■本編
人生100年時代というが、私以外はもう残っていない。
私は今年で93だ。
身体もボロボロで、あと7年なんてとてもじゃないが無理だろう。
そろそろ、私にもお迎えが来る頃だろうか。
いつ来ても、私は満足だ。
なんてことを考えていると、ある情報が入って来た。
私の母校である中学校が取り壊しになるというのだ。
もう40年前に廃校になっているから、ここまで残っている方が奇跡だろう。
その情報を聞くと同時に、ある約束を思い出す。
「卒業してからも、もう一度、全員でここの教室に集まろう」
思えば、あの頃が人生の中で一番楽しかったかもしれない。
クラス全員が仲良しで、何か行事があれば、クラス一丸となって取り組んだ。
実に懐かしい。
取り壊しになる前に行かなくては。
私は周囲の制止を振り切って、母校である中学校に向かった。
どの教室か忘れていたが、学校を見た瞬間に思い出した。
本当に久しぶりにあの教室の前に立つ。
そして、ドアを開けた。
「おお! 遅かったな。お前が最後だぞ」
教室には全員が揃っていた。
先生まで来てくれていた。
「みんな、約束、覚えてたんだな」
「当たり前だろ」
「待たせてごめん」
私はみんなとの再会に心を震わせた。
終わり。
■解説
語り部は「最後」だと言っている。
つまり、他の人たちはみんな死んでいるということになる。
では、なぜ、教室に行った際に、全員そろっていたのか?
語り部が「お待たせ」と言っているところから、教室にいたのは幽霊。
語り部は教室で亡くなり、みんなと再会した。