本編
人の人生はいつ終わるかわからない。
それは恐ろしいことだと思う反面、実感がわかない。
死は身近にあるもののはずなのに、自分にはやってこないと思い込む。
だからこそ、時間を無駄にしてしまう人が多いのではないだろうか。
でも、もしその寿命がわかるとしたらどうだろう?
人は人生と残された時間を大切にするはずだ。
つまり、寿命がわかれば真剣に、精一杯生きることができるのではないだろうか。
――そう思っていた。
だから、私は悪魔との取引で、自分の寿命がわかるタイマーを手に入れた。
自分の残りの人生の時間が表示されていて、刻一刻と時間が減っていく。
最初はこの残された時間を大切に生きようと思った。
だが、その気持ちはすぐに消え去っていく。
常に減っていく時間を見て、絶望感に包まれる。
何をしても手がつかないし、何も楽しめない。
食欲もわかないし、寝るのが恐ろしい。
このままではノイローゼになってしまいそうだ。
もしかしたら、既に鬱になっているのかもしれない。
いや、もう気が狂っている可能性だってある。
だけど、そんなことはどうでもいい。
死にたくない。
死ぬのは嫌だ。
私はいつしか、タイマーを壊そうとし始めた。
壊せば時間は止まる。
そうすれば寿命も減らないはずだ。
だけど、水に沈めても、焼いても、溶かそうとしてもダメだった。
焦りだけが募っていく。
止まれ!
止まれ!
止まれ!
必死にハンマーでタイマーを叩く。
止まれ!
止まれ!
止まれ!
止まれ!
すると、そのとき、タイマーが止まった。
そして、私の意識は闇に沈んだ。
終わり。
■解説
タイマーは『0』になって『止まった』のである。
