本編
ふと立ち寄った定食屋のテレビで、バスが交通事故を起こしたというニュースがやっていた。
そのバスには有名なバスケ選手が乗っていて、意識不明の重体らしい。
学生の頃、バスケをやっていたことや同じ年齢だったこともありその選手のことは知っていたし応援していた。
憧れの選手だった。
自分もああなりたいと。
でも、結局は才能がないと諦めて、バスケを辞めてしまった。
あのとき、死ぬ気で頑張っていたら、人生は変わっていたのだろうか。
そう思っていると、目の前に老人が座ってきた。
老人が「やり直したか?」と聞いてきたので、思わず頷いてしまった。
その瞬間、俺の意識は飛び、目の前には学生の頃の自分がうな垂れていた。
大会で惨敗したときだ。
俺がバスケを辞めたきっかけの試合。
俺は思わず自分に「諦めるな。死ぬ気で頑張れ」と声をかけた。
学生の頃の自分は顔をあげて、頷いた。
これで、俺の人生は変わるかもしれない。
そして、次の瞬間。
俺は病院で目を覚ました。
全身に激痛が走ったかと思うと、意識が遠のいていった。
終わり。
■解説
語り部はバスケを辞めずに、死ぬ気で頑張ったことで憧れの、有名な選手と立場が入れ替わった。
つまり、バスでの交通事故で巻き込まれることになったのは語り部の方になってしまったのである。