コウノトリ

意味が分かると怖い話

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本編

「赤ちゃんって、どうやってできるの?」
 
子供にそう聞かれたとき、母親ならどう答えるのが正解なんだろうか。
聞いてきたのは6歳の娘だ。
 
まだ、性教育を教えるのは早過ぎる。
たぶん、教えたところで理解もできないだろう。
 
そうなったとき、昔の人はいい理由を考え付いたものだと思う。
 
「コウノトリが運んで来るんだよ」
 
今回はこれを使わせてもらうことにする。
 
「トリさんが運んで来るの?」
「そうよ。素敵だよね」
「私もトリさんが運んで来てくれたの?」
「うん。そうよ」
「じゃあ、私、トリさんにお願いしよっと」
「え?」
「私ね、妹欲しいの」
「……そっか」
 
娘のこの言葉が関係したわけじゃないと思うが、私はそれからすぐに妊娠した。
日に日に大きくなる、私のお腹を不思議そうに見ている娘。
赤ちゃんはコウノトリが運んで来ると言った手前、娘には妊娠のことは説明していない。
 
お腹に赤ちゃんがいるなら、コウノトリが運んで来ることは嘘になってしまう。
今も、娘は毎日部屋でお願いをしているみたいだ。
 
そして、ついに子供が生まれた。
生まれたのは男の子。
娘がお願いしてたのは妹だけど、きっと喜んでくれるだろう。
 
「コウノトリが運んで来てくれたわよ」
 
私は娘に赤ちゃんを見せると、大はしゃぎで喜んでくれた。
 
それからは私も夫も、新しく生まれた息子につきっきりになる。
娘が前以上に「遊んで」とせがんできたけど、我慢してもらう。
 
赤ちゃんの面倒を見ながら、娘と遊ぶなんて体力はない。
 
日に日に娘は不機嫌になっていく。
でも、いつか、きっとわかってくれるはず。
私はそう信じていた。
 
そんなある日、私は疲れてしまって、ソファーで寝てしまった。
赤ちゃんはお昼寝してるので、静かだったということと疲れもあったせいか熟睡してしまったのだ。
 
外からやたらとカラスの鳴き声が聞こえてくる。
るさくて目を覚ます。
既に夕方になっていた。
赤ちゃんはとっくに起きてるはずだ。
私は慌てて赤ちゃんを寝かせていた部屋に行く。
 
すると赤ちゃんの姿はなかった。
混乱した私は娘に「赤ちゃん、どこに行ったか知らない?」と聞いた。
 
すると娘はこう答えた。
 
「トリさんに戻してきたよ」
 
終わり。

■解説

娘はコウノトリがどういう鳥かはわかっていない。
それはずっと「トリ」としか言っていないことからわかる。
そして、語り部が寝ていた時に、『カラスの鳴き声』で目を覚ましている。
つまり、娘が言っている「トリに返した」というのはカラスがいるところに置いた可能性が高い。
また、カラスは人を襲うことがある。
語り部が目を覚ますくらい鳴いているということはかなりの興奮状態だと考えられる。
赤ちゃんが無事だという可能性はかなり低いだろう。

 

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