お兄ちゃんと遊ぼう

意味が分かると怖い話

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本編

去年、夫と離婚した。
離婚の理由は夫の浮気だ。

そのこともあり、娘の親権は私が得ることができた。
これからは娘と二人でちゃんと生きていかなければならない。

なので仕事時間も増やさなきゃならない。
夫から養育費をもらえるとしても、いつ、何かあるかわからない。
蓄えはあった方がいいに決まっている。

ただ、私が仕事に出るということは2歳の娘にお留守番してもらわなければならない。

保育所やベビーシッターを雇うお金もないので仕方がない。

なので、私が仕事に行くときはDVDを流して、それを見てもらうことにした。

「お兄ちゃんと遊ぼう」という番組のDVD。

いわゆる教育番組だ。
その番組の中ではお兄さんと呼ばれるタレントが、子役の子供たちと一緒に色々なことにチャレンジするという内容らしい。

最初の頃はDVDを流していても、帰ると娘は寂しいさで泣いていた。
何度も謝ったし、可哀そうだとは思ったけど、こればっかりはどうしようもない。

でも、何日か経つと、娘は泣かなくなった。
というよりも、どこか上機嫌だ。
どうやらお留守番に慣れたらしい。

今では「お兄ちゃんに会いたい」と私にせがんでくるくらいだ。
よほど気に入ったのだろう。

それでも娘が見飽きてしまったら困るので、DVDはお留守番するときにしか流さないようにしている。
いつかは新しいのを買ってあげようとは思うけど、なるべく長持ちはさせたい。

そんなある日。
私は風邪で寝込んでしまった。

それでも娘は構ってほしいようで、遊ぼうとせがんでくる。

仕方がないので、私は「お兄ちゃんと遊ぼう」のDVDを流すことにした。

娘はその映像をジッと見入っている。

よかった。
これで静かに寝られる。
そう思って、私は眠りについた。

寝たおかげか、私の体調はだいぶ良くなった。
そろそろ夕ご飯を作ろうかと思い、起きると、娘はDVDに夢中だった。

私がご飯支度をしていると、DVDが終わったのか、娘がこっちに向かって走ってくる。

そして、娘はこう言った。

「すっごく面白かった! もう一回見たい」

終わり。

■解説

語り部はいつも、DVDを流してでかけている。
それにしては娘がもう一回見たいというのは変である。
ということは語り部が出かけている間、娘はDVDを見ていなかったのではないだろうか。
そして、娘はお兄ちゃんに「会いたい」と言っている。
つまり、娘はDVDを見てお留守番をしていたのではなく、家に男がやってきていて、一緒に遊んでいたという可能性がある。