本編
ひと昔前に、海岸に人の足首がいくつも打ち上げられたってニュースがあった。
足首だけが浜辺に落ちていて、それが全部、靴を履いてたらしい。
どちらかというと、靴が落ちてるのを見つけて、拾ってみたら、中に足首が入ってたという話だ。
見つけた人はトラウマになっただろうなぁ。
俺だって、不意にそんなの見つけたらビビりそうだ。
見つかるのは靴を履いた足首だけらしくて、他の部位は見当たらなかったらしい。
しかも、見つかった足は性別も年齢もバラバラだったということだ。
原因としての仮説は色々あるらしい。
妥当とされているのは、足首は事件によるものではなく、事故によるものだということ。
例えば、船や飛行機の事故があって、海に沈む。
沈んだ遺体を魚が食べる。
足の関節は柔らかくて、魚がつつき易いらしい。
だから足の部分だけが千切れるみたいだ。
それで、靴を履いているから、浮きやすくなって、流されて浜辺に打ち上げられる。
海流に沿って流されるから、特定の海辺に行きつくらしい。
なるほど。
確かに納得できる。
だから、昨日、見つかった靴を履いた足首は、きっとそれと同じ感じで流れついたんだろう。
おそらく、警察も事件ではなく事故の方面で調査するはずだ。
ってあれ?
これ、行方不明になってる健司の足じゃん。
ヤバいヤバい。
どこかに埋めないと。
終わり。
■解説
なぜ、語り部は健司の足を埋めないとならないのか。
それは見つかるとマズいため。
つまり、語り部は健司を殺して海に沈めた。
健司の足が見つかれば、失踪ではなく事件として調査されてしまうので、慌てて隠したのである。