本編
俺が住んでいるアパートに、凄い仲のいいカップルがいる。
男の方は結構、陽キャで何かと俺に話しかけてくる。
逆に女の方は陰キャでまともに俺と目を合わせない。
女はいつも男に寄りそうにして歩いていて、2人一緒じゃないことの方が少ないんじゃないだろうか。
女は見るからにメンヘラで、結構、面倒くさそうだ。
俺から見ても全然似合っていないカップルだった。
よく、男の方はこんな陰キャの彼女と付き合ってられるなって思う。
だけど、この前、男の方が見たことのない女と一緒に歩いていた。
あーあ。二股か。
そうだろうと思ったよ。
で、1ヶ月くらいしたら、あのとき見た女の方をアパートに連れてきて、一緒に住むようになった。
「俺の彼女」
「よろしくお願いしまーす」
今度の女の人は男と同じように明るく、ノリの軽い子だった。
正直、俺はこっちの人の方が合ってるんじゃないかな。
でも、陰キャの女とは揉めそうだな、とも思った。
ただ、すんなり話がついたらしく、もうあの陰キャの女をアパート内で見なくなった。
でも、それから数週間後。
めっきり、明るい方の女を見なくなっていた。
だから、ちょっとしたときに、あの陰キャの男に聞いてみた。
「あー、なんかさ。急に出てったんだ。……また1人に戻っちゃったよ」
なんか、苦々しい顔をしていた。
いい雰囲気だったと思うが、男女の関係なんてわからないものだ。
そして、数日後。
またあの陰キャの女と一緒に歩くようになった。
やっぱり、あの女とよりを戻したのか。
と、思ってたら男が引っ越しのあいさつにきた。
「今までありがとね。お互い、彼女作り頑張ろうね」
そんな余計なことを言い残していった。
お互い?
自分はあの陰キャ女と付き合ってるのに。
そう思ってたんだけど、それは俺の勘違いだった。
すぐに新しい男が引っ越しのあいさつに来た。
その新しい男と、あの陰キャ女が一緒に寄り添っている。
陰キャ女は、あの陽キャの男から今回の男に乗り換えたってことか。
なんか、あの部屋の住人はドロドロとしてるな。
まあ、俺には関係ないけど。
終わり。
■解説
語り部は一度も、陰キャの女と話したことがない。
そして、語り部がいう、あの部屋の住人は誰になるのであろうか。
陰キャの女が借りているのなら、最後に男が引っ越しのあいさつに来るのはおかしい。
あの陰キャの女は人ざる者で、あの部屋に来た人間に憑りついているのかもしれない。