本編
最近、母親がヨーグルトにハマっている。
食べるのはもちろんだが、作る方のにもハマっているようだ。
とはいえ、俺の母親は結構ズボラで、面倒くさがりなところもある。
この前も家庭菜園にハマって、3ヶ月で全部枯らした実績があるのだ。
まあ、今回のヨーグルトだって、そのうち飽きるだろう。
なにより牛乳のパックにそのままヨーグルトを入れて放置するという作り方な時点で、あまりやる気が見えない。
普通は専用の容器を買ってきて、それに作りそうなものだが、それすらしない。
本当に、面倒くさがりなのだ。
それに、家族の中でヨーグルトが好きなのもほとんどいない。
妹が最初は珍しがって食べていたが、今では食べているところを見たことがない。
俺だって、あまりヨーグルトは好きじゃない。
あの酸っぱい感じがどうも苦手なのだ。
けど、そんなとき、話のはずみでAさんに、家でヨーグルトを作っていることを話したら、どうやらAさんも作っているようで、話が弾んだ。
グッジョブだ、母さん。
その中で、俺はAさんにヨーグルトを美味しく食べれる方法を聞いた。
なんでも、牛乳と割って、飲むヨーグルトにすると結構、美味しいらしい。
いや、それって薄まるだけじゃんと思ったが、そんなことは口が裂けても言わない。
それに、せっかく教えてくれたんだから、やるだけやってみよう。
もしかすると美味しいかもしれないし。
ということで、帰って、さっそく飲むヨーグルトを作ってみた。
まずはヨーグルトを作っている牛乳パックからヨーグルトを入れて、次に牛乳を入れる。
出来上がったのは、思ったよりも水っぽいものだった。
牛乳を入れる分量を間違えたかと思ったが、ちゃんと聞いた通りに作っているから大丈夫なはずだ。
とりあえず飲んでみる。
すると、物凄く酸っぱかった。
薄まるどころか、濃くなったように感じる。
そして、なんか、すげーマズい。
とりあえず、明日、Aさんには美味しかったと言っておこう。
なんてことを考えていたら、母さんが買い物から帰ってきて、こう言った。
「またヨーグルトのタネ、貰って来たの」
そして、タッパに入ったヨーグルトを掲げていた。
終わり。
■解説
ヨーグルトのタネを貰って来たということは、現在はヨーグルトは「ない」ということになる。
つまり、語り部は「ヨーグルトのようになった牛乳」を飲んでしまったのである。
この後、語り部はトイレに駆け込むか、病院に行くことになる可能性が高い。