【意味が分かると怖い話】マンションのエレベーター

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■本編

俺は中心街からは外れているが、そこそこ良いマンションに住んでいる。

地下に駐車場があり、そこ車を停めて借りている部屋がある6階までエレベーターを使うのだ。

 

その日は残業で帰るのが遅くなり、マンションに着いたときには深夜の1時を過ぎていた。

電車だったらとっくに終電が過ぎている時間だ。

こういうとき、車通勤で良かったと思う。

 

地下に車を停め、エレベーターに乗り込む。

6階のボタンを押すとエレベーターがゆっくりと上がっていく。

この時間なら誰も乗り込んでこないだろうと思っていたら、1階でドアが開いた。

 

数秒すると小太りのおじさんが走ってきて、飛び込むように入ってきた。

間もなくドアが閉まり、ゆっくりとエレベーターが上がり始める。

 

「今、帰りですか? お互い、大変ですね」

 

俺は、息を切らせている、名前も知らないおじさんに声をかけた。

普段、あまり住人に会うことは無い。

だからこういうときに、世間話をして印象を良くしておかなければならい。

 

「ええ、全くです。たまには子供の寝顔じゃなくて、起きてるときに会いたいですよ」

 

おじさんはカバンからハンカチを出して、顔の汗を拭っている。

 

「帰ったら御飯ができているんでしょう? 羨ましいです。私は一人暮らしですから」

「いやいや。いつも、テーブルにはカップ麺とおかえりなさいの紙だけです。子供がいなかったら離婚してますよ」

 

苦笑いを浮かべるおじさんに、俺も同じく苦笑いで返すしかなかった。

気まずい空気が流れたと同時に、ポーンと音を立てて、エレベーターが4階で停まる。

ゆっくりとエレベーターのドアが開く。

 

「それじゃ、お休みなさい」

「おやすみなさい」

 

お互い軽く会釈をする。

そして、おじさんは身体を重そうに揺らしながらエレベーターを降りて行った。

 

エレベーターのドアが閉まり、6階へと上がっていく。

 

その中で俺はすぐに引っ越そうと決意した。

 

終わり。

■解説

1階でエレベーターが停まった後に、おじさんが走ってきたということは、おじさんは停まる前にエレベーターの前に着いていないことになる。

(1階で誰かがボタンを押さなければ、そもそもエレベーターは1階で止まらないはず)

また、おじさんも語り部も、4階のボタンを押していない。

(語り部はおじさんの名前も知らないということは、何階に住んでいるかも知らないはずである)

ではなぜ、1階と4階でエレベーターが停まったのか。

このマンションには見えざる何かが住み着いている可能性が高い。

 

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