■本編
例の感染症が落ち着いたから、お盆休みを使い、俺は4年ぶりに実家に帰った。
やっぱり実家は落ち着くし、楽だ。
黙っててもご飯が出てくるし、洗濯もやってくれる。
買い物には付き合わされたりするけど、一人暮らしだから家でも普通に買い物に行くから面倒くさいとは思わない。
風呂を沸かすなんて手伝いもするが、それもいつもやっていることだ。
そう考えると、学生の頃はこんなにも恵まれてたのかと気づく。
その当時は親が煩わしくて、早く出て行きたいと思っていたけど、今となってはできることなら実家に戻りたいくらいだ。
4日ほど実家に滞在し、帰る前日になったときだった。
親が物置にあるガラクタを捨てるから、いるものがあれば持って行けと言われた。
そのガラクタというのは俺の私物だ。
漫画とかゲームとか、オモチャとかいろいろ。
それを見たときは懐かしさで、かなりテンションが上がった。
本当は全部持って帰りたかったが、さすがにそれは無理だ。
そんなことをすれば、俺の生活スペースがなくなる。
なので、泣く泣く、必要最低限のものを持って帰った。
その日の夜。
実家にいたのは数日だったのに、一人に戻ると途端に寂しくなる。
持って帰ってきたゲームをやってみたけど、なんだか気が乗らない。
やっぱり、一人は寂しい。
けど、そんなのは2、3日も経てば感覚は戻るだろう。
なので、その日はやることもなかったので、さっさと寝ることにした。
そして、俺は真夜中の物音で目を覚ました。
ガタガタという音だ。
一気に血の気が引いた。
泥棒だろうか?
もしかしたら、お盆中に留守にしていたから狙われたのかもしれない。
物音は未だに収まらない。
俺は意を決して、机の上に置いてあったハサミを手に持ち、恐る恐る寝室から出た。
パチッと電気をつける。
部屋の中を見渡すが誰もいない。
そして、音がする方を見ると、そこには懐かしいおもちゃがあった。
音楽に合わせて動くというおもちゃだ。
実家から持ってきたやつで、缶に手が付いているもので、音に合わせて動くのだ。
なんだ。
ビックリさせやがって。
俺はおもちゃの電源を切って、再び眠りについた。
終わり。
■解説
音楽に合わせて踊るオモチャは、『音』に反応して動くというものである。
では、そのオモチャは、『最初になんの音』に反応したのだろうか?
語り部の家には泥棒が侵入していて、その物音で、オモチャが動き出していたというわけである。