誕生日プレゼント

意味が分かると怖い話

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本編

私たち夫婦はずっと子供が欲しいと思っていた。
だから、子供ができたときは本当に嬉しかった。
まさに幸せの絶頂という感じで、この子が生まれてくるのをずっと心待ちにしていた。
 
だけど、生まれてきた子は外見的にハンデを追うような子だった。
なんで生まれてきたときに気付かなかったのだろうか。
数日後に見た自分の子供の顔を見ながらそう思った。
 
夫も同じように落ち込んでいた。
でも、たとえどんな見た目をしていても、自分たちの子供には変わりがない。
 
愛情をもって育てよう。
 
夫とそう誓い合った。
 
この子には真っすぐと育って欲しいという思いもあり、私は家に閉じこもることなく、子供と一緒にお出かけをした。
中には子供を見て、顔をしかめる人もいたが、そんな人たちは気にしないことにした。
しょせん、見た目でしか判断できないような人たちだ。
そんな人たちにどう思われようと構わない。
私たちが負い目を感じる必要なんて、一切ない。
 
それは子供が大きくなってからも言い聞かせようと思う。
内面を磨きなさい。その内面を見てくれる人と付き合っていきなさい、と。
 
そう考えるようになってから、私はなんだか心が大きくなった感じがした。
この子のおかげで、私は成長できたのかもしれない。
 
そして、今日はこの子の誕生日だ。
まだ、離乳食だけど、盛大にお祝いしよう。
そう思って、スーパーに買い物に来た。
 
ご馳走の材料を買い込み、停留所でバスを待つ。
すると、そのとき、私の子供と同じくらいの年の子供を連れた女性が横に座ってきた。
 
その子供がとても愛らしかったので、私は思わず声をかけてしまった。
 
「可愛いお子さんですね」
「ありがとう。よく言われるんですよ」
 
笑顔で答える母親。
 
私の子もあんなに可愛らしかったら、なんて思ってしまう。
でも、それは自分の子供に失礼だ。
私はすぐに頭を振って、その考えをかき消した。
 
「ここにはよく来るんですか?」
「近所に大きなスーパーが無くて。だから、少し遠くてもここに来るしかないのよね」
 
話を聞くと、その母親は同じ地域に住んでいることがわかった。
 
「もしかして、出産は〇▲病院ですか?」
「はい。そうですけど……」
「私もなんですよ。偶然ですね」
「そうなんですか」
 
思わぬ共通点を見つけ、私はテンションが上がったのだが、その母親の方は逆にテンションが下がってしまったようだった。
 
なんだろう? 変なことを言ってしまったのだろうか?
 
そう思っていると、バスがやってきた。
バスに乗り込もうと立ち上がると、母親がカバンからオモチャを出してきて、私に渡してきた。
私が首を傾げていると、母親はニコリと笑う。
 
「誕生日プレゼント。私の子供も、今日が誕生日なの」
「え? そうなんですか? 偶然ですね」
 
思わぬところで、さらに共通点が見つかった。
私はバスの中で、この話題でもっと話そうと思ったが、母親の方は立とうとしない。
 
「バスに乗らないんですか?」
「もう一つ後のに乗ります」
 
そう言われてしまった。
とても残念だ。
もっと、子供の顔を見たかったんだけど。
 
そう思って、私は子供を抱きかかえてバスに乗り込んだ。
 
終わり。

■解説

隣に座った母親は、なぜ、語り部の子供の誕生日を知っていたのか。
同じ病院で、同じ日に生まれた子供ということになる。
もしかすると、母親は子供を入れ替えたのかもしれない。
本当は自分の子供だったため、母親の子供に強い興味を引かれたのではないだろうか。

 

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