配達のバイト
大学が急に休講になったから、配達のバイトをやることにした。
だが、依頼主の家へ持って行く途中に転んでしまい、料理がぐちゃぐちゃになってしまった。
怒られるだろうなと思いながらも、依頼主の家に行き、インターフォンを押す。
謝ろうとしたら、いきなり「誰だ!?」とインターフォン越しに怒鳴られた。
料理の配達と言うと、「玄関前に置いておけ」と言って切られてしまった。
後で苦情が来るんだろうなと思いながらも料理を置いて家を後にする。
パトカーのサイレンの音を聞きながら、自宅に帰った。
その後、警察から連絡があり、配達をしたことを聞かれて呼び出された。
料理を台無しにしたくらいで警察に行くなよ。
終わり。
■解説
注文をした依頼主が、「誰だ」というのと警察が動くのは変だ。
依頼主の家で事件があった可能性が高い。
ナルシスト
その青年は極度のナルシストだった。
自分が一番だと思っているだけではなく、一番であるべきだと思い込んでいる。
さらに男は整形を嫌い、ありのままの自分が一番でいられるように常に努力してきた。
そのため、どんなに顔がよくても整形している相手には目もくれなかった。
しかし、数年に一度は男よりも顔がいいと思う人間に出会ってしまう。
それでも男は一番になるため努力をし、今も一番を保っている。
終わり。
■解説
整形をせずに、努力で一番を保ち続けるのは難しい。
男は自分より顔がいいと思う人間を殺すことで一番であることを保っているかもしれない。
透明人間
知り合いの博士に透明人間になる薬を作って貰った。
薬は副作用が強く、俺は3日ほど高熱に悩まされた。
だけど、そのかいあって俺は透明人間になることができた。
大通りで大声を出しても、誰一人、こちらを見ない。
立ち入り禁止の場所だって、堂々と入れる。
これで俺を虐めていた奴らに復讐ができる。
まずは助けてくれなかった家族だ。
しかし、家に戻っても誰もいない。
それならと、虐めっ子たちのところへ行っても誰もいない。
居留守かと思って、部屋の中も見たけどいなかった。
仕方ない。
復讐は明日からだ。
終わり。
■解説
透明人間でも、声がすれば誰かが反応するはずである。
それに他人の家に自由に入れるのもおかしい。
つまり、語り部は透明人間になったのではなく、幽霊になった。
人懐っこい子供
その子供は人懐っこく、誰とでも仲良くなれた。
人懐っこい性格はいいが、誘拐されないかが両親は心配だった。
なので、子供に「絶対に知らない人には着いていかない」と言い聞かせてきた。
子供は両親の言うことをしっかりと守った。
しかし、そんなある日、子供は誘拐されてしまった。
警察の必死の捜査も虚しく、子供は犯人によって殺害され、両親の元へと帰ることはなかった。
終わり。
■解説
子供は両親の言うことを守ったのに、なぜ誘拐されてしまったのか。
それは犯人が「知り合い」だったからである。
知っている人間だったから、着いて行ってしまった。
懐中時計
大切にしていた懐中時計を失くしてしまった。
やっぱり、外装が壊れてて鎖に繋げていなかったのが間違いだった。
ポケットに入れていたから、どこかに落としたのかもしれない。
昨日行ったお店に忘れてきたんだろう。
今日もKが家に来るし、連続になるけど、またあの店で夕飯を食べよう。
Kが来るのは17時だが、あの店も夕方から開くからちょうどいい。
念のため、もう一回、家の中を探してみた。
そしたら、Kのスマホを見つけた。
Kはスマホがあるから家に時計は置かないって言ってたけど、大丈夫か?
なんて思ってたらKが来た。
まだ11時なのに。
Kは寝ぼけて時計を逆さに見てたらしい。
あー、俺もよくやる。
終わり。
■解説
逆さに見て17時を11時と間違えるのはアナログ時計だけである。
つまりKが懐中時計を盗んでいた。
嘘を付く妖精
ある日、俺は妖精と出会った。
その妖精はこちらが質問をしないと全くしゃべらない。
そして、検証してみたらその妖精の返答は全部嘘だということがわかった。
俺はそれを利用してカジノでかなりの金額を手に入れた。
ルーレットで妖精が赤が出ると言えば黒に賭ければいい。
それを10回くらい試したとき、ふとあることが気になった。
こんな幸運がそんなに続くのだろうか、と。
だから俺は念のために聞いてみた。
「お前の嘘はまだ終わらないよな?」
「いえ、私はもう嘘を付かなくなります」
やっぱり。
危なかった。
じゃあ、次は妖精の言う通りに、全額賭けよう。
終わり。
■解説
妖精は嘘しか言わない。
「もう嘘を付かなくなる」も嘘である。
つまり、語り部は次で全額を失ってしまう。
川で溺れた子供
ある女性から、息子が川で溺れたという通報があった。
警察や救急隊が駆け付けたが、子供は助からなかった。
女性は川辺で遊んでいたら足を滑らせて川に落ちたと証言する。
子供を解剖してみると、窒息死だということが確認できた。
だが、ここで女性にある疑惑がかかる。
子供の体には無数の痣や傷があり、さらに胃の中が空っぽだった。
女性は息子を虐待していたことがわかった。
後日、女性は警察に捕まった。
終わり。
■解説
川で溺れて亡くなったのなら、胃の中には大量の水が入っているはずである。
しかし、子供の胃は空っぽだった。
つまり、女性が子供を殺害し、川に落として事故に見せかけようとしていた。
永遠の命
俺は悪魔を騙して、死んでも生き返られるという契約を結んだだ。
病死でも事故死でも他殺でも、破損した肉体は治って生き返る。
代償は俺の魂で、肉体が消え時に悪魔に渡す。
契約した悪魔は馬鹿で騙しやすかった。
俺はこの契約を利用して悪事の限りを尽くし、膨大な金を得た。
一番儲けられたのは殺し屋で、爆弾を持ってターゲットに突っ込むだけで終わった。
実に楽な仕事だった。
今は船でゆっくりと世界を旅行している。
すると、船が事故を起こし、転覆をし始めた。
慌てている客たちを眺めて楽しむことにする。
そして船は沈没し、海溝へと落ちて行った。
終わり。
■解説
沈んだ海の中で生き返っても、すぐに溺死してしまう。
つまり、語り部は永遠に苦しみ続けることになる。
寝ずの番
村には寝ずの番という風習がある。
お通夜から葬儀まで、線香を絶やさないやつ。
普通は亡くなった人の身内でやるものだけど、俺の村では違う。
担当になったら一人でやるのだ。
知らない人の遺体と一晩中一緒。
さらに鍵をかけられ、時間まで誰も入って来れない。
遺体と一緒なのは慣れた。
けど、昨日はゲームで徹夜したから眠気がピークだ。
少し寝よう。
線香は1本、30分はもつから、4本火をつければ2時間寝られる。
線香に火をつけて、アラームをセットして寝る。
2時間後。
アラームで起きたら、線香は燃え尽きてない。
よし、計算通りだ。
終わり。
■解説
4本同時に火をつけると、すべて30分後に燃え尽きるはずである。
遺体が線香を立てていたのかもしれない。
パスポート
男は外国にやってきた。
治安が悪い国だったが、男にとってそれは都合がよかった。
しかし、運悪く、男はギャングに捕まってしまう。
拘束され、身ぐるみを剥がされ、パスポートから身元が特定されてしまう。
ギャングは、パスポートの住所に電話をし、相手に対して身代金を要求する。
そのことに男は青ざめる。
男の予想通り、相手は身代金は払わないと言う。
そして相手はギャングに対してこう言った。
「息子ならここにいる」
終わり。
■解説
男は他人のパスポートを使って入国していた。
つまり男も犯罪者だった。