本編
ルームシェアに憧れていた。
一人っ子で、両親が共働きでいつも家には自分以外誰もいなかった。
だから人一倍寂しがり屋になってしまったんだと思う。
高校生の時も遅い時間まで友達と遊んでいた。
家に帰っても誰もいないから。
でもルームシェアなら、いつも家に誰かがいる。
それはまるで家族のようだとさえ思っていた。
だけどそんなものはただの幻想だった。
所詮は他人同士。
共通点はなく、血のつながりだってない。
性格も全然違うし、生活リズムだって真逆だったりする。
そんな人間がずっと同じ空間にいるというのは、楽しさではなく苦痛だということを知った。
顔を合わせれば無視をされる。
無視ならまだいい方で、しかめっ面をされて罵倒されることもあった。
こんなことなら一人で住んだ方がマシだ。
でも、出て行くことはできない。
そういう契約だから。
ひたすら我慢するしかない。
そう思っていた。
だけど、あるとき気付いてしまった。
みんなは僕にだけ冷たい。
僕がいないときは、みんな笑っている。
楽しそうにしている。
どうして?
僕はみんなに好かれるために努力してきたのに。
そんな僕の思いを踏み躙ったみんなを絶対に許せなかった。
だから僕はみんなに復讐することにした。
その復讐はうまくいった。
次々と人が出て行く。
そして1ヶ月もしないうちにルームシェアには誰もいなくなった。
これで僕一人だけだ。
これからは悠々と暮らせる。
そう思っていたら、このルームシェアが取り壊しされてしまった。
終わり。
■解説
語り部が残っているのに取り壊しをされるのはおかしい。
取り壊しされたということは、そのルームシェアには誰もいなくなったということになる。
つまり語り部の復讐は部屋で自殺をすることだった。
それを見て、同居者は次々と部屋を出て行ったのである。