名医

意味が分かると怖い話

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:異邦人〉   〈次の話へ:強盗〉

本編

ある男が名医と称される医師の元へと通っている。
 
「先生、どうですか?」
「今のところは、進行は止まっていますね」
「そうですか。よかった」
「でも、油断してはいけません。いつ失明してもおかしくないんですからね」
「はい。わかってます」
「難しいかもしれませんが、目は酷使しないようにしてください」
「はい。大丈夫です。無理はしません」
「では、また、目薬の方を出しておきますから」
「ありがとうございます」
 
男は目薬を受け取り、ホッと安堵のため息を吐きながら病院を出た。
ちらりと時計を見ると、既に15時を過ぎている。
 
ヤバい。遅刻してしまう。
 
男は慌てタクシーを拾い、目的地へ急ぐように伝えた。
 
 
男が部屋に入ると、既にメンバーは揃っていた。
メンバーの女性が男に言う。
 
「どこに行っていたんですか? 心配しましたよ」
「ごめんごめん。ちょっとね」
「出かけるなら、一言言っておいてくださいよ」
「ホント、ごめん。次からは気を付けるよ。それで、状況は?」
「麻酔が効いて、すぐにでも始められます」
「そう。じゃあ、すぐにオペを開始しよう」
「よろしくお願いします。先生」
 
終わり。

■解説

男は外科医である。
そして、目を患っている。
いつ失明してもおかしくない状態で手術をしているということになる。
男はいつか、手術でミスを犯し、人を殺してしまうかもしれない。

 

〈前の話へ:異邦人〉   〈次の話へ:強盗〉

動画

簡易的な読み上げの動画になります。
音声でサッと聞きたい方はこちらをどうぞ。