空中ブランコ
私はサーカス団に所属している。
もう15年もやっているベテランだ。
なので大概の芸はマスターしている。
空中ブランコなんて目をつぶっても余裕だ。
だから、最近は本当に目をつぶってやっている。
結構、刺激があってやめられない。
今日ももちろん目をつぶって空中ブランコをする。
目をつぶってからブランコに捕まり、いつものタイミングで手を放す。
だけど、相手が足を掴んでくれない。
そして落ちていく感覚がする。
ヤバい、落ちる。
慌てて目を開けると、間近に相手が見えた。
よかった。
掴むタイミングが遅れただけか。
終わり。
■解説
手を放し、落ちているのに相手が間近に見えるのはおかしい。
つまり、相手も空中ブランコから落下している。
ランドセル
Sくんの家はお金持ちで、ランドセルもオーダーメイドで作ってもらっていた。
有名なデザイナーによる、世界でたった一つのランドセル。
そんなランドセルを、クラスメイトたちは羨ましがっていた。
Sくんはクラスメイトからランドセルを背負わせてほしいと頼まれ、了承する。
Sくんは親がお金持ちだろうと、それを自慢することはなかった。
特別扱いされることを嫌がり、登下校も車での送迎を断り、友達と徒歩でしている。
そのことが災いしてか、Sくんが誘拐されたという噂が立つ。
犯人から多額の身代金が要求される、と言われていたが、犯人から身代金は要求されなかった。
数日後。
山中で子供の遺体が発見された。
そして誘拐犯は逮捕された。
終わり。
■解説
誘拐犯が誘拐したのは、Sくんのランドセルを借りたクラスメイト。
クラスメイトはSくんと間違われて誘拐されて、殺害されている。
サウナ
俺は大のサウナ好き。
5時から約束があって、今は3時半。
1時間も余裕があるならサウナへ直行だ。
店に行くと、誰もいなくて貸し切り状態。
ラッキーだ。
サウナに入ると、店主がアナログ時計の電池を交換していた。
砂時計の方が好きなんだけど、まあいい。
今日は調子がいい。
いつも30分だけど、40分はいけそうだ。
ゆっくりと過ごす。
そろそろ限界だ。
40分以上は経ったと思って時計を見る。
3時20分。
あれ?
まだ20分しか経ってない?
あと10分我慢しよう。
終わり。
■解説
サウナの時計が、語り部がサウナに行くよりも前になっている。
つまり、店主は電池を逆につけたため、針が戻っている。
ということは語り部は40分は入っていることになる。
既に限界の語り部は倒れてしまう可能性が高い。
スキャンダル
男は政治家になるために選挙に立候補した。
以前からメディアに露出していたおかげで、人気がある。
しかし、現職も人気があり、事前の調査は当選は競っている。
相手に何かあれば確実に勝てる。
そう考えた男は相手のスキャンダルを探した。
すると、相手の妻が不倫しているという情報が入ってくる。
周りはこれで勝てると盛り上がったが、男はその情報は出さないと決めた。
だが、その情報は他のところから流出し、ニュースとなった。
男は選挙に負け、メディアにも出ることはなくなった。
終わり。
■解説
相手の妻の浮気相手がこの男だった。
ナンパ
マッチングアプリで酷い目にあったから、俺はナンパすることにした。
やっぱり、好みの女の子を見つけて口説く方が時間を無駄にしなくて済む。
何とかして、人生初の彼女をゲットして見せる。
休日にショッピングモールに行く。
だけど1人で来ている女の子が少ない。
4時間くらい、ショッピングモールをウロウロしていたけど、好みの女の子が見つからない。
帰ろうかと思っていたら、俺の好みのど真ん中の女の子を見つけた。
俺はすぐにその子に声をかける。
だけど、無視されてしまった。
俺はジュースを飲んで一息ついて、トイレに行ってから帰ろうと思い、トイレへと向かった。
トイレで用をたしていると、なんと隣にあの子がいた。
こんな偶然もあるだね、と話が弾んだ。
この後、俺はその子とショッピングモール内をデートした。
終わり。
■解説
トイレで再会しているので、語り部が好みだと思い、デートした相手は男である。
うたた寝
昨日は夜更かししたせいで、とても眠い。
帰りに電車の中で寝れればいいんだけど、座れなかったり、寝過ごしたりしたら最悪だ。
だから、少しだけ教室で寝ていくことにした。
どのくらい寝ただろうか。
俺は体を揺すられて、目を覚ます。
すると知らない女が俺を見ていた。
女は「好きです。付き合ってください」と言ってきた。
見知らぬ人から急に好きだと言われても怖いだけだ。
だから俺は断った。
すると女は鬼のような形相で首を絞めてくる。
そして目の前が真っ暗になった。
俺は思わず、叫んだ。
同時に、ベッドの上で飛び起きた。
なんだ。
夢だったのか。
本当に怖かった。
終わり。
■解説
教室で寝ていたのに、ベッドの中にいるのはおかしい。
つまり、語り部は気絶して、どこかの部屋に連れ込まれた。
サンダーソニア
親友が結婚して3年が経った頃、私はその親友の家に招かれた。
3年ぶりに会った彼女は酷く痩せていた。
私が心配すると、彼女はダイエット成功したんだと笑った。
少しぽっちゃりだったけど、痩せすぎと思った。
彼女とその旦那さんはとても仲が良く、幸せそうだった。
旦那さんのために頑張って痩せたんだろう。
家の中を見渡してみると、彼女らしく掃除が行き届いていてすごくきれいだ。
ただ、あんなに好きだった花が全然見当たらない。
「花は育ててないんだ?」
「うん。今はアンダーソニアだけかな」
彼女はバラとかユリとかが好きだったのに。
今度、お花の苗でも持って来よう。
終わり。
■解説
アンダーソニアの花言葉は「助けて」である。
もしかすると親友は旦那からDVを受けているのかもしれない。
高額な報酬
FとSは大金持ちになることが夢だった。
自分たちが金持ちになれるのであれば、どんなことでもしようと誓い合う2人。
そんなとき、2人の元にある高額な報酬が受け取れる依頼が来た。
それは臓器売買。
条件に合う人間を攫えばいい。
それだけで大金持ちになれる。
2人はその依頼を受けることにする。
Fはさっそく、誘拐する人間を探そうと言う。
しかし、Sは既に見つけていて、確保できていると答えた。
FはSの仕事の驚きながらも、これで大金持ちになれると喜んだ。
数日後。
Sは大金持ちになった。
終わり。
■解説
Sが確保していると言った、条件に合う人間はFだった。
FはSによって、臓器を売られ、死んでいる。
疑惑
僕は彼女が浮気していると疑惑を持っている。
でも僕から別れ話を振ることはしない。
彼女から別れ話をしてきても別れるつもりもない。
きっと僕が邪魔だと思っているだろう。
なかなか尻尾を出さないが、何かあれば尻尾を出すはずだ。
休日に彼女と一緒に歩いている時だった。
不意に、暴走車がこっちに向かって来る。
僕はチャンスだと思った。
彼女は絶対に僕を車の方に押すはず。
「危ない!」
案の定、彼女は僕を押してきた。
だが、僕は彼女を押し返す。
彼女は道の外れへと倒れる。
そして僕はこの後、彼女にちゃんと愛されてたと気付いた。
でも、何もかもが遅かった。
終わり。
■解説
彼女は語り部を車の方へ押したのではなく、助けようとした。
しかし、語り部は彼女を押し返したため、車に轢かれてしまった。
目安箱
男が住む町は不正で溢れていた。
商人は同心や与力と組んで、やりたい放題で、庶民は何も言うことができなかった。
そのため、町の中は荒廃し、治安も悪くなる。
そんなとき、町奉行は目安箱を設置した。
男は前から目を付けられ、虐げてきた与力に対して密告書を入れる。
そのほかにも目安箱には多くの密告が集まった。
目安箱の中身は1ヵ所に集められ、直接、確認するため、町奉行以外には誰も見ることができなかった。
そして町奉行により、多くの者は罰せられ、処分される。
しかし、男が密告した者は裁かれることはなかった。
数日後。
男は変死体となって発見された。
終わり。
■解説
男が密告書を書いた相手は目安箱の密告書を集める人間。
つまり男が書いた密告書は集められた際に握りつぶされた。