記者

意味が分かると怖い話

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本編

私は小さい頃からずっと記者に憧れていた。
どんな権力者に対しても屈せず、ペン一本で不正を暴く。
誰も見ようとしない弱い者に目を向け、助ける。

私にとって記者とは正義そのものなのだ。

だから記者になれたとき、本当に嬉しかった。

これからドンドン、隠れた闇を暴いていく。
そう気合を入れて、必死になって取材をやった。

あれからもう5年が経つ。

私は何も特ダネを掴むことができず、社内でもお荷物と言われるようになってしまった。
編集長からは「フリーになるか?」と、いつもプレッシャーをかけられる。

最近は胃が痛い。
でも病院に行っている暇なんてない。

私はとにかく、記事になるネタを探さなければならい。

それにしても、なんでこんなことになってしまったのか。
世の中の闇を暴き、正義を執行するはずだったのに。

もうこうなったら、一度でいいから一面を飾りたい。

焦りで空回りする中、私の元に転機が訪れた。

ある有名な製薬会社で違法な人体実験が行われているという噂を聞きつけた。

誰でも一度は名前を聞いたことがあるだろう、製薬会社。
そんな会社が違法なことをやっているだなんて、世紀の特ダネだ。
しかも、闇を暴いて正義を貫ける。

私は必死に取材を続けた。

そして私はついに証拠を掴む。
これを元に、さらに突っ込んだ取材を試みる。

すると、責任者の男が私の取材を受けてくれると言ってくれた。
私は録音をしながらも、聞き取りを行う。

私が用意した証拠を提示すると、男は諦めたように色々と話してくれた。

さらになんと、実験場まで見せてくれるらしい。

写真も自由に撮っていいと言われたので、手当たり次第、写真を撮り続ける。

やっぱり噂は本当で、この会社は大きな闇を抱えている。
そんな闇を暴くことができて、私は満足だ。

明日の一面は私の記事で間違いない。

ようやく私は夢を叶えることができるのだ。

終わり。

■解説

製薬会社の責任者が記者に対して自分から色々と話すのは違和感がある。
さらに証拠となる写真まで撮らせている。
つまり、責任者の男は語り部を返すつもりはない。