■本編
お俺は小さい頃から、海辺にある自分の家が嫌いだった。
潮風でベトベトするし、夜も波の音がうるさいし、夏になれば1日中観光客が騒ぐし、ご飯は海鮮ものが多い。
そんな理由で、本当に家が嫌いだったのだ。
だけど、一つだけいい点がある。
それは、海がなんでも流してくれるということだ。
母親に怒られたくなくて、点数の悪かったテストを海に投げ込めば流してくれる。
イタズラで盗んだ、あいつの上靴も海に流してやったが、犯人は俺だとバレなかった。
弁当で嫌いな物が入っていたときは、残して、帰りに海に流した。
海は本当に偉大だ。
嫌いなあいつが飼っている犬が、俺の足を噛んだから殺して海に流してやった。
そのときも犯人が俺だと気づかれなかった。
高校の頃、彼女の浮気相手を殺して流してやった。
大学のときは妊娠した彼女を殺して流した。
社会人になってからはムカつく上司を殺して流してやった。
それからも、浜辺で騒いでる観光客を殺して流した。
今日も両親が旅行に行っている間に女を連れ込んだが、抵抗されたので殺して流した。
朝になると、なんか浜辺が騒がしい。
季節外れの観光客だろうか。
よし、そいつらも殺して流してやろう。
終わり。
■解説
最後、浜辺で騒がしかったのは浜辺に死体が残っていたため、警察が来ていた。
つまり、女は流れなかったということになる。
なぜ、流れなかったのか。
今までと違うのは、『両親』が旅行中に流しているということだ。
つまり、今までは海が流してくれていたのではなく、両親が死体を処理していたということになる。