懲りないカップル

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本編

俺は交番のお巡りさんってやつをやっている。
担当している地域は平和で、事件なんて滅多におきない。
 
起きるとしたら事故で、去年、5年ぶりに町で死者が出た。
確か、亡くなったのは女子高生だったとか。
若い子が亡くなると、なんというかやるせない気持ちになる。
 
とはいえ、そんな町なので、とにかく俺は暇で仕方ない。
しかも、一番若いって理由なのか、いつも夜勤を押し付けられる。
 
夜は昼間以上に暇で、好き勝手できるからいいんだけど。
この前は朝まで部屋でゲームして過ごした。
 
お菓子が無くなったらコンビニまで買いに行ったりと、結構、やりたい放題だ。
 
今日もコンビニの帰り道、高校生のカップルが自転車を二人乗りしてたので注意した。
最初、男の方はキョトンとした顔をしていたが、すぐに注意されたことを喜んでいた。
 
変な奴だ。
 
その日から、その学生カップルを見かけることが多くなった。
その都度、俺は二人乗りを注意する。
そのたびに男の方はヘラヘラと笑う。
 
何がそんなに面白いのかわからないが、こっちとしてはちょっとイラっとする。
 
こっちも意地になって、見かけるたびに注意してやった。
それから2年がたった頃、俺もついに移動を命じられることになる。
 
せっかく楽できる場所だったのに。
 
俺は入れ替えに配属になった後輩に引き継ぎをして、配属先へ移動する。
移動した先は、結構忙しくて、楽を覚えた俺にとってはかなりきつかった。
 
でも、それも1年も経てば慣れてくる。
日々の忙しさを難なくこなせるようになった頃、後輩から連絡がきた。
 
「暇すぎるんですけど、どうすればいいんですか?」
 
俺がいなくなってからも、事件らしい事件はほとんど起きていないようで、最近の一番大きな事件は自殺が1件あったことらしい。
その後輩も夜勤を押し付けられているようで、毎日、どうやって時間を潰せばいいのかわからないといった嘆きだった。
 
俺は非番だったこともあり、その日に差し入れを持って、後輩のところへ向かった。
 
そして、その向かう途中。
久しぶりにあの二人乗りの高校生カップルを見かけた。
 
一瞬、担当の地域じゃないとは思ったものの、懐かしさから、つい声をかけてしまった。
 
だが、完全に無視されてしまった。
俺の声が聞こえなかったわけがないはずなので、絶対に無視だと思う。
 
懐かしさが一気にイラつきに変わりながらも、後輩の元へ向かう。
俺は後輩にお下がりのゲーム機を渡して、暇の潰し方を伝授したのだった。
 
終わり。

■解説

まず、語り部が最初に『高校生のカップル』に話しかけてから『3年』が経過している。
なのに、まだ『高校生』と言っていることから、二人は制服を着ていることがわかる。
だが、3年経っているはずなので、そのカップルは高校を卒業しているはずである。
 
また、語り部は男の方を注意したときに「ヘラヘラと笑っていた」と言っている。
では、なぜ起こられているのに笑う必要があるのか。
それはおそらく、『嬉しかった』のではないだろうか。
 
後ろに乗っている女の子の方は幽霊で、それが見えている(幽霊が後ろにいる)ことを喜んでいると考えられる。
だからこそ、毎回、幽霊になった彼女がまだいるかを確かめるために語り部の元をわざと訪れていた。
 
そして2年後。
語り部が注意したときに無視した。
そのとき、2人が学生服を着ていたところを見ると、もしかすると男の方も後追い自殺したのかもしれない。

 

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