「これで一周したな」
見渡すと、みんなが同時にコクリと頷いた。
俺から始まって、航青、智紫、桃萌ちゃん、銀河、白澄の順に、6つの怪談を話し終えた。
「どうだ? 智紫」
「うん。いいペースだと思うよ」
俺の問いに、智紫がスマホの時間を見て答える。
百物語はとにかく時間がかかる。
話し終える頃には夜が明けて、さらに疲れ切っていて怪異現象どころじゃなくなってしまう。
それが何回か、百物語にチャレンジしてきた俺たちの結論だった。
だから、いつしか百物語をやろうとは言わなくなっていた。
そんなときに智紫が言い出したのが『60分でできる百物語』だ。
1つの話が長いから、時間がかかる。
それならば、1つ1つの怪談を、極端に短くすればいいという案だ。
今、この場に6人いる。
1人、10分以内で話せれば、60分で終わるというわけだ。
これなら夜が明ける前に終わらせられるし、疲れもない。
百物語が終わった時の、怪異現象を堪能できる。
そう考えると、自然と笑みがこぼれてしまう。
智紫や、航青、銀河と白澄も同じことを思ったのか、みんな同じように、ワクワクした表情をしている。
智紫は生粋のオカルトジャンキーだが、俺たちだって、オカルトは好きだ。
だからこそ、夏休みの間は心霊スポット巡りもしたし、今もこうして百物語をやっている。
今回は本当に怪異現象を体験できるかもしれない。
そう思うと、ワクワクもさることながら、緊張も走る――。
「あんまり、怪談話ってしないから、緊張しちゃった」
桃萌ちゃんが胸に手を置いて、ふうと息を吐きながら言った。
――可愛い。
その場の空気が一気に緩んだ。
ああ。桃萌ちゃんのこの顔を見られただけで、今日、ここに来た意味は十分ある。
正直、もう怪異現象なんてどうでもよくなりそうだ。
というより、クラスのバカレンジャーと呼ばれている俺たちと、桃萌ちゃんが一緒の空間、しかも一夜を共にしていること自体、怪異現象と言ってもいいだろう。
「それにしても、みんなすごいね。短いのに、聞き入っちゃった。なんか話慣れてるって感じだね」
「ま、まあ、なんだかんだ言って、結構、やったもんな、百物語」
銀河が平静を装いつつ、ドヤ顔で言う。
一見、チャラそうに見える銀河だが、実際は女子と接することはほぼなく、俺たちと同じように、内心は桃萌ちゃんが近くにいることで心拍数は跳ね上がっているはずだ。
「だから、結構、レパートリーあるんだよね~」
航青もいつものような気怠い感じの口調だが、若干、声が上ずっている。
やはり、桃萌ちゃんの効果は絶大といったところだろう。
「桃萌さんも、話すの上手かったと思うよ。短くても怖かったよ」
「そうかな? よかった。ありがとう」
だが、智紫だけは俺たちとは違う。
なぜか、妙に女慣れをしている。
そして、女からも割と人気があるのだ。
今も平然と、自然に桃萌ちゃんを褒めている。
ズルい。
何度、心の中で智紫を呪ったかわからない。
きっと、銀河たちだってそうだろう。
正直、智紫を幽霊にしてやろうと思ったことは一度や二度ではない。
「よし、じゃあ、このペースで続けよう。みんな。用意している怪談は大丈夫?」
智紫の言葉に、みんなが頷く。
「紅太。二巡目、お願い」
「わかった。任せろ」
智紫に促されて、俺は大きく息を吸い込む。
そして、用意していた、次の怪談話を開始する。

