本編
隣に住むおじさんは凄い太っていた。
いつも何か食べてて、会うと、よくお菓子をくれた。
俺はおじさんはお菓子もくれるし、話も楽しいしで、割と好きだった。
けど、母さんはそのおじさんは働かないで、いつも家の中にダラダラいると嫌っていた。
今で言うとニートってやつだろう。
俺はもっと、母さんが嫌がるから、家に遊びに行ったりはしなかったけど、よく外で話をしたりしていた。
おじさんとは意外と長い付き合いで、中学、高校、大学と進学するときは焼肉を奢って貰ったりした。
そのときも働いてなかったから、きっと親からもらったお小遣いの中から出してくれていたんだろう。
就職を期に、家を出ることになり、おじさんとは2年に一回、会うかどうかになっていた。
そんなある年のお正月。
俺は実家に帰っていたので、久びりにおじさんに新年のあいさつも兼ねて、隣の家に行った。
するとおじさんはびっくりするくらい痩せていた。
ダイエットしたのかと聞いたら、違っていて、どうやら糖尿病になったらしい。
それになんだか元気がない。
なんと、おじさんは足の指が壊死していて、切らなくてはならなくなったと言っていた。
今は食事療法をしていて、これ以上酷くならないように頑張っているようだ。
大好きなお菓子やジュースもやめ、野菜中心の食事にしたらしい。
最初はすごく辛かったらしいけど、今では大分慣れて、野菜も美味しく感じるようになったと言っていた。
でも、時々我慢できなくて、隠れてお菓子を爆食いすることがあるらしい。
まあ、おじさんらしいといえば、おじさんらしい。
俺はよくわからないけど、きっと大丈夫だよと返した。
あのおじさんがこんなに頑張っているんだから、きっと良くなるだろうと思った。
それから2年後におじさんに会った。
俺は具合はどうかと聞くと、おじさんは笑いながら、足の指は切らなくてよくなったんだと言った。
よかった。
やっぱり、良くなっていってるんだ。
おじさんにはこれからも頑張って欲しいと思う。
終わり。
■解説
足の指が壊死している状態からよくなるはずはない。
つまり、足の指はおろか、足を切ることになってしまった。
なので足の指を切らなくてよくなったと言っているのである。

