本編
男はいわゆる陽キャというやつで、交流関係が広く、いつも友人が開催しているパーティーに参加していた。
そして男は見栄張りであり、友達には、自分は事業に成功して金持ちだと吹聴している。
大勢の友人から憧れの存在と思われていることで、男は自身の承認欲求を満たしていた。
だが、実際、男は自分で会社を興してはいるが、決して大成功しているわけではない。
いつもギリギリで、なんとか生活をするのがやっという程度だ。
友人が見てないところではかなり節制しているが、それでもやはりお金は足りなくなってくる。
そこで男は持ち物を売ることで、なんとかお金を工面していた。
しかし、それも長くは続かない。
見栄を張るためにはもっとお金が必要だった。
それなのに、もう売るものがない。
ある時、最後まで売らずにとっておいた、会社を興したときに買った腕時計を売りに質屋に行ったときだった。
始めて行ったその店の店主は、なんだか怪しい老人で、男が持ってきた時計は二束三文にしかならないと告げられる。
激怒した男が店を出ようとした時だった。
「あなたのスマホに登録されている番号を買い取らせてくれませんか?」
いきなり、そんなことを言い出したのだ。
男はさすがに友人の個人情報を売ることを躊躇ったが、1件につき、多額の金額を示されたことで、心が揺らぐ。
背に腹は代えられない。
男は自分のスマホの中に登録されている番号を老人に売った。
男は金を受け取り、満足する。
ただ、友人の番号を売ったことに罪悪感を覚え、その友人に何かを奢ろうと思う。
だが、よくよく見てみると、番号は減ってなかった。
あの店に行く前と、登録されている番号の数が変わっていない。
どのくらいスマホに登録しているかは、男にとって自尊心を得るために重要なことなので、常に数は把握している。
なので、減っていないことに間違いはないと男は思う。
きっとあの老人は勘違いして、ただただ金を払っただけの馬鹿な人間だと、男は心の中であざ笑う。
前回番号を売って得た金が尽き、再び、男は老人の元に行き、番号を売る。
金を受け取るが、番号の数は減っていない。
男は調子に乗り、何度も何度も、老人のところに通い、金を受け取った。
そし男は最後に、1つの番号を売った。
その後、男は記憶喪失になり、発狂した。
終わり。
■解説
老人は、スマホの番号に関して、男の記憶ごと買い取っていた。
そのため、男の中では売った友人の記憶ごと消されていたため、認識できなくなっていた。
なので、番号の数が減ってないように錯覚していただけである。
最後に売った番号というのは、『自分の番号』で、自分の記憶を消されてしまったことで、発狂してしまった。
