本編
今日、パチンコ屋で凄い奴に会った。
俺の隣に座ってた奴なんだが、何か打ち方が変わっていた。
なんていうか、ずっと俯いてスロットを打ってた。
スロットの画面を見ないで打ってんだ。
しかも、全くミスをしない。
凄いなって思って見てたら、そいつが気が付いたみたいで話しかけてきた。
面白い奴で、ついつい話が弾んだ。
話していると、そいつは目が見えないと言ってきた。
俺は嘘だと思った。
だって、見えないのにどうやって打つことができるんだって話。
そしたら、そいつは音を聞いていればリールの位置もわかるらしい。
実際に、画面を全く見ないのに子役を100パーセント揃えていく。
そんなを見ると、信じるしかない。
さらに話が弾んで、俺たちは飯を食いに行くことにした。
歩く時こそ杖を突いて歩きづらそうだったが、店に着いてからは目が見えないとは思えないほど、なにをするのにもスムーズだった。
そしてビックリしたのはその食べる量だ。
俺の2倍以上は食べている。
食べ終わったとき、そいつは賭けをやらないかと言ってきた。
勝った方が、あいての分を払うというものだ。
勝負方法は3分以内にルービックキューブを完成させるというもの。
そういって、そいつはルービックキューブを出してきた。
ルービックキューブなんて凄く懐かしい。
俺も一時期、ハマったことがある。
けど、結局、何回やっても何時間かけても一面も完成させられなかった。
それを3分で六面を完成させるなんて無理だろう。
しかも、目が見えないのに。
俺はルービックキューブを適当に動かしてからそいつに渡した。
そしたら、そいつは物凄い勢いでルービックキューブを動かし始める。
そして、あっという間に六面を完成させてしまった。
結果は2分46秒。
凄いと俺が言うと、そいつは照れたようにこう言った。
「確か、目隠しルービックキューブの日本のチャンピオンは33秒くらいでそろえるんですよ」
うわー。
世の中には、上には上がいるものだ。
とはいえ、勝負はあっちの勝ちだから、俺はそいつの分の飯代も奢った。
今日は本当にいいものが見れたから、まあ、安いものか。
終わり。
■解説
目隠しルービックキューブは、目隠しをする前に位置を確認する必要がある。
そして、語り部は最初にルービックキューブを動かしている。
それでもちゃんと完成させている。
つまり、『そいつ』が目が見えないと言うのは嘘になる。
語り部は騙されて、ご飯代を出している。