電磁石

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本編

世の中の全ては物理や科学などの法則で説明できる。
心霊現象とか超常現象、超能力などで説明できないものもあるが、それはまだ、解明されていないだけだ。
 
特に心霊現象なんて言うのは精神的なもの、つまりは思い込みによるものが大きいだろう。
 
そのことで、俺はある友人と口論になった。
その友人は霊感があるとかなんとか言って、幽霊の存在を信じている。
自分で勝手に信じているだけなら問題はないが、それを俺にも押し付けてくるから腹が立ったのだ。
 
だから、ここはひとつ、その友人を科学の力で驚かせてみようと思う。
 
誰も近づく人がいない、それっぽい廃墟。
そこにバッテリーを持ち込み、磁石と電磁石を使ってものを動かす。
 

電源のオンオフで磁気が発生するから、突然、物が動くから勝手に動いたように見える。
いわゆるポルターガイスト現象の完成というわけだ。
 
そして、深夜に友人をその廃墟に連れて行く。
すると友人は震えながら、ここはヤバいって言い出した。
 
いいね。
これでさらに思い込みだと証明しやすい。
驚かせるだけ驚かせて、種明かしをしてやるんだ。
 
中に入ると、しきりに友人が出ようと言う。
 
よし、ここだ。
俺はリモコンで電源をオンにする。
 
だが、なにも起きない。
 
ちくしょう。磁力が弱かったか?
 
そこで俺は電磁石に流す電気をメモリいっぱいに上げる。
 
計画通りに、物が動き始める。
すると同時に、腕が勢いよく引っ張られて、俺は思わず転んでしまった。
 
しくじった。磁力を強くし過ぎたか。
 
すぐに電源をオフにすると、動いていた物が止まる。
 
友人を見ると、かなりビビったようで顔が青ざめていた。
そして、悲鳴を上げて逃げて行った。
 
いや、ビビり過ぎだろ。
 
終わり。

■解説

流す電気の量を上げ、電磁石の磁力を強くしても、語り部の右腕が引っ張られるのはおかしい。
語り部が自分の腕に磁石を付ける意味がないからである。
では、なぜ、語り部は思い切り腕を引っ張られ転んでしまったのだろうか。
霊感が強いと言う友人が逃げたということは、そこには強力な霊がいるのかもしれない。

 

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