本編
俺の友達にKっていう、金持ちがいる。
Kの親は資産家だとか、デカい会社の会長とかで、とにかくめちゃくちゃ金持ちっぽい。
中学の頃からKは金銭感覚が狂ってて、何かとよく奢って貰ってた。
金銭感覚が狂ってるだけで、金持ちっていうのを鼻にかけてるわけでもないし、嫌な奴じゃないからずっとKとは友達の関係を保ってた。
今考えるとKからのおこぼれを期待して友達をやっている俺の方が嫌な奴なのかもしれない。
普通、金持ちの奴の周りには人が集まるはずだけど、Kはあんまり友達がいない。
Kは社交的じゃないし、どちらかというと陰キャだ。
だからKの友達は俺以外には2人くらいしかいない。
俺もどちらかというと人見知りだから、K以外に友達はできなかった。
なんとなくKと同じ高校に行き、大学もKと同じところに行くことになった。
まあ、別にやりたいこととか行きたいところとかなかったし、Kとつるんでいれば何とかなるんじゃないかって気がしている。
就職もKに泣きつけば、なんとかしてくれると思う。
そう考えると本当にダメだな、俺は。
大学に行けば、サークルとかバイトとかで生活がガラッと変わるかと思ったけど、高校の時と何も変わらなかった。
サークルにも入らなかったし、バイトもやっていない。
いつもKとつるんでばかりだ。
かと言って、マンネリ化もあったし、大学初の夏休みはKの親が持っている別荘で過ごさないかと誘われた。
その別荘は5年くらい放置してたらしく、様子を見るのも含めて行ってみてほしいって言われたらしい。
夏休みは当然のことながら予定もないし、俺はKの誘いにのることにした。
当日はKと一緒に行くはずだったが、大学の教授からレポートのことで呼びだされたから、先にKが向かってもらった。
大学を出るのが夕方になってしまい、俺はお菓子とかお酒とかを買い込んでKの別荘に向かう。
別荘の場所は海沿いで、周りには全然人気がない。
陰キャな俺たちにとって都合がいい。
外から人の騒がしい声とか聞こえるとか最悪だ。
でもこれならゆっくり過ごせそうだ。
別荘に着いた時には完全に日は沈んで真っ暗になってた。
人気がないということで、ちょっと不気味だ。
暇でやることがなくなったら、肝試しとかしてみてもいいかもしれない。
そう思いながらインターフォンを押す。
するとガチャッとドアが開いてKが出てくる。
と思ったが、出てきたのは30歳くらいの女性が出てきた。
俺は驚いて、Kの友達だと言った。
するとその女性はにこりと笑って、別荘内に招いてくれた。
家の中にはほとんど家具もなく、さっぱりとした部屋だった。
掃除もされていて綺麗だ。
女性はここの管理者で、Kは具合が悪くて寝ているんだと、花に水をやりながらそう話してくれた。
終わり。
■解説
別荘は5年放置状態で、今回様子を見に行ってほしいと言う話なのに、管理者がいるのはおかしい。
さらに放置している家の中に花があるが、これは管理していないと枯れるはずなので生花がおいてあるのも変である。
つまり、この女性は管理者ではなく、勝手に住み着いている、もしくは強盗かもしれない。
それでは先に来ているはずのKはどうなったのか。
もしかすると、女性に殺されている可能性がある。
部屋の中が綺麗なのも、Kを殺した痕跡を消すために掃除をしたのかもしれない。