意味が分かると怖い話 解説付き Part401~410

意味が分かると怖い話

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恐怖映像

少年は怖いものが好きだった。
怪談、呪いのビデオ、そして、恐怖映像。
 
あるとき、少年は『絶対に見ない方がいい恐怖映像』の噂を聞いた。
調べてみると、それはあるサイト内で見られるらしい。
 
少年は、家でワクワクして、そのサイトにアクセスする。
 
確かに、それは恐ろしい映像だった。
なんと、人が殺されるスナップ映像だったのだ。
 
「こういうのじゃないんだよな」と思いながら、少年はサイトを閉じようとした。
だが、そのとき新しいライブ映像がアップされた。
少年はこの後、背筋が寒くなる。
なぜなら、次の画像のサムネには自分の姿が映っていたからだ。
 
終わり。

■解説

次の被害者は少年ということである。

 

タトゥー

夏に長袖を着ている人はタトゥーを隠している。
 
前に、おじいちゃんから聞いた覚えがある。
そのときは、そうなんだー、くらいに思っていたが、今でも何となく頭に残っていた。
 
ある真夏の日の夕方。
一人で帰っていると、前からコートを着た男が歩いてきた。
 
それを見て、私は「タトゥーを隠してるんだ」と思った。
 
だけど、違った。
その男にはタトゥーなんて全然、入ってなかった。
 
もう、おじいちゃんの嘘つき。
 
終わり。

■解説

なぜ、語り部は男にタトゥ-が『入っていない』ことを知っているのか?
それは、男がタトゥーを隠しているのではなく、露出狂の変態だったからである。

 

家守

最近、何をやってもついてない。
身内の不幸や、俺自身の事故や病気も続いている。
 
俺は占いなどは信じないタイプだが、さすがにここまで続けば、見てもらいたくもなる。
そこで、巷で有名と言われる占い師のところに話を聞きに行った。
 
占い師の話では家に悪い気が溜まっているせいで、運気が下がり続けているのだとか。
このままで、俺の命が危ないらしい。
 
そこまでの話を聞いて、俺は身構えた。
何か買わされるのではないか、と。
 
占い師はその運気を高める方法が1つだけあるのだという。
 
俺は「来た」と思った。
何かを買えと言われた瞬間、この場から立ち去ろうと考えていた。
 
だが、俺の考えは完全に的外れだった。
 
占い師は「早急にヤモリを飼いなさい」とのことだった。
ヤモリは家守とも言われるらしく、家を守ってくれる生き物らしい。
 
別にその占い師からペットショップなどを紹介されもしなかったので、俺はダメ元で信じてみることにした。
 
とはいえ、わざわざ、ペットショップからヤモリを買うというのも、なんか違う気がした。
 
そんなことを考えていると、川縁で、なんとヤモリを見つけた。
俺はさっそく、ヤモリを捕まえ、家に連れて帰った。
 
明日、ヤモリを入れる容器でも買ってこようと思いつつ、その日は適当な容器に入れて寝た。
 
しかし、朝になったらヤモリはいなくなっていた。
 
また捕まえないといけないなと思っていると、風呂場からパシャパシャと言う音がした。
行ってみると、水が入った洗面器の中で、ヤモリが優雅に泳いでいた。
 
よかった。
 
俺は今度は蓋つきの容器に入れ、ヤモリ用のカゴを買いに行った。
 
終わり。

■解説

ヤモリは爬虫類のため、水辺にいることは少なく、自分から水の中に入って泳ぐことはない。
つまり、語り部はヤモリとイモリを間違えている。
また、占い師はすぐにヤモリを買わないと、語り部の命も危ないと言っている。
語り部は勘違いをしているため、改めてイモリを飼おうとするとは思えない。
今後、語り部の身に、何かが起こるかもしれない。

 

狼男

その村では、満月の夜に森の中で狼男が出るという伝説があった。
 
それは元々、この村では狼が出没するため、気を付けるようにという意味を込めた伝説だろうと思われていた。
 
だが、最近、村の女性が狼男に襲われ、殺されるという事件が相次いだ。
その事件の被害者は森に行っていないのに、襲われている。
 
そこで、村人たちは夜に家から出ないように決まりを作った。
 
だが、そのルールを破った男が、翌日、村の中で死体となって発見される。
その死体には無数の噛み跡が残っていた。
 
終わり。

■解説

狼男の正体は最後の死体となって見つかった男。
自分が犯人だと知っているため、外に出たと考えられる。
では、その男を殺したのは誰だろうか。
この村では狼が出没する。
つまり、狼は村まで降りてきていて、男を食い殺したということになる。

 

祈願

女は息子を溺愛していた。
女にとって、息子が全てであり、息子の幸せのためなら何を犠牲にしてもいいとさえ考えている。
 
そんな考えで育てたため、息子は我がままで挫折をするとすぐに諦めるような性格になってしまった。
高校生になると、頻繁に学校をずる休みするようになり、部屋に1日中引きこもるなんてことも珍しくなかった。
 
だが、高校卒業を半年後に控えたある日のことだった。
女の息子が急に猛勉強を始めた。
 
今まで自堕落だった生活を取り戻すかのように、勉強していく息子。
 
女は息子の幸せがすべてだという気持ちは変わっていない。
息子の幸せのために、女は必死で支援する。
 
そして、新年を迎える。
受験はもう目前で、女の息子も寝る間を惜しんで勉強をしている。
 
女は息子の代わりに神社にお参りにいく。
そこで、お隣さんの奥さんに会う。
その家の子供も、今年、大学受験がある。
 
久しぶりに会った、お隣さんと会話が弾む。
お隣さんは女の息子の話を聞いて、羨ましがっている。
 
「いいわね。うちなんか、ニートになるなんて言い出して……」
「あら、そうなんですか……」
「大学はどこを目指してるの?」
「隣の県の大学なんですよ」
「へー。じゃあ、受かったら、一人暮らしになるわけね」
「はい。そうなんですよ」
「やっぱり、男は一人暮らしして成長するものよ。うちの子も、一人暮らししてくれないかしら」
「はあ……」
 
お参りと小話を終えて、女は絵馬を買いに行く。
もちろん、息子の祈願をするためだ。
 
そして、女は、その絵馬に『不合格祈願』と書いた。
 
終わり。

■解説

なぜ、女は絵馬に不合格祈願をしたのか。
それは大学に落ちて欲しいからである。
息子が大学に受かると、一人暮らしになるため、家を出て行くことになる。
女は溺愛した息子が家から出て行くことが耐えられなかった。
 
そして、女は息子の幸せがすべてという考えである。
つまり、女は息子が大学に行かずにずっと家にいることが、息子の幸せだと思っている。

 

缶コーヒー

男は何かと恨まれるタイプだった。
人を見下したり、思ったことをすぐに口に出したりすることで、トラブルも多い。
仕事もベンチャー企業の社長をしていることで、取引先や社員から恨まれることも多々ある。
 
以前、家に爆発物を送り付けられたこともあった。
 
そんなこともあり、男は他人を全く信用しなくなる。
自分で用意した食べ物や飲み物しか口にしない。
なので、商談の場で出された飲み物も、絶対に手を付けようとしなかった。
 
そんなあるとき。
自殺した社員の妻が、会社を訴えようとしていることを聞き、何とかもみ消そうと、家にいった。
 
相手の女は「主人から聞いてます」と言って、男に飲み物を出そうとはしなかった。
もちろん、男の方も、出されても口にするつもりはない。
 
本題の話し合いは平行線をたどり、既に2時間が経ってしまっていた。
女は一度、「失礼します」と言って、キッチンに行き、ペットボトルとコップを持ってきた。
 
出されても飲まないのを知っているはずだろ、と男は思ったが、そうではなかった。
 
女は自分と男の前にコップを置き、自分のコップだけにお茶を注いで飲み始めた。
 
「飲み物、持参してるんですよね?」
 
女に言われ、男はカバンから、来る前に自動販売機で買った缶コーヒーを出す。
そして、女がしたように、コップに注いで飲んだ。
 
数分後、男は血を吐き、倒れてしまった。
 

終わり。

■解説

もちろん、男が用意した缶コーヒーには毒物は入っていなかった。
では、どうして男は血を吐いて倒れたのか。
それは、コップの方に毒が入っていたからである。
男は女の動作に釣られて、コップを使ってしまったことが失敗だった。

 

三途の川

少年の家は3人家族である。
3人はとても仲が良く、1年に2、3回は家族で旅行に行くくらいだ。
 
そして、家族での旅行を手配するのは、少年の役目だった。
 
その年の夏休み前。
少年は家族旅行の予定を色々と調べていた。
 
だが、今年に限って父親は仕事が忙しく、姉は大学のサークルの合宿があるとのことで、なかなか日程が合わない。
悩んでいる中、友達の家族に、一緒に旅行に行かないかと誘われる。
 
2人からも、無理して家族の予定を立てるより、今年は友達の家族の旅行について行く方がいいと言われた。
少年は、本当は家族と旅行に行きたかったが、今年は友達の誘いに乗ることにした。
1人で楽しむ分、たくさんお土産を買ってこようと決めた。
 
友達の家族との旅行は本当に楽しく、誘いに乗ってよかったと思う少年。
その反面、自分だけが楽しい思いをしたことを、心苦しく思う。
 
だが、その分のお土産はしっかりと買った。
 
そして、旅行の帰り道。
友達の父親が運転する車が事故を起こしてしまう。
 
もちろん、その車に乗っていた少年も無事では済まなかった。
 
少年は意識不明になってしまう。
その間、少年はある夢を見る。
 
広い花畑と綺麗な川が流れていた。
その川に近づくと意識がぼんやりとしていく。
それでも、少年の足は川へと向かって行った。
 
すると、少年はハッと目覚めた。
そこは自分の部屋のベッドだった。
 
「いくら夏休みだからって、だらけ過ぎ」
 
呆れた顔をして少年を見る母親。
 
少年は母親に「変な川の夢を見た」と言うと、「何それ?」と笑われてしまった。
 
あの旅行も夢だったのか……。
そう考えると少年は残念な気持ちになったが、事故のことを思うと夢で良かったと思うのだった。
 

■解説

少年が見たのは三途の川である。
そして、少年の家族は3人。
父親と姉である。
つまり、母親は亡くなっていると考えられる。
少年は三途の川を渡ってしまい、母親のいる世界に行ってしまった。

 

誕生日の食事

女はとても貧乏だった。
夫は借金を残し、家を出て行ったため、その女一人で子供を養っていかないといけなかった。
 
働いても働いても、一向に生活はよくならない。
 
そんな中、子供が誕生日を迎える。
 
子供に良い物を食べさせたい。
女はそう思った。
だが、手持ちは2000円しかない。
 
女は夫がまだ家にいた頃、3人で一緒に行ったお店のことを思い出す。
あのとき、子供はその料理がとても気に入ったらしく、1週間くらいはずっと「あのお料理美味しかった」と言っていた。
 
是非、そのお店にもう一度連れて行ってあげたい。
だが、そのお店は遠く、電車に乗らなければならないし、2000円では2人分は食べられない。
 
そこで女はあることを決意した。
 
子供に2000円を持たせ、降りる駅とお店の地図を渡す。
2人なら無理でも、1人なら食べられる。
 
そうして、2000円を渡して、子供を見送った。
 
子供は母親に言われた通り、730円の切符を買い、お店までたどり着き、料理を楽しむことができた。
 
終わり。

■解説

2000円では2人分は食べられないと言っていることから、このお店の料理は1000円以上するということになる。
そして、片道に730円を使ってしまうと、帰りの電車賃はないはずである。
つまり、母親は最後の晩餐として、子供にいいものを食べさせたかった。
女は手持ちが2000円しかない時点で、この先はどうやっても生活できないと悟り、子供を送り出し、自ら命を絶ったのかもしれない。

 

紅一点

うちの近所に、弱小なのに妙に所属人数が多い男子サッカーのクラブがある。
大会に出ても、よくて2回戦まで。
そして、コーチも別段有名というわけでもなく、そのへんにいるサッカー好きのおっさんだ。
そのくせ、妙に練習がキツイという、誰から見てもそのクラブに所属するメリットは少ない。
 
なのに、なぜ所属人数が多いのか。
 
その理由はマネージャーにある。
 
そのクラブの唯一のマネージャーがとても美人なのだ。
そのマネージャーのプライベートは謎に包まれていて、町で見かけたという情報もない。
 
つまり、そのマネージャーに会うにはこのサッカークラブに入るしかないのだ。
 
なので、このサッカークラブに入っている奴は全員、マネージャー狙いというわけだ。
 
もちろん、俺もマネージャー狙いでこのクラブに入った。
だけど、俺は正直言って運動神経が悪く、サッカーで活躍できるどころか、レギュラーにすらなれない。
これでは、完全に『その他大勢』に含まれてしまう。
 
そこで俺はあることを考えた。
この高い競争率の中、確実にマネージャーと仲良くなる方法。
 
それは同じマネージャーになることだ。
 
もちろん、男子がマネージャーとして入ることはできない。
それができれば、すでにやってるやつが大勢いるだろう。
 
では、どうするか?
 
簡単だ。
女装すればいい。
 
俺は童顔で、中学の時まで女に間違われることもあったくらいだ。
なので、ばっちりとメイクしていけばバレない。
 
そして、思った通り、バレることなく、俺はマネージャーとしてクラブに入ることができた。
 
それから3ヶ月が経つ頃には、マネージャーとかなり仲良くなれた。
あとは、どうやって俺が男であることを話しながらも、プライベートで会えるようにするか、だ。
 
やり方を間違えば、完全に嫌われてしまう上に、周りからも白い目で見られるだろう。
ここは慎重にいかないとならない。
 
なんてことを考えていると、大会の時期がやってきた。
 
作業をしている俺のところにコーチがやってくる。
 
「ベンチにはお前に入ってもらうぞ」
「え? 私の方がですか?」
「そうだ」
 
そう言いながらコーチは俺をエロい目で見てくる。
 
正直、この目つきには慣れない。
本当に吐きそうになる。
だが、マネージャーといるためには我慢しなければならない。
 
そんな俺の思いとは裏腹に、コーチはこう言った。
 
「なんせ、お前はうちの紅一点だからな」
 
終わり。

■解説

語り部が男だということはコーチにはバレていない。
なのに、語り部に「紅一点」と言ったのはどういうことなのだろうか。
それは、マネージャーは、語り部と同様に女装している男だということになる。

 

ご褒美ランチ

私は今まで、立てた目標をすべて達成してきた。
勉強や部活の成績、高校や大学受験、就職活動。
そして、会社での成績。
 
それができたのは、あるコツのおかげだ。
 
それはご褒美ランチ。
 
つまりは自分への特別なご褒美ってやつ。
ダイエット中だろうと、お金がピンチだろうと、時間がないだろうと絶対に外さない。
この日だけは普段は食べられない、最高のご馳走を一人で食べるのだ。
 
正直に言って、このご褒美ランチがなかったら、今の私はいないだろう。
逆に言うと、このご褒美ランチのために生きているって言っても過言じゃないかもしれない。
 
そして今日、今期、私が自分の中で設定した営業成績をクリアした。
これで私の営業成績は会社でトップになったわけだ。
私は胸を張ってご褒美ランチをしてもいいだろう。
 
次の日、私は有休を取得した。
ご褒美ランチを堪能するためだ。
 
準備をしてから家を出る。
 
待ち合わせ場所にいくと、既に相手が待っていた。
高校時代の後輩だ。
卒業してからも、こうやって時々会っている。
 
「ごめん、お待たせ」
「いえ、私も今来たところですよ」
 
本当に可愛らしい子だ。
 
この日のためにずっと前から準備を進めてきた。
今日は最高のご褒美ランチになりそうだ。
 
終わり。

■解説

語り部は、ご褒美ランチは一人で食べると言っている。
では、なぜ、後輩を呼んだのか。
それは一緒に食べるために呼んだのではなく、食材として呼んだのである。

 

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