【洒落怖】使ってないはずの合鍵

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休みの日に、突然、母親から電話があった。

「あんた、別荘の合鍵持ってたわよね?」

別荘と言っても、父親が昔、山奥にある一軒家のことで、そんな大層なものではない。
最初は避暑として使っていたが、そのうち、そこに行くことすら面倒になって、ずっと放置している。
正直、俺も、母親に言われるまで、その存在を忘れていたくらいだ。

「持ってると思うけど、なんで?」
「……ちょっと見てきてくれない?」

母親が言うには、3ヶ月前くらいから別荘の電気代の請求が来るようになったらしい。
電気代といっても微々たるもので、誰かが入り込んで使っているほどではないくらいの金額とのことだ。

最初は金額が金額だけに、きっと何かの間違いだろうと、気にも留めていなかったらしい。
だが、3ヶ月連続で請求書がきたので、お金が勿体ないというよりも、不気味という感覚が強まったみたいだ。

面倒くさいとは思いつつも、しばらく実家にも帰ってないし、親孝行もしていない。
少しくらいは親の頼みも聞こうと思って、行くことにした。

ただ、どうせ行くなら、1泊でもして、友達とどんちゃん騒ぎでもしようと思った。
そこで、友達に連絡をしてみたのだが、あいにく、1人しか捕まらなかった。

友達と2人で、3時間かけて別荘へと辿り着く。

到着するまでは本当に遊びに行くという感覚だったが、いざ、別荘を見てみると、少しだけ浮かれていた気持ちが重くなる。

「……なんか、不気味な感じだな」

友達がぽつりとつぶやいた。

俺も同じようなことを考えていたから、否定はできない。

当たり前だが、見た感じは思い出と同じ外見のままだ。
でも、なんというか、友達が言うように『不気味』な雰囲気だった。
山奥で、周りには誰もいないし、木の陰で暗く感じるからかもしれない。

友達は確認だけして、やっぱり町の旅館とかに泊まらないかと言ってきたが、今から戻って宿を取るのも面倒だし、なによりお金がかかるのが嫌だった。
だから、なんとか友達を説得して、別荘で一泊することにした。

部屋の中に入ってみると、空気が淀んでいた。
長年、誰も使っていなかったから、換気がされてなかったんだろう。

まず、俺たちは家の中にある窓という窓を開けて、換気をした。

そして、とりあえず、どこか電気が付けっぱなしになっていないかや、漏電している場所がないかを調べる。
だが、特に電気が使われているようなところはなかった。

電気代がかかっている原因がわからなくて、どうしようかと思っていると、友達が「帰るときにブレーカーを落としておけばいい」と提案してくれた。
確かに、そうしておけば、仮にどこかで漏電していたとしても電気が消費されることもないし、漏電による火事も防げるはずだ。
それに、もし、誰かが入っているのだとすれば、ブレーカーをあげるからわかるというメリットもある。

なので、俺は友達の言うように、帰るときにはブレーカーを落としていくことにした。

そのあとは、とりあえずゲームでもしようと思い、持ってきたゲーム機をテレビに繋いで、友達と一緒にゲームを始める。
それから1時間後に、俺たちは致命的なことに気付いた。

それは、食べ物を全く買ってきてなかったことだ。
お酒は大量に買いこんできたのに、肝心のつまみを忘れていた。

友達は戸棚や冷蔵庫の中にあるものを勝手に漁って食べてしまって、すぐに無くなってしまう。

そこで、俺たちはゲームで勝負をして、負けた方が町に買い出しに行くことにした。

結果は、俺の惨敗。
得意の格闘ゲームで勝負したのに、全然勝てなかった。

いつの間にこんなに強くなったんだろうか?
それか、よっぽど行きなくなくて集中力が高まったか、だ。

おそらく後者だろう。

俺が言い出したことだから、ダダもこねるわけにもいかず、仕方なく片道1時間かけて、町に買い出しに行った。

戻ってみると、友達はすっかり出来上がっていて、泥酔一歩手前状態になっている。
持ってきた酒もほとんど飲んでしまっていた。

念のため、酒も追加で買ってきておいてよかった。
けど、友達がここまで飲めるなんて思ってなかったから、少しびっくりした。

買ってきたものを食べながら、夜通しゲーム三昧するのは、久しぶりに楽しかった。
最初に別荘に来たときは、どうなることかと思ったが、杞憂に終わった。

明け方から少しだけ寝て、お昼になる頃には、片づけをして帰る準備を始める。

最後に、昨日、話していたようにブレーカーを落とそうとしたときだった。

いきなり友達がこう言った。

「俺、もう少しここにいてもいいかな?」

友達はこの別荘が凄く気に入ったみたいだ。
昨日も、いつになくテンションが高かったのは、そういうことだったのかもしれない。

1人で帰るのが寂しいくらいで、特には問題はない。
なので、俺はOKと言って、友達に合鍵を渡した。

それからしばらくして、また母親から電話があった。

もう電気代の請求は来なくなったらしい。
というのも、掛かっている電気代は友達が払っているからみたいだ。

俺はその話を聞いて、かなり驚いた。

あいつ、まだ帰ってなかったのか。
仕事とかどうしてるんだろ?

そして、思い出したことがある。

それは、いつの間にか、あいつが左利きになっていたことだ。

それ以来、俺はその友達と連絡を取っていないし、取るのがなんとなく怖い。

あいつは今も、あの別荘にいるんだろうか?