生存者

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本編

男は刑事で、凶悪連続殺人事件の犯人を追っていた。
 
犯人はランダムに家を選び、一家全員を惨殺するという手口だ。
また、犯人は全く証拠を残さないというのが特徴で、捜査は難航している。
物的証拠はもちろん、一家全員を殺すことで目撃者もいない。
中には家を出るときに見られたという理由で、通行人も数名殺している。
 
そんな事件がもう、5件続いているのだ。
これ以上、犠牲者は出せない。
刑事の男はもちろん、警察の威信をかけて捜査を続ける。
 
そんなあるとき、犯人はある孤児院を狙った。
もちろん、孤児院にいる全ての子供たちと保母を殺すつもりだったのだろう。
だが、たった一人だけ生き延びた子供がいた。
 
その子供は事件の前日に孤児院に入ったため、犯人はその子のことを把握していなかったのだろう。
しかも、その子は一瞬だが犯人の姿を見ている。
 
男は好期だと感じ、辛抱強く生存者の子供から話を聞く。
だが、その子は事件のショックから、なかなか口を開こうとしない。
まだ8歳なのだから仕方がないことだろう。
ここは気が逸るのを押し殺し、時間をかけてゆっくりやるしかないと男は覚悟した。
 
そんな中、事件の生存者がいることをマスコミが嗅ぎつける。
さすがに名前や年などの個人情報は洩れなかったが、生存者がいたことは世間に知られてしまった。
 
男は犯人がその子を殺しに来るのではないかと危惧した。
中にはその子を囮にして犯人を捕まえようという刑事もいたが、もちろん却下された。
そこで、生き残った子は別の戸籍を用意し、別人となってもらうことになった。
元々、孤児だったので、やりやすかった。
 
男は、これで犯人が焦ると考えていた。
今まで完璧に証拠を消してきていた犯人は、ミスを犯した自分が絶対に許せないはず。
ここから必ず綻びが出るはずだと踏んでいたのだ。
 
そして、男の予想は当たった。
再び、一家が襲われて、その家族の一人が生き残っていたのだ。
 
生き残ったのは前と同じく子供だった。
今度は10歳の女の子だ。
 
しかし、その女の子もショックが強かったようで、完全にふさぎ込んでしまっている。
家族を殺されたのだから、当然だろう。
 
今度は絶対にマスコミにバレないように情報を封鎖し、女の子に話を聞きに行く。
すると女の子は、震えながら「気になったことがある」と呟いた。
だが、確信が持てないらしく、それを確かめるために前の生存者の子に話を聞きたいと言い出した。
 
男は二人を会わせるのは危険かと思ったが、一刻も早く事件を解決しなければならない。
そこで、男は自分の立ち合いの元でなら良いと許可を出した。
女の子はそれで納得する。
 
数日後。
男は前の生存者の子を連れて、女の子の元へ行った。
 
その後、男と生存者の子、そして女の子の死体が発見されることとなった。
 
終わり。

■解説

まず、女の子はなぜ、前の生存者が「子供」だと知っていたのか。
マスコミは名前も「年齢」も出していない。
そう考えると、生存者を殺すために、自分も「生存者」として近づいた可能性が高い。
つまり、犯人は女の子。
 
ここまで殺人事件が成功したことも、犯人が「子供ではない」という心理をついたからかもしれない。
 
最後になぜ、男と生存者の子と女の子の死体が発見されたのか。
生存者の子は犯人である自分を見たことにより、そして男は生存者の子を殺すところを見られたために殺した。
そして、女の子はミスした自分を許せないと考えて、自殺したのである。

 

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