意味が分かると怖い話 解説付き Part301~310

意味が分かると怖い話

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鉛筆

美術の授業で鉛筆を使うことになった。
 
確かに絵を描くのにシャープペンは適してないと思う。
でもさ、いきなり鉛筆を使えって言われても困る。
 
どうやって使っていいかわからない。
 
先生はみんなにナイフを配って、鉛筆を削れと言う。
でも、簡単に削れって言われてもどうやるのか、説明して欲しい。
 
先生の時代は手動のハンドルのついたものや自動の鉛筆削り機があったらしい。
でも、やっぱり手で削るのがいいと長々と話している。
そんな話よりも、早く鉛筆の削り方を教えて欲しい。
 
今度はナイフの話をし始めた。
なんでも、人数分のナイフの刃を研ぐのが大変だったとかなんとか。
でも、その分、すごく切れるから注意しろとか。
 
そういうのいいから。
早く教えてくれって。
 
ダメだ。
なんか悦に入って、話が止まりそうにない。
 
仕方ないからもう、自分で適当に削ろう。
こんなもん、教わらなくてもできる。
たぶん。
 
そう思ってやってみたんだけど、意外と難しい。
全然削れない。
 
力が足りないんだろうか?
 
思い切り力を籠める。
そして、一気に押し込んでみる。
 
手ごたえあり。
切れた感触があった。
 
よし!
 
そう思って手元を見ると、鉛筆は全く削れていなかった。
 
終わり。

解説

切れたのは語り部の指。
先生はナイフは凄く切れると注意をしていたので、もしかすると爪ごと切ってしまったかもしれない。

 

親友の男

私には小学校からの親友がいる。
高校までずっと同じ学校で、ほんどの日は一緒に登下校してるし、休みの日も結構頻繁に遊んでいる。
 
そんな彼女が好きな人ができたと相談してきた。
 
そいつはクラスでも人気の男子で、いわゆる、不良ってやつだ。
高校生くらいって不良が、結構モテたりする。
しかも、そういうやつはモテるもんだから、女をとっかえひっかえしたりする。
 
あいつも例に漏れずそうだ。
 
だから、私は反対した。
あいつだけは止めた方がいいって。
 
でも、彼女は本気だった。
今まで生きてきた中で、一番好きになった人だって。
あの人を諦めるくらいなら、死んだ方がマシだと言い出した。
 
そこまで本気なら、と私は応援することにした。
 
私は意外と色々な方面に交流がある。
しかも、不良界隈には結構な太い人脈があるのだ。
だから、その人脈を使ってそいつと彼女が付き合えるように手を回した。
 
でも、そいつには安易な気持ちで彼女に手を出すなと釘を刺しておく。
つまり、ヤリ逃げは絶対に許さないってことだ。
 
そいつはそれを了承し、彼女と付き合うことになった。
正直に言って、彼女は女の私でも見惚れてしまうくらい可愛い。
そんな彼女と付き合えるなんて、男なら誰でも喜ぶだろう。
 
あいつと彼女が付き合って3ヶ月が経った。
探りを入れると、約束通りまだ手を出してないみたいだ。
 
意外と筋を通す奴だ、なんて感心してたときだった。
 
町で強姦未遂事件の噂が流れた。
暗がりで襲われたという話だ。
 
襲われた女の子は暗がりの中でも必死に抵抗し、偶然、相手の金的に足が当たったそうだ。
相手は苦しみ、前のめりに倒れ込んだらしい。
 
抵抗したときにチラッと、相手のアレに蝶のような痣があったそうだ。
 
私はあいつに彼女と別れるように言った。
 
言われた通り、あいつは彼女に別れた。
 
彼女は号泣した。
今まで一番泣いていた。
 
でも、これでよかったんだ。
やっぱり、あんなやつと付き合わない方がよかったと思う。
 
これからも彼女は私が守っていこうと、心に決めた。
 
終わり。

解説

語り部がいう幼馴染の彼女と付き合っていた男が、強姦未遂事件の犯人。
しかし、語り部がなんでそんなことを知っているのか。
わかった理由はお尻の痣がきっかけである。
ということは、語り部は男の男根に蝶の痣があることを知っていたことになる。
つまり、語り部は親友と付き合っている男と肉体関係があったことがわかる。
語り部は親友を応援しつつも、裏切っていたということになる。

 

自分を傷つけるもの

男は何よりも死が怖かった。
危ないところには近づかないのはもちろん、健康も気にして徹底している。
 
極力、家も出ずに家の中で出来る限りの運動をしている。
食事にも気を配り、風水にまで手を伸ばしているほどだ。
 
そんな中、男はある特殊な鏡を手に入れた。
その鏡には自分に危害を加えるものが映るというものだった。
 
男はいつもその鏡を見るのが日課になっていた。
鏡に映ったものを徹底的に排除する。
 
それによって、男はさらに毎日を過ごすことができた。
 
しかし、そんなある日。
男はいつものように鏡を見た。
 
数日後。
男の死体が発見された。
 
終わり。

解説

鏡に映ったのは男自身。
男は自分を排除(自殺)した。

 

アレルギー

その少年は健康が取り柄だった。
 
病気もしたことがなかったし、怪我をしてもすぐに治ってしまう。
もちろん、学校は皆勤賞を続けている。
 
そんな少年には怖いものがある。

それは流行り病。
いわゆるインフルエンザや水ぼうそう、感染症などだ。
 
いくら自分が大丈夫だと言っても、他人にうつしてしまうという理由で強制的に学校を休ませられてしまう。
そうなれば、今まで続けてきた皆勤賞が途切れてしまう。
 
だから、少年はありとあらゆる病気のワクチンを受け続けた。
 
一度、体に病原体を入れ、それが治ると体に抗体ができるということ知った少年。
夏休みなどの長い休みの日になれば、病気になった人のところに行ってうつしてもらって治すことで抗体を作っていく。
 
そして、その行為は段々とエスカレートしていく。
病気だけじゃなく、今度は毒まで克服しようと考え始めたのだ。
 
ハチ、毛虫、クモ、ムカデ、ヘビ、アリなどにわざと刺されたりしていた。
 
熱を出して、病院に行くこともあり、親に怒られることがあったが皮肉なことに少年の体は丈夫になっていった。
蚊やアブに刺されても、少しの間腫れるくらいですぐに治ってしまう。
 
そんな少年は虫や害虫の処理を頼まれるようになった。
それが嬉しくて少年は頼まれれば、すぐに向かうようになる。
 
ある日、少年はある家の住人に害虫処理を頼まれる。
その虫には一度、刺されたこともあるし、体に対抗ができているはずだと、少年はその依頼を受けた。
 
その日、少年は息を引き取った。
 
終わり。

解説

少年が最後に頼まれたのはスズメバチの巣の撤去。

少年は一度、スズメバチに刺されていたことにより、今回でアナフィラキシーショックになってしまい、亡くなってしまった。

 

山岳信仰

俺は登山家である。
とはいっても、界隈では少し有名なくらいで一般の人で俺の名前を知ってるなんて人はほぼいないだろう。
 
エベレストみたいな超有名な高い山に登るというわけじゃなく、どちらかというと多くの山を登るタイプの登山家だ。
 
俺が好むのはあまり人が登らないようなマイナーな山。
そんな山あったの? なんて言われるような山に登るのが好きなのだ。
 
これまで登った山の数は、1000は下らないだろう。
とにかくたくさん山を登っている。
 
今、俺が注目しているのが、とある部族が管理しているという山だ。
その部族は山岳信仰をしていて、管理する山には絶対に人を登らせない。
山を神聖化し、崇めているのだ。
 
だけど、俺からしたらそんなのはナンセンスだ。
山は人が登るからこそ、価値が出る。
俺はそう思っている。
 
でも、逆に言うとその山はほとんど人が踏み入れていないということだ。
こんな山こそ、ぜひ、登ってみたい。
俺は何度もその部族とコンタクトを取り、登山の許可を取ろうとしたが、すべて却下されている。
 
普通なら、そこで諦めるものだろう。
だけど、人間というものはダメだと言われればよけいに気になってしまう生き物だ。
 
登ってはダメと言われれば、尚更、登りたくなる。
 
そこで俺は部族から許可が下りないのであれば、部族にバレないように登ればいいと考えた。
 
山は広大だ。
山に入るルートなんてそれこそ無限にある。
そのすべてに人を配置して監視することなんてできない。
 
だから、俺は部族に見つからないようにあえて険しいルートを選び、その山に入った。
 
人が通っていないということは道がないということ。
それはかなり険しい道のりだった。
だけど、そんなことは俺にとっては寧ろやる気が出てくる。
 
人が登っていない山を登っている。
 
そう考えるだけでゾクゾクしてきた。
そんな興奮を抑えながら頂上へ向かって歩を進める。
 
そして、頂上に差し掛かろうとしたときだった。
なんと人と出会ったのである。
 
ヤバいと思って逃げようと思ったが、出会った人間が若い女性ということもあり、好奇心が勝ってしまった。
俺はその女性に話しかけてみる。
 
するとその女性は部族の人らしく、なんとその人は部族の中で唯一、山を登ることを許可された人なのだと言う。
 
俺はその話を聞いて、大人げなくズルいと思ってしまった。
部族の人間が登れるなら、どうして俺が登るのを許可してくれないのか。
 
思わず、愚痴のようなことを女性に言ってしまった。
すると女性は笑って「この山に登りたいなんて言う人はあなたくらいだ」と言った。
 
どういうことかと尋ねてみると、この山は最近、やけに土砂崩れが起こったり、クマなどの獣害によって多くの村人が亡くなったのだという。
 
確かに危険な山だということはわかる。
でも、こちらの言い分を何も聞かずに登るのを却下するのは違うと思う。
 
大体、山で何かあったとしても部族に対して文句を言うつもりもないし、仮に死ぬようなことがあっても、自分の自己責任だと考えているからだ。
 
それを女性に話すと、女性は笑みを浮かべて「それならとっておきの場所に案内してあげます」と言ってくれた。
 
女性について行くと、そこは大きな滝つぼだった。
 
女性の話ではこの滝に山の神が宿っていて、この場所は選ばれた人間しかこられない特別な場所なのだという。
確かに神秘的でやけに不気味な雰囲気を持った場所だった。
 
さらに女性のいうことには、この場所で多くの人が死んだということらしい。
 
素晴らしい景色ではあるが、やはりどこか不気味な感じがする。
俺は女性に「ありがとう。十分、景色は堪能したよ。そろそろ行こう」と言った。
 
だが、女性は真顔になって首を横に振ったのだった。
 
終わり。

解説

部族の人間たちは山岳信仰をしている。
そして、この山には神が宿っていると信じている。
 
そんな山では最近、山崩れや獣害が起こっていると女性は言っている。
ではなぜ、その山に女性は入ることを許されたのか。
 
それはこの女性が人身御供として送り込まれたと考えられる。
山の神様が宿る滝に飛び込むことで、山の神の怒りを鎮めようと考えている可能性が高い。
 
現に女性はその滝で多くの人が死んでいると言っている。
これはおそらく多くの人が人身御供として飛び込んでいることを示唆している。
 
語り部が帰ろうと言って、女性が首を横に振ったということは、この後、語り部は女性によって滝に突き落とされたのかもしれない。
 
山で起きたことは自己責任だと言った語り部としては、本望なのだろうか。

 

パイロット

少年の父親はパイロットをしている。
 
少年にとってはそれが自慢であり、誇りだった。
もちろん、自分も父親と同様にパイロットになると心に決めていた。
 
少年の父親は責任感が強く、厳格でありながらも面倒見もよく、部下や同僚たちにも慕われている。
 
少年はよく、父親の仕事を見たくて父親が操縦する飛行機に乗っていた。
父親は、少年がコックピットに入ることを許そうとしなかったが、周りが父親を説得するという形で、いつもコックピットに入れてもらっている。
 
父親の話では今の飛行機は自動操縦システムがついているので、操縦しなくても大丈夫なときがあるというのを知った。
 
一度、少年は自動操縦のときに操縦席に座って操縦かんを握りたいと言ったことがある。
少年からしてみれば、自動で動いているので、大丈夫だろうと思ったからだ。
 
しかし、厳格な父親は少年の発言に大いに怒った。
パイロットは乗客と乗務員の命を預かっているのだと。
遊びで操縦席に座るなんて言語道断だと、今まで一番酷く怒られた。
 
少年は正直落ち込んだが、逆に、父親がそこまでパイロットに対して責任と誇りを持っていることに、嬉しい気持ちもあった。
 
それからは、少年は操縦席に座りたいと1度も言わなかった。
 
そんなあるときのこと。
少年の父親は小型の飛行機のパイロットを任され、少年もいつものように父親の仕事を見るためにその飛行機に乗り込んだ。
 
今回の飛行機は自動操縦システムが付いてないとのことで、父親がずっと操縦していた。
コックピットの後方の椅子に座り、父親の姿を眺める。
いつか、自分もあのように操縦席に座るんだと。
 
だが、そんなことを考えているときだった。
飛行機の機体が大きく揺れる。
 
乱気流に巻き込まれ、飛行がかなり不安定になっている。
乗務員も乗客に救命胴衣を着るように指示していく。
 
機体の後方でバキバキと何かが折れるような音が聞こえてくる。
同時に、機体も大きく揺れた。
 
だが、少年の父親は冷静に対処し、機体を安定させる。
 
少年は心から父親を尊敬した。
自分もいつか父親のような立派なパイロットになるのだと、改めて決意を固める。
 
すると父親が少年の方を向き、こっちに来るように呼んだ。
少年が父親のところへ行くと、父親は少年に操縦席に座るように言った。
 
いいの? と問いかける少年に、父親は笑顔で頷いた。
 
少年は喜んで操縦席に座り、操縦かんを握った。
 
終わり。

解説

父親は仕事に誇りを持っていて、いくら子供の頼みでも絶対に操縦席に座らせなかった。
しかし、最後は子供に操縦席に座らせている。
これはどういうことだろうか?
 
その飛行機は自動操縦システムも付いていないので、子供が操縦すれば大惨事になりかねない。
それなのに、あえて子供に操縦させている。
これは既にどうやっても飛行機は墜落すると悟り、最後に子供の夢を叶えてやろうという親心だったのかもしれない。

 

紐なしバンジージャンプ

世間ではなんか、紐なしバンジージャンプというのが流行っているらしい。
 
ネタバレ厳禁ということで、どういうものなのかは出回っていない。
ただ、やってみた人の感想を見ると、かなり評価はいいみたいだ。
 
元々俺は高いところが苦手だし、バンジージャンプ自体、やってみたいとも思っていなかった。
でも、その紐なしバンジージャンプは、高所恐怖症の人こそ是非やってみてほしい、という触れ込みだった。
 
そんな煽り文句を見ると、俄然、やってみたくなるというのが人心だろう。
 
俺は次の休みの日に、さっそく紐なしバンジージャンプをやっている場所に行ってみた。
 
まだ流行り始めということで、その施設も随分と焦らしてくる。
そこは普通の紐ありのバンジージャンプもやっているとのことだ。
 
そして、その普通のバンジージャンプをするところに立ってから普通のバンジージャンプにするか、紐なしバンジージャンプにするかを決めるというルールらしい。
 
階段を登り、バンジージャンプをする場所に向かう。
そこは崖のような場所だった。
飛ぶ位置まで進み、下を見下ろす。
 
崖の下は深い森になっていて木がクッションになるとしても、紐なしで飛ぼうものならほぼ助からないだろう。
 
そのとき、係員がどっちにするかを聞いてきた。
当然、俺は紐なしを選択する。
 
すると係員の人に「その場から動かないでください」と言われ、頭を覆うくらい大きなメットを被らされた。
 
目の前が真っ暗になったかと思うと、すぐに視界が広がる。
そこで俺は納得した。
 
つまり紐なしバンジージャンプとはバーチャル世界でバンジージャンプをするということだったのだ。
 
確かにこれなら、高所恐怖症でも試したくなる。
だって、本当に飛ぶわけじゃないのだから。
 
そう考えると確かにこれは面白いと思った。
 
早く飛び込みたい。
俺は大きく一歩を踏み出した。
 
終わり。

解説

語り部は開始位置でメットを被らされている。
つまり、一歩、踏み出せば本当に落ちてしまう状態である。
 
係員に動かないように言われていたのに、一歩踏み出した語り部は本当に紐なしバンジージャンプをすることになってしまう。

 

イタズラ好きの弟

俺の弟は近所でも有名なイタズラ好きだ。
 
近所のおじさんのカツラにワカメを混ぜたり、配達物が家に間違って届いたと嘘をついて、カエルが入った箱を渡したり、干してある布団に水鉄砲で水をかけておねしょしたように見せかけたりと、くだらないイタズラばかりしている。
 
最初は周りも苦笑いをして、子供のすることと目を瞑っていたが、最近は結構、凝った悪戯をするようになった。
3日前も通り魔に刺されたと言って、血を流しながら帰ってきた。
 
血は家のケチャップを使い切ったのと、服を汚したことを母さんに本気で怒られていた。
 
ケチャップなんてベタだと思うけど、実際、見ると結構、騙されるものだ。
そもそも、あんまり血自体を見ることがないし。
 
今日も何かイタズラを仕込んでいるのか、そわそわしながら部屋を出たり入ったりしている。
そこで俺は弟が部屋から出たタイミングで、弟の部屋に入ってみる。
すると、机の上にモデルガンが置いてあった。
 
今回はこれを使ってイタズラする気か。
 
俺はイタズラでどっかに隠してやろうと思って、モデルガンを手に取った。
なんか妙に重いモデルガンだった。
子供の頃に見たオモチャの銃とは全然違う。
 
そこで、俺は窓を開けて庭にいる弟に向けて撃ってみた。
 
パンというあっさりした音が響く。
すると弟の背中にべったりと血のりが着いた。
倒れる弟。
 
あいつ、ちゃんと血のりまで用意してたのか。
凄いな。
 
俺は弟のイタズラを先に使ってやったことに満足して、銃を置いて部屋を出た。
 
それから3時間後。
母さんが、晩飯ができたと呼びに来た。
 
今日の晩御飯はオムレツだ。
 
俺はケチャップをたっぷりつけて食べるのが好きなのだ。
ケチャップを袋から開けて、たっぷりとケチャップを掛ける。
かけ過ぎて母さんに怒られたくらいだ。
 
それにしても弟がまだ来ない。
早く食べたいのに、母さんに呼んで来いと言われた。
 
はあ、面倒くさいなぁ、もう。
 
終わり。

解説

ケチャップを袋から開けたということは、今までは開いていなかったということである。
ということは、弟の血のりにはケチャップを使っていないということになる。
そして、弟は呼ばれたのにやって来ない。
 
もしかすると語り部が撃ったのはモデルガンではなく本物の銃だったのかもしれない。
(つまりは血のりではなく本物の血だった)

 

集団下校

最近、2年生の子が何人もいなくなっているらしい。
 
お母さんや先生の話だと、不審者っていうのが学校の周りをウロウロしているみたいだ。
だから、絶対に、1人で外を歩かないことって言われている。
 
朝は谷口君の家の前に集まってから学校に行く。
 
帰りは班分けされていて、美奈ちゃん、高橋君、けいちゃん、田口さん、星野君で集団下校している。
 
前までは高橋君とけいちゃん、坂下君と一緒に寄り道して帰っていたから、なんだか寂しい。
また、帰りに空き地でサッカーとかしたいなぁ。
 
美奈ちゃんは「変な人が捕まるまでの我慢だよ」と慰めてくれる。
「俺が見つけたらやっつけてやるのにな」って星野君が言う。
「捕まった人って、どうなったんだろ……」と田口さんが怖いこと言った。
「あ、俺こっちだから。じゃあ、また明日」と言って、高橋君が走っていく。
 
「そういえばさ。算数の宿題だけど、あれわかった?」と美奈ちゃんが言った。
確かに今日出された宿題は難しい。
「俺は父さんに教えてもらう」とけいちゃんが言う。
「いいなぁ。私の家は、ちゃんと自分でやりなさい、だよ」とため息をつく田口さん。
「あ、私、こっちだから。じゃあね」と言って美奈ちゃんが家に入っていく。
 
歩いていると、いつも寄っていた駄菓子のお店の前に来きた。
 
「ねえ、けいちゃん。お菓子買っていかない?」って僕が言うと、けいちゃんが笑う。
「いいね。ちょうどお腹減ったし」
「ダメだよ、買い食いしちゃ」と田口さんが注意してきた。
僕たちは口を尖らせて我慢するしかなかった。
先生に言いつけられたら大変だ。
 
「お、田口。お前もこっちだろ?」とけいちゃんが田口さんに言う。
「そうだった。危ない危ない」と田口さんが笑う。
「それじゃな!」
「バイバイ」
けいちゃんと田口さんが一緒に道を曲がっていく。
 
これで僕一人になってしまった。
まだ、僕の家までは遠い。
 
怖いと思いながら、僕は走って帰ることにした。
 
終わり。

解説

いつの間にか星野君がいなくなっている。

 

秘湯

最近、俺は温泉にハマっている。
しかも、無料で入れる、天然の温泉を回るっていうのが俺の中の流行りだ。
 
そういう温泉って、混浴が多いし。
まあ、水着で入るんだけど。
 
でも、その場で出会った女の子たちと温泉の中で話すのって、興奮するんだよ。
 
夏休みなんか、一人で全国の温泉巡りをするのだ。
 
今日行く温泉は変わった温泉で、海の近くにあって、満ち潮のときにしか入れないところらしい。
 
それにしても楽しみだ。
海を眺めながら風呂に浸かるなんて最高だろ。
 
それなら女の子がいなくても、十分だ。
逆に一人で入りたいかも。
 
朝から出発して、到着は夕方になってしまった。
できればもう少し早い時間に来たかったんだが仕方ない。
青い空と一体化した海を見ながら温泉に浸かりたかったんだが……。
 
それでもせっかく来たんだから、暗くなる前に入っておきたい。
足早に脱衣室に行き、裸になって温泉へと向かう。
 
するとどこかのじいさんがやってきた。
 
「げっ! じいさんと一緒かよ」
 
そう思ってげんなりしていたが、じいさんは温泉に漬けていた卵を回収して行ってしまった。
どうやら温泉卵を作ってたみたいだ。
 
よかった。
これで一人で入れる。
 
俺は周りに誰もいなかったので、思い切り、勢いよく温泉へ飛び込んだ。
 
終わり。

解説

この温泉は満潮でしか入れないと語り部は言っている。
それは、源泉は熱く、海水が入ることで程よい温度になると考えられる。
そして、おじいさんは『温泉卵』を作っていた。
つまり、現在は満潮ではなく、温泉の温度は70℃前後だと考えられる。
そんな温泉に語り部は勢いよく飛び込んでいる。

 

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