意味が分かると怖い話 解説付き Part321~330

意味が分かると怖い話

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投資

それは未公開株で絶対に値上がりするはずだった。
 
だからこそ、退職金と残してあった貯蓄をすべて投入した。
 
だが、公開後まもなくその会社の不正が見つかり、株は大暴落した。
 
持っていた株がすべて紙切れとなってしまった。
 
すべてを失い、今後はどう生きていけばいいかもわからなくなった。
 
なので、首を括って自殺した。

 
本当に可哀そうなことをしたものだ。
今度は気を付けよう。
 
終わり。

解説

語り部は株を売る方で、自殺したのは語り部の客。

 

招き猫が招く者

それは台風が接近していて、風がすごい強い日のことだった。
 
俺は台風で休講にならないかと期待しながらも、大学に来てみたが講義が休みになることはなかった。
 
今日はレポートの提出日。
 
なんて言って、提出を誤魔化そうかと考えていると、真一が教室に入ってきた。
 
「おーっす」
「真一、レポートやったか?」
「もち」
「マジかー」
 
同じ、未提出仲間かと思っていたが、真一の方は裏切ってレポートを書いてきたようだった。
 
「真一、レポートできなかった理由を一緒に考えてくれ」
「んー。なんか変わったことがあったとかでいいだろ」
「なんだよそりゃ。雑過ぎるだろ。変わったことってなんだよ?」
「あー、変わったことといえばさー」
 
真一はこういうところがある。
なんていうか天然というか、思考が斜め上というか。
ただ、そこがこいつの魅力でもあるんだけど。
 
「今日、家を出るときにさ、玄関のところに招き猫が落ちてたんだよ」
「招き猫?」
「そう。手のひらサイズの」
「ふーん。で?」
「え? それだけだけど」
「オチなしかよ!」
「いや、縁起がいいかなって」
 
やっぱり、こいつの思考は斜め上だ。
普通、自分の家の玄関に知らない物が置いてあったら不気味がるだろう。
それなのに縁起がいいって……。
 
「あれじゃないのか? 泥棒の合図として置かれたとか」
「泥棒の合図?」
「そうそう。狙った家の前に目印として置くことがあるらしいぞ。まあ、普通は目立たないようにステッカーとかを貼るみたいだけど」
「あははは。俺の家に入っても盗むもんねーよ」
 
少し脅かしてやろうと思って言ったが、全然堪えてない。
 
なんてことを話してたら講義が始まってしまった。
結局、レポートの件は、「家に忘れてきた」というベタベタな理由で乗り切った。
明日出すように言われたが、どうせ、明日は台風で休講になるだろう。
そうすれば、次の講義は来週だから、十分レポートを書く時間がある。

勝った。
 
そう思ったのだが。
 
台風は逸れたわけでも通過していったわけでもなく、直撃した。
現に、現在、大雨が降っている。
 
それなのに、大学は休講にしない。
ホント、何を考えてるんだ!
俺は教授に対して怒りを覚える。
 
「いやー、雨、やべえな」
 
真一が教室に入って来る。
 
「ふざけんなよ! なんで、休講じゃねーんだよ!」
「お、俺に言われても……」
 
この怒りをどこにぶつければいいのかわからず、イライラしていると、真一がニコニコとこっちを見ている。
これは話を聞いて欲しいという合図だ。
そんな顔を見ていると余計イライラするのだが、仕方なく話を振ってやる。
 
「なんかあったのか?」
「ああ! あのさ、昨日の招き猫なんだけど」
「玄関のところに落ちてたやつか?」
「そうそう。今日、家から出るときに見たら、無くなってたんだよ」
「……だからなんだよ」
「で、代わりに手紙が置いてあったんだよ。『ごめんなさい。招き猫は私のです。回収させてもらいますね』って」
 
そう言って、手紙を渡してくる真一。
確かに、そう書いていた。
 
「いやー、これさ。ぜってー、女だよな。かわいい子かな?」
 
相変わらず、斜め上の思考だ。
可愛かったからといって、なんだっていうんだろうか。
招き猫は回収されたんだから、もう接点はなくなったはずである。
 
そんなことより、俺のレポートをどうしようかと思った時だ。
 
俺はあることに気づいた。
 
「おい! 真一!」
「へ? なに?」
「警察に行くぞ」
「なんで?」
「いいから!」
 
俺は無理やり真一を連れて警察へと向かった。
 
終わり。

解説

ここの地域は『台風』が直撃している。
つまり、『風が強く』『雨』も降っていた。
 
それなのに、真一が手紙を持っていたのはおかしい。
もし『外』に置いてあったなら、手紙は飛ばされていたはずだし、仮にどこかに引っかかっていたとしても雨で濡れてボロボロになっていたはずである。
では、なぜ、手紙が(招き猫も)綺麗なまま残っていたのか。
 
それは玄関の『外』ではなく『内側』にあったことを示している。
 
つまり招き猫の持ち主は、『落とした時』と『回収するとき』の、少なくとも2回、真一の家に玄関から入って、出ていることになる。
しかも、手紙は真一が今日の朝に見つけたと言っている。
ということは、『真一が家にいて、寝ているとき』に忍び込んでいる可能性が高い。
 
真一は合鍵を持ったストーカーに付け狙われているようだ。

 

テレワークの弊害

テレワークをするようになって2年。
すっかり家で仕事をすることが当たり前になった。
 
俺としても朝晩に満員電車に乗って会社に行かなくて済むようになってすごく嬉しい。
妻も、いつも俺が家にいることが嬉しいらしい。
というのも妻はすごく嫉妬深くて、以前は俺が仕事で遅い日が続くと浮気を疑うくらいだ。
 
家で仕事していれば、浮気を疑われることはない。
 
とはいえ、俺も働き盛りであり、性欲だってないわけじゃない。
たまには妻以外の女を抱きたくなることだって、当然ある。
 
もちろん、秘密だが、会社に通っていたときは2ヶ月に1回は仕事が遅くなると言って風俗に行っていたこともあった。
それが2年も我慢してると、やっぱりチャンスがあれば、そういうことがしたい。
 
言い訳させてもらうと、これは浮気じゃなくて男の性って話だ。
 
そんな中、本当に久しぶりに妻が同窓会とかで2日間、家を空けることになった。
最初、妻は同窓会を断ろうか悩んでいたようだったが、せっかくなんだからと言って、俺はなんとか説得した。
 
同窓会の当日、妻は心配そうな顔をしながら出かけて行く。
 
俺はちょっとした解放感に浸った。
そして、当初から予定してあったデリヘルを呼びんで2年ぶりに楽しんだ。
あまりにも久しぶりで興奮したせいか、その日、3回も呼んでしまった。
 
さすがに疲れたから寝ようと思っていたら、妻から電話が来た。
 
「もしもし? なんかあったりしてない? 大丈夫?」
「いやいや。子供じゃないんだから。2日くらい留守番できるって」
「……ねえ、顔見たいからZOOMできない?」
「え? なんでだよ?」
「……できないの? なんかやましいことしてたりして?」
 
妻の鋭い指摘に、俺は疑惑を解消するためにも面倒くさいがZOOMをすることにした。
パジャマから着替えるのが面倒くさかったが、まあ、この際、仕方ないだろう。
そして、ZOOMを繋ぐ。
すると、妻は笑っていた。
 
「なに、その恰好?」
 
俺は、上着はカジュアルな服で、下がパジャマという格好だ。
 
しまった。
つい、いつものテレワークの癖が出てしまった。
 
終わり。

解説

ZOOMの画面からは上半身しか見えないはず。
では、なぜ、妻は下半身がパジャマだということがわかったのか。
もしかすると妻は部屋に監視カメラを仕込んでいたのかもしれない。
そうすると、3回も呼んだデリヘルのことがバレているということである。

 

懲りないカップル

俺は交番のお巡りさんってやつをやっている。
担当している地域は平和で、事件なんて滅多におきない。
 
起きるとしたら事故で、去年、5年ぶりに町で死者が出た。
確か、亡くなったのは女子高生だったとか。
若い子が亡くなると、なんというかやるせない気持ちになる。
 
とはいえ、そんな町なので、とにかく俺は暇で仕方ない。
しかも、一番若いって理由なのか、いつも夜勤を押し付けられる。
 
夜は昼間以上に暇で、好き勝手できるからいいんだけど。
この前は朝まで部屋でゲームして過ごした。
 
お菓子が無くなったらコンビニまで買いに行ったりと、結構、やりたい放題だ。
 
今日もコンビニの帰り道、高校生のカップルが自転車を二人乗りしてたので注意した。
最初、男の方はキョトンとした顔をしていたが、すぐに注意されたことを喜んでいた。
 
変な奴だ。
 
その日から、その学生カップルを見かけることが多くなった。
その都度、俺は二人乗りを注意する。
そのたびに男の方はヘラヘラと笑う。
 
何がそんなに面白いのかわからないが、こっちとしてはちょっとイラっとする。
 
こっちも意地になって、見かけるたびに注意してやった。
それから2年がたった頃、俺もついに移動を命じられることになる。
 
せっかく楽できる場所だったのに。
 
俺は入れ替えに配属になった後輩に引き継ぎをして、配属先へ移動する。
移動した先は、結構忙しくて、楽を覚えた俺にとってはかなりきつかった。
 
でも、それも1年も経てば慣れてくる。
日々の忙しさを難なくこなせるようになった頃、後輩から連絡がきた。
 
「暇すぎるんですけど、どうすればいいんですか?」
 
俺がいなくなってからも、事件らしい事件はほとんど起きていないようで、最近の一番大きな事件は自殺が1件あったことらしい。
その後輩も夜勤を押し付けられているようで、毎日、どうやって時間を潰せばいいのかわからないといった嘆きだった。
 
俺は非番だったこともあり、その日に差し入れを持って、後輩のところへ向かった。
 
そして、その向かう途中。
久しぶりにあの二人乗りの高校生カップルを見かけた。
 
一瞬、担当の地域じゃないとは思ったものの、懐かしさから、つい声をかけてしまった。
 
だが、完全に無視されてしまった。
俺の声が聞こえなかったわけがないはずなので、絶対に無視だと思う。
 
懐かしさが一気にイラつきに変わりながらも、後輩の元へ向かう。
俺は後輩にお下がりのゲーム機を渡して、暇の潰し方を伝授したのだった。
 
終わり。

解説

まず、語り部が最初に『高校生のカップル』に話しかけてから『3年』が経過している。
なのに、まだ『高校生』と言っていることから、二人は制服を着ていることがわかる。
だが、3年経っているはずなので、そのカップルは高校を卒業しているはずである。
 
また、語り部は男の方を注意したときに「ヘラヘラと笑っていた」と言っている。
では、なぜ起こられているのに笑う必要があるのか。
それはおそらく、『嬉しかった』のではないだろうか。
 
後ろに乗っている女の子の方は幽霊で、それが見えている(幽霊が後ろにいる)ことを喜んでいると考えられる。
だからこそ、毎回、幽霊になった彼女がまだいるかを確かめるために語り部の元をわざと訪れていた。
 
そして2年後。
語り部が注意したときに無視した。
そのとき、2人が学生服を着ていたところを見ると、もしかすると男の方も後追い自殺したのかもしれない。

 

人身事故

男はトラックの運転手をしている。
 
だが、男の運転は荒く、以前、人身事故を起こしてしまった。
幸い、轢いた相手は一命を取り留めたが、今でも障害が残っている。
そのときの賠償金を未だに払い続けている状態である。
 
それなのに、男の運転の粗さは変わらなかった。
周りからは、またいつ事故を起こしてもおかしくないと噂されているくらいだ。
 
そして、案の定、男は再び人身事故を起こしてしまった。
 
今度の相手は即死だ。
道路にはブレーキ痕がなく、男は警察に「ブレーキとアクセルを踏み違えた」と供述した。
 
男は刑務所にはいることになったが、死んでよかったと胸を撫で下ろしたのだった。
 
終わり。

解説

事故を起こした際、相手が生きてる場合と死んでる場合では、生きているときの方が賠償金が多額になるケースが多い。
男は再び莫大な賠償金を払うくらいならと、わざとアクセルを踏んだ可能性が高い。

 

公園にて

平日の昼間。
いつもなら、昼寝をしている時間なのだが、家の近くで工事しているせいでうるさい。
 
眠れやしない。
 
仕方ないので、近くにある公園のベンチで昼寝をすることにした。
前は賑わっていたのだが、遊技で遊んでいた子供の死亡事故があってから、公園で遊ぶ子供はほとんどいなくなった。
 
今ではゲートボールをする老人さえもいない。
ここなら夕方までゆっくり寝られそうだ。
 
俺はすぐにベンチに横になり、昼寝を始めた。
 
すると。
 
バッタン! バッタン! バッタン!
 
うるさい音がして、見てみると子供が2人シーソーで遊んでいた。
シーソーが地面に当たったときの音が響いていたのだ。
 
あー、もう!
 
俺はイライラして文句を言おうとしたとき、その子の母親らしき女がやってきた。
 
「たっくん、帰るわよ」
「はーい」
 
小さい方の子供がシーソーを降りて、女の方へ走っていった。
 
残された方の子供は悲しそうな顔をして、シーソーから飛び降りてどこかに行ってしまった。
 
よし、これで静かになった。
昼寝の続きだ。
 
終わり。

解説

小さい方の子供がシーソーから降りれば、逆側に傾くはずである。
だが、残された方の子供は『飛び降りて』いる。
つまり、小さい方の子供が降りても、シーソーは傾いていないということである。
残された方の子供に重さがないことがわかる。
それはつまり……。

 

惨殺死体

奇妙な事件だった。
 
事件が起こったのは郊外にある小さな一軒家だ。
偶然、家の前を通りかかった人が、窓から中を見ると人間の死体らしきものがあると通報した。
 
到着した警察が調べてみると、家のドアと全ての窓が閉まっていたため、窓を割って中に入った。
家の中には何もなかった。
 
家具や電化製品はもちろん、食料さえも全くなかったのだ。
まるで引っ越した後のように、何も存在していない。
 
見つかったのは白骨化した男のバラバラ死体と愛犬だけである。
 
詳しく捜査しても、家に誰かが入った形跡は見当たらなかった。
つまり、家の中自体が密室になっていたということになる。
 
捜査員は頭を抱えた。
どうやって家の中にいる被害者を殺したのか。
なぜ、死体をバラバラにする必要があったのか。
 
白骨化した死体からは有益な情報を得ることはできなかった。
 
唯一わかったことと言えば、男が何かに怯えて急遽、この部屋に引っ越してきたことだけだった。
 
捜査員はこの事件が迷宮入りするだろうと予感していた。
なので、せめて男の愛犬の里親はちゃんと探してあげようと思ったのだった。
 
終わり。

解説

家の中は密室で、中には何もなかったことから、男は餓死した可能性が高い。
だが、なぜ男が餓死しているのに愛犬は生きているのか?
家の中にはドックフードもなかったはずだ。
それは愛犬が男の死体を食べた可能性が高い。
男の方は飢餓に苦しんでいたが、最後まで愛犬を食べようとはしなかったのに、犬の方は飼い主を食べてしまった。
そのため、男の死体は白骨化し、バラバラになっていた可能性がある。

 

強盗

最近は不景気のせいか強盗などの事件が多い。
もちろん、私も気を付けている。
 
家の戸締りはしっかりとやっている。
窓をちゃんと閉めておくのはもちろんだけど、鍵もしっかり閉める。
 
あとは固定概念も捨てる。
昼間に堂々と強盗に入るわけがないと思っている人が多い。
だけど、そんなことは関係ない。
 
この前も確か、白昼堂々と時計屋に強盗に入った輩がいた。
 
一軒家やアパート、マンションでも同じだ。
昼間に人が通るのは当たり前で、挙動不審な動きさえしなければ、意外と侵入しようとしていることなんてわからない。
強盗とか泥棒だからって、みんながコソコソしてるわけではないのだ。
 
あともう一つ気を付けな良ければならないことがある。
それは、家に人がいるからといって強盗が入って来ないわけではないことだ。
逆に言うと、一人でいるところを狙われることだってある。
なぜなら、その方が家にある金目の物の場所を聞き出せるからだ。
 
今は昼間で家には私一人しかいない。
十分危険な状態だ。
 
とはいえ、頭の中でそう思っていても、実際に強盗に入られるとパニックになってしまうものだ。
 
突然、ガチャリと玄関のドアが開く。
そして、部屋に3人も入ってきた。
 
私は思わず悲鳴を上げてしまう。
 
そして、私はすぐに拘束されてしまった。
 
終わり。

解説

語り部は空き巣。
空き巣をしている最中に住人が家に帰ってきた。
拘束されたのは警察に、である。

 

親切なおばあさん

ちょっと山菜を採って帰るだけと、軽く考えていた。
ドライブの途中で山菜が採れるという噂を聞いて、フラフラと山に入ってしまった。
 
しかも、山に入った時間がすでに昼過ぎで、なかなか山菜が採れなくてムキになってドンドンと山奥に入ってしまったのだ。
 
そして、気づけば道に迷っていて、辺りは暗くなり始めていた。
 
遭難してしまった。
 
そう考えると怖くてしかたない。
それでも何とか山を下りようと進んでいくと、山小屋を見つけた。
 
中からはぼんやりと明かりが見えている。
 
助かったと思い、俺は山小屋のドアを叩いた。
出てきたのは人のよさそうなおばあさんだった。
 
俺は理由を話して、なにか外と連絡が取れる方法はないかと聞いた。
 
「あいにく、うちには電話がなくてね。なんせ、こんなへんぴなところだから」
 
と困った顔をされてしまった。
だが、そのおばあさんは続けてこう言ってくれた。
 
「それならうちに泊まっていったらどうだい? 朝になれば町へ下りられる道を教えてあげるよ」
 
本当に助かった。
俺はこの親切なおばあさんの好意に甘えることにした。
 
そして、その日の夜。
晩御飯に鶏肉の料理を出してくれた。
 
それはものすごく美味しかった。
 
俺が喜んでいるのを見て、おばあさんも嬉しそうだった。
 
「鶏をしめた甲斐があったよ」
 
なんとおばあさんは俺のために、飼っていた最後の鶏をしめて、その肉を出してくれたのだ。
それを聞いて、俺はかなり慌てた。
そこまでしてくれなくても、と言うと「そろそろしめようと思ってたから、ちょうどよかったんだよ」と言ってくれた。
 
そして、おばあさんはこういうところに住んでいると食材の調達ができないと話した。
俺は本当に感謝しかなかった。
俺のために最後の肉だけではなく、最後の食材まで使ってくれるなんて。
 
とりあえず、俺は持っていた有り金を全部、おばあさんに渡そうとした。
 
「貰っても、使うことないから」
 
そういって断られてしまった。
 
それなら、なにか他に手伝えることがないかというと、おばさんは何かを思い付いたようにポンと手を叩いた。
そして、あることを手伝って欲しいと言った。
もちろん、俺は快く、受けた。
 
おばあさんに頼まれた鉄製の鍋と網を洗う。
すると、その間におばあさんはどこからか、木のチップを持ってきた。
それはヒッコリーという木の木片らしい。
 
「燻製に使うんだよ」
 
そう言っておばあさんは笑った。
 
そして、おばあさんは色々と説明してくれた。
燻製には熱燻、温燻、冷燻の3種類があるのだという。
 
熱燻はそんなに時間をかけずにできるらしい。
 
どうやら明日は燻製を出してくれるらしい。
 
とても楽しみだ。
 
終わり。

解説

既におばあさんの家には食材が無くなっている。
では、なぜ、おばあさんは燻製の用意をしているのか。
それは語り部の肉を燻製にするつもりなのかもしれない。

 

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