訪ねてきた。
出てみると、若い女だった。
「誘ってもらったので、来ちゃいました」
その女は照れながらそう言った。
頭が真っ白になった。
その女は「誘われた」と言った。
つまり、俺の代わりに出勤してるやつが、その女を『俺の家』に呼んだということだ。
俺は慌てて、具合が悪いと言って、なんとかその女を追い返した。
慌てて、月曜日に久しぶりに出社してみる。
そこには土曜に俺の家に来た女がいた。
どうやら、新人で、『俺』の部下らしい。
出社してみたものの、全く仕事にならなかった。
今、何の仕事をしているのかさえわからないし、話についていけない。
当たり前の話だが、完全に会社の中で俺の居場所はなくなっていた。
その日は早退して、家に帰る。
もう会社に行くのはやめよう。
そう決意した次の日。
テーブルの上に『そろそろ消えてもらおうかな』と書いた紙が置いてあった。
俺の字で。
そして、さらに気付いたことがある。
俺の睡眠時間が長くなっている。
たぶん、1日のうちに5時間も起きてないと思う。
これは一体、なんなんだ?
世の中には自分と同じ顔の人物が3人いる、ドッペルゲンガー、二重人格のどれだろう?
どれも『近い』ようで、どれも『違う』気がする。
けど、今はそんなことはどうでもいい。
『消えてもらう』って、何をされるんだ?
いったい、どうやって『俺』を消しにくるんだろうか?
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