■本編
俺は休暇を使って、友人と一緒に海外旅行に行った。
俺も友人も、毎日同じことの繰り返しに辟易していて、刺激を求めていたのだ。
そんな旅行先で、サファリパークの看板を見つけた。
俺も友人も動物が好きなので、すぐに行こうということになった。
車の中から動物を見る。
だが、思ったよりも迫力を感じなかった。
そんなとき、ポツリと友人が「車を降りてみないか」と言い出した。
友人の気持ちもわかる。
とにかく刺激が欲しかったのだ。
俺は友人の言葉に頷き、外に出てみた。
それは凄く刺激的で、非日常感を味わえた。
だが、それもドンドンと麻痺していき、今度は徒歩でパーク内を歩くようになっていた。
そのときは俺も友人も「襲われないだろう」と高をくくっていたのだ。
だが、その安易な考えはすぐに後悔する結果となる。
いきなり友人が虎に襲われたのだ。
俺は友人を助けることも忘れ、必死に走った。
とにかく走った。
もう車の場所さえもわからなくなった。
走る中で肉食動物が目に入る。
それはもう生きた心地がしなかった。
だけど、俺は何とか草食動物のエリアに到着することができた。
安心すると、急に力が抜け、その場にへたり込む。
視線を上げると遠くに象の群れが見える。
その中の象が耳を広げながら、こっちを見ていた。
それはまるで、俺を歓迎しているようだった。
終わり。
■解説
象は草食動物だが、非常に危険な動物で、世界では年間500人ほどが象によって命を落としている。
そして、象が耳を広げるというのは怒っているときの仕草とされている。
時速40キロで走ると言われている象に狙われた語り部が、この後、どうなったかは火を見るより明らかである。