本編
最近はどこを見ても、スマホ、スマホ、スマホ。
バス、電車、飛行機。
大体の人はスマホを見ている。
飲食店でも待っている人はもちろん、食べている時や誰かと一緒に来ていてもスマホを見ている。
最悪なのは歩きスマホだ。
歩きながらずっとスマホをしている人も少なくない。
中には自転車や車に乗っていてもスマホをしている人もいる。
本当に危ない。
前にスマホを見ながら自転車に乗っている人に轢かれそうになった。
そのときは慌てて避けたけど、きっと相手はこっちが轢かれそうになったことさえも気づいてないかもしれない。
こんなの、いつ事故を起こしてもおかしくない。
そういえば、うちの近くの踏切で、イヤホンをしながらスマホを見ていた人が、自分が遮断機の内側にいることに気づかず、電車に轢かれて亡くなったらしい。
なんとも痛ましい事故だ。
それに、周りに人がいたみたいなのに、その人たちもスマホを見ていたせいで誰も気づかなかったみたいだ。
みんな、スマホを見過ぎる。
だから外ではなるべくスマホを見ないようにしている。
今日も駅を出て、家までの帰り道。
周りはみんなスマホを見ながら歩いている。
そして、踏切に差し掛かり、遮断機が下りてくる。
もちろん、立ち止まって電車が通り過ぎるのを待つ。
そしたら、線路内にイヤホンをして、スマホを見ている人が立っている。
どうやらスマホをしていて、自分が線路内にいることに気づいていないようだ。
周りを見ると、みんなスマホを見ているせいで、線路内の人に気づいていない。
そして、電車も迫ってきている。
声をかけても気づかないだろうから、仕方なく線路内に入り、その人の肩を叩いた。
つもりだったが、スッとその人は消えてしまった。
もしかしたら、ここで電車に轢かれて亡くなった人の幽霊かもしれない。
誰も助けてくれなかったという怨念で幽霊になったのだろうか。
同時に、電車の汽笛が鳴った。
運転手にも幽霊が見えたのだろうか。
終わり。
■解説
電車の汽笛は語り部に向けて鳴ったもの。
つまり、この後、語り部は電車に轢かれてしまった。
