本編
最近はAIの技術も格段に進歩してきている。
AIは計算やパターンから選ぶことなど、人間の苦手な部分を超えた存在となった。
しかし、まだまだ人間的な感情を作り出すことが難しい状況となっている。
そんな中、男は人間と同じような感情を持ったAIの研究に没頭していた。
様々な人間からアンケートを取り、それを覚えさせたり、AIに様々なことを教えたりしてAIの性能を上げていった。
しかし、結局は覚えさせたものから選ぶというもので、AIが自ら何かを創作することはできなかった。
男は意地になって、十数年も研究に没頭したが全く良い結果が得られなかった。
そこで男はあることを思い付いた。
そして、男はある場所に引きこもり、その研究に打ち込んだ。
それからさらに数年後。
男は感情を持ったAIを完成させた。
だが、そのAIの知能はまだ低く、5歳児程度の知能しか持ち合わせていない。
このAIの凄いことは自らが考え、新しいものを生み出すというものだった。
想像で絵を描いたり、質問に対して、突飛な答えを出したりなど、今までのAIとは革新的に違っていた。
そのAI自体は別の場所にあり、そのAIがある場所にアクセスして会話をするという形式を取っている。
ある国の研究所は、実際にAIの本体を見たいと言ってきたが、男はずっと秘密にしていた。
最初は様々な人間の興味を引いていたが、AIの知能的な成長が遅いことと、計算など本来AIが得意とする分野が不得意などもあり、徐々に、男が開発したAIのことは世間から忘れられていった。
そして、その頃から男は深く悩むようになった。
AIの本体がある場所に閉じこもり、ずっとAIと会話をする日々。
やがて男は年を取り、死んでしまう。
それから数年後。
男が開発したAIは後を追うようにして死んだ。
終わり。
■解説
AIは機械のはずなので、『死んだ』という表現はおかしい。
また、このAIは普通のAIよりも成長速度が遅く、計算なども不得意だった。
さらに、この男はAIの本体がある場所を決して教えようとしなかった。
このことから、男は「人間の脳を取り出して」機械と結合させる形でAIを作り出していたということになる。