本編
山奥に小さな村があった。
その村は外から人が来ることがほとんどないため、文明も停滞していた。
農業を中心として細々と暮らす村人たち。
そのため、不作の年は餓死者が出てしまうことも何度もあった。
だが、村人たちはそれが普通だと思っている。
なので、改善しようとはしなかった。
そんなとき、村にある男が行き倒れるようにしてやってきた。
髪や目、肌の色が違う男に、興味津々の村人たち。
どうやらその男は、違う国からやってきたのだそうだ。
そして、その男は村人たちに色々なことを教える。
様々なことの利便性が上がり、村は少しずつ豊かになっていった。
村人たちはその男に感謝した。
ただ、その男がやってきてから、村人に行方不明者が出るようになった。
最初は、男が来たことにより、外の世界に興味を持つものが出て、人知れず村を出て行ったのだと思っていた。
しかし、それにしても人数が多い。
村の中にはその男が人を攫い、殺しているのではないかと考えるような人間も出てきた。
しかも、ある村人が、男が村人の一人を襲い、首に噛みついているのを見たと言い出した。
もしかすると、男は吸血鬼なのではないかと考える村人たち。
さらに、男からはもう学ぶことないと考えた村人たちは、吸血鬼である男を始末することにした。
ある日の夜。
村人たちは数人で、男の家を襲撃する。
すると、男はちょうど、グラスで血を飲んでいるところだった。
村人たちは激怒し、男に向けて斧を振り下ろそうとする。
だが、男は「これは血ではない」と言い出す。
どういうことかと聞くと、男が飲んでいたのは「ワイン」という飲み物らしい。
村人の一人が一口飲んでみると、それは確かに血ではなかった。
しかも、とても美味しい。
村人たちは男に謝罪をする。
男は誤解させて済まなかったと言い、家にあるワインをふるまう。
出していたワインの瓶が空き、男は地下室から新しいワインを持ってくる。
そして、ワインを注ごうとすると、中でワインが固まっていた。
男は「しまった」と手で顔を覆う。
ワインは保存する温度が重要で、ミスをするとワインは酸化してしまうのだという。
男は地下室から違うワインを持ってきて、村人たちに振る舞う。
酔った村人たちは夜通し、男たちと楽しく飲み明かしたのだった。
終わり。
■解説
ワインは酸化しても固まることはない。
つまり、男が持ってきた瓶の中に入っていたのはワインではないことになる。
そして、凝固する赤い液体は、凝血したものである可能性がある。
もしかすると、男は本当に吸血鬼で、瓶の中に血を入れて保存していたのかもしれない。
動画
簡易的な読み上げの動画になります。
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