■本編
最近、嫌がらせをされている。
ずっと監視されている気がするし、夜中に窓を叩かれたりもする。
イタズラ電話も多いし、嘘の噂を流されたりもしている。
もちろん、警察に相談したけど、見回りを強化してくれるだけだ。
さらに、警察が見回りしてくれているときに限って、嫌がらせがピタリと止まる。
だから、警察に相談に行っても「またか」という顔にされるようになった。
寝不足になって頭がボーっとする。
そんな状態で電車を待っていると、ドンと押されてしまった。
ホームから線路に落ち、大騒ぎになったが、誰かがすぐに非常停止ボタンを押してくれたことで俺は事なきを得た。
さらには道を歩いていたら、上から鉄の箱が落ちてきたりもした。
もう少しで当たるところだった。
警察の人の話だと、当たっていたら即死だったと言われた。
こんな状態だと、怖くて外に出られない。
でも、出ないわけにはいかない。
もうノイローゼになりそうだった。
そんな俺を見かねてか、友人がすごく当たる占い師を紹介してくれた。
その占い師は占った相手の死期が見えるのだという。
その占い師に見てもらって、事故を回避したとか、病院で検査をしてもらったら早期の癌を発見できたとか、その占い師のおかげで多くの人が命を救われたらしい。
そして、俺はその占い師に見てもらった。
すると、占い師にこう言われた。
「あなたは一ヶ月以内に刺殺されます。絶対に家で一人になってはいけません」
俺はその日から、知り合いに頼み込んで、家に泊まってもらうことにした。
絶対に家では一人にならないようにした。
そして、占い師に言われた一ヶ月が経とうとしたときだった。
その頃には嫌がらせも収まってきていて、俺の精神も安定してきた。
そんなときだった。
町で高校のときのクラスメイトに会った。
そいつには、正直あまり会いたくなかった。
たぶん、そいつには嫌われていると思っていたからだ。
というのも、当時、そいつから恋愛の相談をされて、そいつが好きだった女のことをリサーチする間に、いつの間にか、その女と付き合うことになってしまったからだ。
結局、その女とは1年ももたなかったのだが。
そこからは俺は気まずさがあってか、そのクラスメイトとはあまり話さなくなっていた。
卒業して5年が経っている。
そのクラスメイトは、その頃のことは全然気にしていなかった。
どうやら、俺だけが気にし過ぎてただけだったようだ。
そもそも、恋愛の相談に乗るくらい仲が良かったのだ。
俺たちは高校の頃の話で盛り上がった。
もっと話したいと思い、家で飲まないかと誘った。
酒とつまみをたっぷりと買って、家で飲み始める。
今日は二人で朝まで飲み明かそう。
終わり。
■解説
占い師が言っていたのは「刺殺されるので、一人にならないこと」である。
つまり、「殺される」ときは「犯人」と「語り部」の「二人」になることを避けろと言っているのである。
もし、語り部の言う元「クラスメイト」が「犯人」だった場合、語り部は「家で一人」になってしまう。
元クラスメイトは、好きな人を取られたことをずっと恨んでいたのかもしれない。