家鳴り

意味が分かると怖い話

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:魔除けの札〉  〈次の話へ:シャンプー〉

■本編

女は思い切って家を買うことにした。
 
奇跡的に株で儲けたことと、ふと見た広告で安いのにいい物件を見つけたからだ。
 
家を持ったことにこれからの安堵感と満足感を感じていた女だったが、すぐに後悔することになった。
 
その家では心霊現象が起こるようになったのだ。
 
女しかいないはずなのに、誰かがいるような感覚がしたり、夜になるとミシミシと家が軋む音がしたり、物の位置が変わっているような気がしたりしていた。
 
そのせいか、悪夢を見るようになり、酷いときは朝起きたときに、首に手の形の痣が付いていた時もあった。
 
家を売って引っ越そうと考えた。
だが、そのことを友達に相談すると知り合いに霊能力者がいると紹介された。
 
格安で見てもらえるとのことで、早速、家に来てもらい、見てもらう。
 
するとその霊能力者は家を見てニコリとほほ笑んだ。
 
この家に霊など憑りついていないとのことだった。
女は霊能力者にこれまであったことを伝える。
 
だが、霊能力者は全て「気のせい」で説明が付くというのだ。
 
誰かがいるような感覚も物の位置が変わっていること、そして悪夢を見ることも全部、幽霊がいるんじゃないかという恐怖の意識で、そう感じてしまうだけなのだという。
 
女は家がミシミシと音が鳴る件はどうなのかと聞くと、それは屋鳴りと呼ばれる、外気と家の中との温度差で、家が軋む音なのだと説明した。
 
そう聞いて、女は安心した。
 
霊能力者がいうように怖がらなければミシミシという家鳴りも気にならなくなり、悪夢も見なくなった。
 
家を売らなくてよかった。
女はホッと安堵して、この家に住み続けた。
 
終わり。

■解説

気のせいでは、首についていた手の形の痣は説明できない。
つまり、霊能力者は偽物で、この家には幽霊がとり憑いている可能性が高い。

 

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:魔除けの札〉  〈次の話へ:シャンプー〉