本編
最近、引っ越しをした。
見つけたアパートは事故物件でもないのに、妙に安く、その上あまり人が入ってないとのことで、すぐにその場所に決めた。
駅も近いし、周りにお墓があるわけでもない。
なんで安いんだろうと、不思議ではあった。
引っ越しするときの業者も、物を運ぶときに「階段見た? 俺、初めてだったんだけど」などと盛り上がっていた。
そのとき、「何が初めてなんですか?」と聞いてみたけど、なんだか濁されてしまった。
3ヶ月以上、住んでいるけど、今のところは特に何もない。
気にしないでおこうと思っていた矢先、また一人、アパートから出て行った。
何となく不気味という理由だけで出て行きたくもないし。
そんなとき、あることを聞いた。
それは13階段というものだ。
13段というのは死刑台の階段の数で、それは縁起が悪いらしい。
普通、大工さんも階段の数は13段にはしないとの話だ。
この話を聞いて、ピンときた。
きっと、アパートの階段は13段なんだ。
すぐに帰って、確認してみる。
10、11、12、13、14。
14段だった。
なんだ。違うのか。
ドキドキして損した。
終わり。
■解説
引っ越し業者が階段のことを話していることや、妙に家賃が安いこと、人が住まないところから見て、そのアパートは13段だという可能性は高い。
だが、なぜ、語り部が数えたときは14段あったのか。
もしかすると、このアパートの階段は数が変わるという怪奇現象も起こるので、人が住み着かないのかもしれない。