ラテアート

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本編

私にはどんなに仲のいい友達にも秘密にしていることが2つある。
 
1つ目はオタクということだ。
オタクのジャンルがBLとかだと、まだ少しは周りに理解者がいるかもしれない。
けど、私の好きなジャンルは女児向けアニメ。
 
その中のサヤカというキャラクターが大大大大好きなのだ。
メインキャラクターじゃないので、登場シーンが少ないのが本当に悔しい。
でも、本当に愛おしいし、この愛は誰にも負ける気がしない。
ハグして、ペロペロして、一緒に寝たい。
 
なんてことを友達に言えるわけがない。
完全に友達がいなくなってしまう。
 
だから私は絶対にバレないように徹底している。
関連グッズは店に買いに行くのではなく、通販。
この前、劇場版が公開されたけど、泣く泣く見に行くのを我慢。
円盤になってから、通販で取り寄せることにした。
 
買ってる途中で知り合いに見つかりでもしたら、一巻の終わりなのだ。
 
 
そして、もう1つは執事喫茶に通っていること。
まあ、これは友達に見つかっても、まだセーフだろう。
ちょっと興味があって試しに行ってみたで、誤魔化せると思う。
 
でも、お店に行くまではガッツリと変装するけどね。
バレないに越したことはないから。
 
そもそも、なんでこのお店に通うことにしてるのかと言ったら、私の大好きなサヤカちゃんがお嬢様だからだ。
ここに来れば、サヤカちゃんと同じ気分を味わえるんじゃないかって思ったのが切っ掛けだ。
 
なんていうか、やっぱり、お嬢様扱いされるのは気持ちがいい。
それから癖になって通い続けているというわけだ。
 
だから、別に目当ての男の子がいるとか、そういうんじゃない。
私はサヤカちゃんに一途なのだ。
 
そんな中、そのお店に新人が入って来て話題になっていた。
なんでも、ラテアートが物凄く上手いらしい。
 
花やキャラクターはもちろん、客の似顔絵なんかも描けるみたい。
 
飲み物の注文が入ると、必ずと言っていいほど、その人にラテアートを描いてほしいという注文が入るって話だ。
 
私はあまり興味がなかったのだが、店が空いているときにラテアートを描きますよと言われたので、描いてもらうことにした。
 
リクエストを聞かれたが、パッと思いつかなかったので「お任せで」と注文した。
 
するとラテアートで出てきたのはなんと、サヤカちゃんだったのだ!
 
しかも上手い!
ビックリした!
 
さすが執事!
わかってる!
 
正直、アートを崩すのを躊躇っていたが、徐々に絵は崩れていったので仕方なく混ぜて飲むことにした。
なんか、サヤカちゃんを体内に入れた感じがして興奮する。
 
お会計を済ませ、店を出る。
また頼んでみようかなと考えながら家路につく。
 
そして私はあることに気づいた。
 
私はすぐに引っ越しをして、二度とその店には近づかないようにした。
 
終わり。

■解説

語り部はサヤカというキャラクターが好きなことは、絶対にバレないようにしていた。
しかし、「お任せ」と注文して、ピンポイントでマイナーキャラの「サヤカ」を描いてきたのは偶然というには出来過ぎている。
つまり、この新人は語り部のストーカーの可能性が非常に高い。

 

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