意味が分かると怖い話 解説付き Part211~220

意味が分かると怖い話

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大食い

「健康の秘訣は腹八分目にすることだよ」
 
これは、大好物の焼き芋を頬張りながら言った、私の親友の言葉だ。
 
でもその子はいつもなにかと物を食べてたし、ビックリするくらいたくさん食べる子だった。
でも考えてみれば、健康の秘訣を言ってるだけで、自分がそうしてるって言ってるわけじゃないから、別に嘘ってわけじゃないのかな。
 
その子は好き嫌いはなくて、何でも食べる。
それも美味しそうにたくさん食べる。
 
だから子供の頃は大人たちに気に入られて、よくご馳走してもらっていたようだ。
私はそれが羨ましいって思ってたけど、それよりも納得できないことが1つある。
 
それは全く太らないということだ。
 
あんなに食べてるのに全然太らない。
私の3倍は食べてるのに私より細い。
納得がいかない。
 
そんな彼女との付き合いは社会人になっても続いていた。
彼女の大食いは今も変わらない。
そして、なんとビックリしたのが、彼女は何と大食いのユーチューバーらしい。
 
その界隈だと割と有名みたいだ。
一緒に外食に言ったら、時々、彼女が声を掛けられるところを見ている。
 
そんなあるとき、彼女は大食いの大会に参加したいから、付き合って欲しいって言ってきた。
私はその大会に出れるわけがないし、一人で行けばと思ったんだけど、どうやらアメリカで開催されるから、行くのが不安らしい。
 
私も海外旅行に興味があったし、交通費は奢るって言われたから、有休をとって彼女に付き合ってアメリカに行った。
 
そして、大会当日。
彼女はものすごい勢いで食べ続け、そしてなんと優勝してしまった。
 
彼女が全力で食べたのを初めて見て、本当にビックリした。
よくあんなに食べれるなぁって。
いつも、一緒に外食するときは抑えていたんだなって思った。
 
大会が終わって、賞金を受け取った彼女。

「いやあ、さすが本場はみんな、食べる量が凄いね。ギリギリだったよ」
 
そう言って笑う彼女。
そして、町中を歩ていると、ふと路上で焼き芋を売っているのを見つけた。
 
「あ、焼き芋だ。……食べない?」
「え? でも、さっきギリギリって言ってなかった?」
「うーん。今日だけは健康の秘訣を破っちゃおうかな」
 
 悪戯っぽくそう言った。
 
 終わり。

解説

語り部の親友はずっと健康の秘訣を守っていた。
つまり、本場の大食い大会を腹八分目ギリギリで優勝したことになる。

 

色仕掛け

色仕掛け。
ハニートラップとも言うよね。
 
やっぱ、男ってそういうのに弱いし、今までの歴史の偉人たちもトラップに引っかかって転落していった人も多い。
 
実はあたし、ある機関のエージェントってやつなのだ。
 
え? 馬鹿っぽくてそんなふうに見えない?
あははは。そうそう。そういうところが選ばれた理由なんだってさ。
相手も、まさか、あたしみたいな女がエージェントって思わないから油断するらしい。
 
確かに政治とか難しいこととかはわからないよ。
でもね、何を聞き出せばいいかとかは教えてもらえるから、あたしはそれを相手が言うように仕向けるだけ。
 
正直、相手から話を引き出すことはホント自信あるんだよね。
あたしってお店でもナンバーワンだからさ。
 
あ、お店ってキャバクラね。
 
でもホントはナンバーワンって言っても、繰り上がりでなったんだけどね。
あたしがお店に入ったときに、色々教えてくれた人がいたんだけど、その人がずーっとナンバーワンだった。
 
その人がある日、自殺しちゃって……。
だから、ずーっとナンバーツーだったあたしがナンバーワンになったってわけ。
 
その人はなんか悩んでたみたいなんだけど、あたしは気づくことができなかった。
それが今は、心残り。
 
って、話が逸れちゃったね。
 
あ、そういえば最近、キャバ嬢の自殺が続いてるんだってさ。
しかも、お店のトップの人たちが多いみたい。
男に捨てられたって話。
怖いよねー。
 
これ、オフレコなんだけど、実は今、指令が来てるんだよね。
 
相手は外国のスパイなんだってさ。
ま、あたしにかかれば聞き出すことなんて超ヨユーだよね。
 
あ、今日も来たみたい。
さっそく、指名されたし、行ってくるね。
 
 
 
これが、私がお店に入ったときから、面倒を見てくれた人が言ってたことです。
本当に素敵な人で、私の憧れでした。
 
でも、その人はそれから3ヶ月後くらいに自殺してしまいました。
 
終わり。

解説

最初の語り部はハニートラップにかけるどころか、逆にトラップにかけられてしまった。
相手のスパイは夜のお店の女性から情報を得ていたのだ。
最初の語り部も情報を引き出すどころか、逆に引き出されてしまい、その後捨てられたことで自殺してしまった。

 

金庫

絶対に破られない金庫があるという噂があった。
 
現にその金庫からは一度もお金が盗まれたことはない。
その金庫の持ち主は、金庫を信頼しきっており、財産の全てはその金庫の中に入れている。
 
もちろん、様々な強盗がその金庫に挑んだ。
だが、挑んだ強盗全員が戻らぬ人となっている。
 
そんな伝説級の金庫に、ある男が挑んだ。
 
様々な罠を潜り抜け、男は金庫の前へとたどり着く。
 
財産の全てが入っているだけあり、金庫は部屋ほどの大きさがあった。
確かに強固ではあったが、男はなんなく金庫を開くことに成功した。
中には膨大な金額の証券や現金、金などがある。
ほんの一部でも持ち帰れば大金持ちだ。
 
男は自分が伝説を破ったことと、目の前にしたお金に興奮し、意気揚々と金庫の中へ入っていった。
 
そして、男は戻らぬ人となった。
 
終わり。

解説

金庫は入ることは容易だが、出ることができない代物だった。
男が金庫に入った瞬間、扉が閉まり、男は閉じ込められてしまった。
数日後に男は金庫の中で窒息死したのである。

 

運び屋

男は一流の運び屋である。
世界中のどんなところにも、どんなものも届けることができるという触れ込みだ。
 
例え紛争中の国でも侵入するし、例え違法な物でも断らない。
 
ある国の政府の重要書類も運んだことがあるし、貧困国の子供を運ぶという名目で誘拐することも平気でやった。
 
全ては金のため。
金さえ払えば、どんな物も運ぶというのが男のポリシーだった。
 
あるとき、男はあるカバンをニューヨークに運んで欲しいという依頼を受けた。
依頼を受けたのは、何度か違法な依頼をしてきた馴染みの人間だ。
 
しかも報酬は場所や物を考えると、かなりの法外な額だった。
 
男はいつも結構な無茶な依頼をこなしていることへのボーナスだと納得し、さっそくニューヨークへと飛んだ。
 
なんの障害もなくなんなく、目的地へと到着した。
 
場所はとある病院。
受取人がいる部屋へ行くと、医者らしき人間と、数人の黒服を着た人間がいた。
 
男はさっそく依頼されたカバンを渡す。
黒服がカバンを開くと、中は空っぽだった。
 
この後、男の姿を見た者はいない。
 
終わり。

解説

男が運んだのは男自身。
この後、男は臓器移植のドナーとして解体されてしまった。
もしかすると、知ってはいけないことを知り過ぎたのかもしれない。

 

通報

男はどちらかというと、人よりも正義感と責任感が強かった。
 
ある日の仕事の帰り道のことだった。
終電でギリギリ電車に乗れたことに安堵しつつ、疲れ切った体で家路へと急ぐ。
 
すると路地裏から小さな話声が聞こえてきた。
気になって覗いてみると、男が2人向かい合い、何かをやり取りしている。
目を凝らしてみると、白いものが入った袋と封筒を交換していた。
 
男はとっさに麻薬だと思った。
 
ヤバい現場だと思い、その場を後にしようと思ったが、突然、男が相手の男をナイフで刺した。
何度も何度も刺している。
 
刺された相手は確実に死んだということは、遠目に見ていた男にもわかった。
男はそそくさとその場を後にして、家で震えて過ごした。
 
だが、次の日。
ネットを調べてみても、その事件のことは載っていなかった。
 
まだ見つかっていない。
 
男は通報しようか迷った。
通報するべきだと思うが、もし、報復などされてしまってはたまらない。
 
男は数日間悩み抜き。
警察に通報することを決意した。
 
交番へ行き、警察官に見たことを伝える。

「おそらく麻薬の取引です。そしたら、相手の男がもう一方を刺し殺したんです」
「それって、2丁目の友谷ビルのところですか?」
「そうです。組織的な犯罪かもしれません」
「わかりました。では、あなたは一旦、ここで保護しますね。報復の恐れがありますから」
「はい! ありがとうございます! 助かります!」
 
次の日、この男が通報した事件はニュースとして、新聞の片隅に掲載された。
 
麻薬の売人を殺害して自首した男が、留置所で自殺。
 
終わり。

解説

男が場所を言う前なのに、警官が場所を知っているのはおかしい。
つまり、麻薬の売人を殺したのは警察官ということである。
通報した男は罪をなすりつけられ、殺されてしまった。

 

私の趣味は山登りだ。
 
でも本格的な登山をする山ガールとかじゃなくて、自然を楽しむタイプの山登りだ。
どちらかというとハイキングに近いのかもしれない。
 
だから、富士山とかそういうガチの山登りはしない。
体力も続かないしね。
 
それで結構、植物にも興味があったりする。
珍しい花なんか見つけると、テンション上がっちゃうんだ。
もしかしたら、そういう花を見つけたいから山に登ってるのかも。
 
だって、散歩で見つけられる花で珍しいのなんてほとんどない。
そりゃそうだよね。
滅多に見れないから、珍しいんだから。
 
そういう目的だから、大体は私一人で山を登る。
同じ趣味の人がいればいいんだけど、そうそう花を見るために登山をする人はいない。
 
でも稀に山の中で出会いがあったりする。
そのときだけで、もう二度と会わないような人との出会い。
まさに一期一会ってやつだ。
 
そういうのも山登りの醍醐味かもしれない。
 
あるとき私はほとんど人が寄り付かないようなマニアックな山に登っていた。
そこで私は10歳くらいの女の子に出会った。
 
その女の子はかなりの軽装で、一人で山に来ていると言っていて、私はすごく驚いた。
話を聞いてみると、家が近くにあるらしい。
この辺は庭みたいなものだと言っていた。
 
この山が庭だというのは本当のようで、私はその女の子に、色々と穴場スポットを教えてもらった。
景色の良い場所、綺麗な水が流れる川、そして珍しい花が咲く場所。
 
私はいつも見てきたものとは全く違う幻想的な雰囲気に、魅了され、終始興奮気味だったと思う。
何度も女の子にお礼を言っていたを覚えている。
 
そんな私を見て、女の子はとっておきの花を見せてくれると言った。
 
山奥のさらに奥。
そこにひっそりと咲く、一凛の花。
 
それは青く淡い光を発する、不思議な花だった。
あまりに幻想的な花で、まるで夢の中のような光景だ。
 
もちろん、見たことのない花だった。
 
女の子の話によると、この花は10年に1度しか咲かない花で、しかも毎回、咲くときは色が違うのだという。
前回は黄色で、その前は琥珀色だったと言っていた。
 
黄色と琥珀色か。
それはそれで見たかったなぁ。
 
私はその花を目に焼き付け、立ち上がる。
そろそろ帰らないと暗くなりそうだ。
 
すると女の子は不思議そうな顔をして私を見上げた。

「お花、摘もうとしないの?」
「しないよ。だって、摘んじゃったら、あなたが見られなくなっちゃうでしょ?」
 
私がそういうと女の子は素敵な笑顔を浮かべた。
もしかしたら、その笑顔はその花よりも、印象が強かったのかもしれない。
 
女の子に連れられ、進んでいくと、あっという間に山の麓についていた。
私は女の子にお礼を言って、家に帰った。
 
本当に不思議で幻想的なものばかりだった。
 
また、あの子に会えるかな?
 
そう思いながら、ベッドに入る。
そして、今度はあの花とあの女の子の写真を撮ろうと心に決めたのだった。
 
終わり。

解説

10歳の女の子が、なぜ10年に1度しか咲かない花の、前の花の色を知っているのだろうか?
もしかすると、この女の子は人間ではなく、山の精霊かもしれない。

 

ラテアート

私にはどんなに仲のいい友達にも秘密にしていることが2つある。
 
1つ目はオタクということだ。
オタクのジャンルがBLとかだと、まだ少しは周りに理解者がいるかもしれない。
けど、私の好きなジャンルは女児向けアニメ。
 
その中のサヤカというキャラクターが大大大大好きなのだ。
メインキャラクターじゃないので、登場シーンが少ないのが本当に悔しい。
でも、本当に愛おしいし、この愛は誰にも負ける気がしない。
ハグして、ペロペロして、一緒に寝たい。
 
なんてことを友達に言えるわけがない。
完全に友達がいなくなってしまう。
 
だから私は絶対にバレないように徹底している。
関連グッズは店に買いに行くのではなく、通販。
この前、劇場版が公開されたけど、泣く泣く見に行くのを我慢。
円盤になってから、通販で取り寄せることにした。
 
買ってる途中で知り合いに見つかりでもしたら、一巻の終わりなのだ。
 
 
そして、もう1つは執事喫茶に通っていること。
まあ、これは友達に見つかっても、まだセーフだろう。
ちょっと興味があって試しに行ってみたで、誤魔化せると思う。
 
でも、お店に行くまではガッツリと変装するけどね。
バレないに越したことはないから。
 
そもそも、なんでこのお店に通うことにしてるのかと言ったら、私の大好きなサヤカちゃんがお嬢様だからだ。
ここに来れば、サヤカちゃんと同じ気分を味わえるんじゃないかって思ったのが切っ掛けだ。
 
なんていうか、やっぱり、お嬢様扱いされるのは気持ちがいい。
それから癖になって通い続けているというわけだ。
 
だから、別に目当ての男の子がいるとか、そういうんじゃない。
私はサヤカちゃんに一途なのだ。
 
そんな中、そのお店に新人が入って来て話題になっていた。
なんでも、ラテアートが物凄く上手いらしい。
 
花やキャラクターはもちろん、客の似顔絵なんかも描けるみたい。
 
飲み物の注文が入ると、必ずと言っていいほど、その人にラテアートを描いてほしいという注文が入るって話だ。
 
私はあまり興味がなかったのだが、店が空いているときにラテアートを描きますよと言われたので、描いてもらうことにした。
 
リクエストを聞かれたが、パッと思いつかなかったので「お任せで」と注文した。
 
するとラテアートで出てきたのはなんと、サヤカちゃんだったのだ!
 
しかも上手い!
ビックリした!
 
さすが執事!
わかってる!
 
正直、アートを崩すのを躊躇っていたが、徐々に絵は崩れていったので仕方なく混ぜて飲むことにした。
なんか、サヤカちゃんを体内に入れた感じがして興奮する。
 
お会計を済ませ、店を出る。
また頼んでみようかなと考えながら家路につく。
 
そして私はあることに気づいた。
 
私はすぐに引っ越しをして、二度とその店には近づかないようにした。
 
終わり。

解説

語り部はサヤカというキャラクターが好きなことは、絶対にバレないようにしていた。
しかし、「お任せ」と注文して、ピンポイントでマイナーキャラの「サヤカ」を描いてきたのは偶然というには出来過ぎている。
つまり、この新人は語り部のストーカーの可能性が非常に高い。

 

歌番組

男はTV局のプロデューサーをしている。
コネでTV局に入り、そのコネのおかげで昇進し、異例の速さでプロデューサーに上り詰めた。
 
男は下積みもなくプロデューサーになったため、番組制作に関してはほぼ何も知らない状態だった。
だからいつも番組制作は下の人間に全て任せている。
 
口を出さないことがある意味、功を奏したのか男が手掛けた番組の視聴率はなかなか高かった。
いつしか、周りからはコネでのし上がったプロデューサーではなく、敏腕プロデューサーとして認識され始める。
 
これに気をよくしてか、男は番組制作の現場に現れ、指示しるようになった。
もちろん、その指示は無茶苦茶で、現場は疲弊し続けている。
 
そんなあるとき、局長から社運を賭けた番組の案件が渡された。
それは歌番組で、どんなに経費がかかっても絶対に成功させてほしいというものだった。
 
そこまで言われれば断ることもできず、男は了承した。
 
だが、男はまったく歌に興味がない。
今の流行りはもちろん、過去に流行った曲もしらないのだ。
 
そこで男はディレクターにキャスト案を出せと命令する。
豪華なキャスティングにして欲しいと。
 
ディレクターは三日三晩考え抜き、男にキャスティング表を出した。
 
男はそのキャスティングに目を通す。
男でも知っている実に豪華なメンバーだった。
 
男はさっそくそのキャストを集めた。
多額の出演料がかかるが、金は度外視してもいいとのお達しだ。
  
そして、放送日。
番組が放送されると、大炎上する。
 
各所のメディアからも叩かれ、「史上最悪の歌番組」と呼ばれる始末。
 
男は地方に飛ばされ、男の部下たちは喜んだ。
 
終わり。

解説

男は全く曲に興味もなく、アーティストも知らないはず。
なのに、なぜ『豪華』だと思ったのか。
それはキャスティングした出演者が『歌手ではなかった』ため。
歌手がいない歌番組がどうなるのか。
史上最悪の歌番組と言われても仕方がないだろう。

 

消防士

ええ。続いている火事は同一犯の放火だと思いますよ。
 
警察にも言ったんですが、放火犯はかなり知識がありますね。
これは俺だけじゃなくて、同僚や先輩も同じ意見です。
 
どこにどういう風に火を付ければどのくらい燃えるのか計算してます。
 
だからこんなに放火が続いているのに死者が出てないのもそういうことだと思います。
 
中には放火犯は、この街に不必要なものを燃やしてるんじゃないかって言ってる人もいます。
放火されたのは廃墟で不良のたまり場になっている場所や、不正献金をしている会社、迷惑なバカッターの家とかですからね。

え?
いやいや。放火は放火ですよ。
死者が出てないからっていいわけではないです。
 
消防士の私から見れば迷惑でしかないですよ。
 
この放火のせいで最近はろくに寝てないんです。
非番の日でも駆り出されたりしますからね。
早くゆっくり寝られるようになりたいです。
 
いつ連絡が来るかわからない状態じゃ、気が休まりません。
どうせ、今夜も呼び出されますよ。
もう、2丁目で待機してようかな、なんて思っちゃいますよ。
ははははは。
 
とにかく、警察には早く犯人を捕まえて欲しいです。
放火犯なんて、この街には不要ですから。
 
次に放火するなら犯人にしてほしいです。
なんて、不謹慎ですね。
ここはカットでお願いします。
 
あ、そろそろ行かないといけないので。
それでは失礼します。
 
終わり。

解説

インタビューに答えている語り部は、なぜ、次に2丁目が狙われているのを知っているのか。
放火犯は語り部である可能性が高い。

 

掃除当番

俺は野球の名門高校に通っている。
学校は全寮制で、野球部は全員、寮に住む決まりになっているのだ。
 
この高校に推薦で入れるとなったときは、本当に嬉しかった。
甲子園に行くことが小さい頃からの夢だったからだ。
 
だけど、俺の野球の才能はどうやら中学までがピークだったらしい。
高校に行ってからは伸び悩み、レギュラー争いどころかろくに練習に参加もさせてもらえなくなった。
球拾いのような雑用をさせられてばかりだ。
 
当然、こんな俺はイジメの対象になった。
部活では球拾い、グランド整備、部員のユニフォームの洗濯などをやらされる。
マネージャーと一緒に作業をやることも少なくない。
 
マネージャーが女の子ならある意味美味しいが、この学校は男子校だ。
本当に嫌になる。
 
寮に帰ってもイジメは続く。
俺は寮の掃除当番になっているのだ。
 
寮内のありとあらゆる場所の掃除をしなくてはならない。
玄関や廊下、トイレ、風呂、洗面所などなど。
部員の部屋意外の掃除を全部任されてる……というより押し付けられている。
 
それだけでも十分イジメだと思うのに、最近ではさらに陰湿なイジメをされている。
わざと玄関に泥だらけの靴で上がってきたり、廊下で砂を払ったり、風呂の排水溝を長い髪で詰まらせたり、トイレのタンクに赤のペンキを入れたり、洗面所の鏡に手形をベタベタつけたり。
もう、ホント、ガキくさい悪戯ばかりだ。
 
でも、そんな馬鹿臭いことでも、俺の精神は削られていく。
夜は眠れなくなり、寝不足になる。
そのせいで、幻聴まで聞こえるようになった。
 
もう限界だ。
こんなところにいてもいいことなんて一つもない。
 
俺は転校することを決めた。
 
終わり。

解説

野球の名門校ということは部員はほぼ坊主のはずである。
それなのに排水溝が『長い髪』で詰まるのはおかしい。
そのほかにも、トイレのタンクに赤いペンキが入れられているというが、本当にペンキなのだろうか。
鏡の手形も怪しい。
なにより、語り部が、幻聴が聞こえるようになったと言っている。
果たして、本当に幻聴なのだろうか。
もしかするとこの寮には人ではない者が住み着いているのかもしれない。
語り部は転校することで、ある意味助かったが、残された部員がどうなってしまうのだろうか。

 

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