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本編
久々に里帰りするために、電車に乗った。
この時期はやはり皆、里帰りをするのか、電車内は結構込んでいた。
指定席に座って、ウトウトしていると、隣の人が申し訳なさそうな感じで話しかけてくる。
「すみません。座席、代わってもらうことできませんか?」
そんなことを言ってきたのだ。
「別にかまいませんけど、せっかく、窓際の席が取れたのにいいんですか?」
「ええ。実は途中下車したいと思って……。だから通路側の方が都合いいんですよね」
そういうことならと、私は隣の人と席を代わった。
本当は窓際の席がよかったので、私としてはラッキーだった。
外の景色を眺めながら、1時間くらいが経過した時のことだ。
私はふと、あることを思い出した。
この電車って特急で、途中では停まらない。
もしかしたら隣の人は間違えて電車に乗ったのかもしれない。
だから教えてあげようと思って、隣を見ると、席には誰も座っていなかった。
それと同時に、電車が止まった。
隣の人は、言っていた通り途中下車したのだった。
終わり。
■解説
「途中下車できないはずの電車」で、降りた理由は何だったのか。
隣の人は電車から飛び降り自殺をしたのかもしれない。

