本編
最近、巷では若い女性の殺人事件が続いている。
殺害された女性たちの共通点は、単に若いだけであり、容姿や血液型、出身地などはみんなバラバラだった。
そのせいか、警察は犯人の特定ができず、通り魔的な犯行だと断定する。
犯人の目撃情報もなく、手掛かりも全く残していない。
わかっているのは、犯人は女性の首を一突きして殺害しているという、殺害方法だけだ。
さらに、女性たちを襲う場所も日にちも規則性がなく、多くの警察官で町を巡回するしか方法はなかった。
それでも、犯人は大胆にも犯行を行っていく。
町の住人たちは怯え、何もできない警察に批判が集まる。
そんなとき、あるテレビ局が、自分たちで犯人の情報をつかめば視聴率が取れるのではないかと考え、若いキャスターを囮にして犯人をおびき寄せようとする。
しかし、その考えが犯人にもバレているのか、一向に犯人が現れない。
無意味に日数だけが過ぎていく。
そこでそのテレビ局は「やらせ」をしようと考える。
包丁を持った偽の犯人を用意して、キャスターを襲わせ、逃げるところを映像に収めるというものだ。
犯人役や囮役のキャスターと念入りに打ち合わせをして、本番に臨む。
決して犯人の手掛かりになるようなものも、行動も一切残さないようにと念入りに準備をしたのだ。
そして、キャスターが誰もいないような暗がりを一人歩く。
すると目の前からアイスピックを持った、覆面をした男が現れる。
囮役のキャスターは悲鳴を上げ、逃げていく。
その様子をばっちりとカメラに収めるテレビスタッフ。
それから数週間後。
テレビ映像により、犯人は無事に逮捕されたが、テレビ局には多くの非難の声が寄せられた。
終わり。
■解説
偽の犯人は包丁を持って、キャスターを襲うと打ち合わせをしていた。
しかし、現れた覆面の男が持っていたのはアイスピックである。
つまり、キャスターを襲ったのは偽物ではなく、本物の犯人だった。
そのため、その映像で犯人を特定することができた。
ただ、そのことでテレビ局には非難の声が殺到している。
それは、本物の犯人によって、キャスターが殺されてしまったからである。