本編
俺が住んでいた田舎の実家は、山と川の近くだったのでよく災害に巻き込まれていた。
土砂崩れや川の氾濫。
そのたびに片付けを手伝わされて面倒くさかった。
小学校の頃、よく親になんでこんなところに家を建てたんだって文句を言った覚えがある。
正直、その思いは今でも変わらない。
いくら土地が安かったからって、あんな場所に家を建てた親に対して馬鹿だなって思ってる。
だから、俺は絶対にちゃんと調べてから家を建てようって決めていた。
あれから30年近く経った。
結婚もし、子供も生まれ、仕事も順調。
そしてついにマイホームを建てるチャンスに恵まれる。
俺は両親と同じ轍を踏まないようにしっかりと調べてから土地を買い、家を建てた。
近くに山も海も川もなく、地盤もしっかりした場所だ。
さすがに駅から若干遠く、お店も少ないが静かな場所で騒音もない。
まさに納得できる場所に家を建てられて満足だった。
だが、ある時、すごく当たるハザードマップを掲載しているサイトがあると聞いた。
そこに書かれた場所と災害が、ぴったりと当たるというのだ。
洪水や土砂崩れ、地震なんかもピタリと当たるらしい。
そもそもハザードマップは災害が起こりやすい場所を記載してあるものだ。
それが当たったからといって普通のことだろう。
何を言ってるんだと思いながら、一応、自分の家の付近も調べてみた。
あれだけしっかりと調べた上で選んだんだから、絶対にハザードマップにはうちの周りは書かれていないだろうと思っていた。
だけど、俺の予想とは裏腹にハザードマップに、うちの付近が載っていた。
その項目を見て、俺は馬鹿々々しいと思い、腹が立ってサイトを閉じた。
それから数ヶ月後。
ニュースで飛行機の墜落事故が起こったと報道されたらしい。
終わり。
■解説
そのサイトのハザードマップは『当たる』という噂である。
つまり、この辺りで起こる災害を予想しているだと考えられる。
そして、災害の中には事故も含まれる。
ということは語り部の家の付近に飛行機が落下してしまったのだろう。
最後に、語り部は『らしい』と言っている。
これは直接見たわけではないことを示している。
語り部は飛行機の落下事故に巻き込まれてしまったのだろうか。