本編
大学に進学した際に、念願の一人暮らしを始めた。
母さんがやたらと干渉してくるタイプで、実家にいるときはほとんどプライベートがなかった。
学校に行っている間に勝手に部屋に入って掃除するし、出かけるときはどこに行くか言わないとならなかった。
休みの日には朝寝坊も、夜更かしもできなかった。
友達にもマザコンとからかわれてたし、本当に辟易していた。
だから早く家を出たかった。
ずっと母さんに反対されていたけど、なんとか頑張って、家から遠い大学に合格した。
念願の一人暮らしは解放感でいっぱいだ。
いつ寝ても、いつ起きても母さんに邪魔されない。
本当に大学受験を頑張ってよかった。
昨日も遅くまでゲームをしていて、昼過ぎまで寝るつもりだ。
それでも誰にも怒られることはない。
なんて素晴らしいことだと思う。
いっそ、夕方までダラダラと寝ようかと考えていたときだった。
不意にインターフォンが鳴る。
おかしい。
今日は配送で来るものなんてないはずなのに。
とりあえず、ドアを開けたら、なんと母さんがいた。
「ごめんね。鍵忘れちゃって」
そう言って笑うと、ズカズカと部屋の中に入ってきた。
もういい加減にしてくれよ。
■解説
母親は「鍵を忘れた」と言っている。
つまり、合鍵を持っているということである。
ということは、今後も、語り部は母親の干渉から逃れられない可能性が高い。

