本編
うちの近所に呪いの館と呼ばれる場所がある。
そこは昔、占いの館という、占い師が集まるビルだった。
そこが廃業となって、廃ビルになってしまったのだ。
それが大体5年前。
そのビルは廃墟化している上に、妙に雰囲気があって、誰も近づかなくなった。
さらにそのビルに入った人は消えてしまうなんていう噂が立ち始める。
そのせいか、そのビルにはホームレスでも近寄らないらしい。
そんな噂を聞きつけて、友達が肝試しに行こうと言い出した。
肝試しなんて久しぶりだと思い、行くことに了承した。
その廃ビルに行ってみると、確かに雰囲気がある場所だった。
不気味で怖い。
それでも勇気を出して入ってみる。
中は片付けがされていなくて、物がそのままの状態だった。
机や、占いに使うような水晶なんかも置きっぱなしだ。
ちょっと不気味だと思ったのが、置いてある鏡が、なぜか全てヒビが入っていることだ。
意図的なのか、偶然なのか。
そんなことを考えていると友達が悲鳴をあげた。
どうしたのかと聞いてみると、友達は水槽の中の金魚を指差した。
ゆうゆうと泳ぐ金魚。
その金魚が一匹、目の前で消えたというのだ。
そんなわけがないと思い、ジッと金魚を見ていると、友達の言う通り金魚が一匹、パッと消えてしまった。
まるで神隠しにあったかのように。
再び、友達が悲鳴をあげた。
でも、それは友達が仕掛けたトリックだと、僕は見破る。
有名な、鏡を水槽に入れて、金魚がその後ろに行くと消えたように見えるトリックだ。
現に壁には鏡が貼ってあったような跡がある。
ただ、それを指摘してもつまらない。
だから僕は大げさに驚いて見せたのだった。
■解説
このビルは5年前から使われていないはずである。
それなのに、金魚が生きているのはおかしい。
誰かがここに住んでいて、金魚の世話をしている可能性が高い。