ガム
俺はずっとあいつが嫌いだった。
いつか、絶対に殺してやると思いながら、表面上ではあいつと友達として付き合っていた。
あいつを殺す隙を伺うのと、あいつを殺したことで、俺が捕まるなんて考えられないからだ。
あいつのせいで、これ以上俺の人生が狂うのは耐えられない。
俺は捕まることなく、どうやってあいつを殺そうか?
そればかりを考えていた。
そんなとき、ある動画が目に入った。
それは、あるカップルが真夏にレストランで水を飲んだというものだ。
女は3杯を一気に飲み干し、男の方は1杯だけゆっくりと飲んだ。
すると、男は急に倒れ、死んでしまう。
警察が検証したところ、男女、どちらのコップからも毒が検出された。
では、なぜ、女の方は毒で死ななかったのか、という、頭の体操みたいな動画だ。
答えは毒が氷の中に入っていた、というもの。
つまり、女は氷が溶けて、中の毒が出てくる前に水を飲み干したから助かったというわけだ。
俺はこの動画を見たときに、これだ!と思った。
さっそく俺は毒入りの小粒のチョコレートを用意する。
そして、あいつに「一口どう?」と言って差し出した。
あいつは「サンキュー」と言ってチョコレートを口にする。
これであいつは毒で死ぬはずだ。
ただ、これだけだと、俺はすぐに捕まってしまう。
だから俺も、もちろん、毒入りのチョコレートを食べる。
だが、俺は予め、こっそりとガムを噛んでおいた。
口の中でチョコレートをガムで包んだ。
これで俺はチョコレートの毒で死ぬことはなく、あいつだけが死ぬはず。
あいつが死ぬのをじっくりと見てやるさ。
終わり。
■解説
チョコレートはガムを溶かす性質がある。
つまり、チョコレートでガムが溶け、毒は語り部の口の中にもあふれ出す可能性が高い。
このあと、2人とも毒で死んでしまうはずである。
公衆トイレ
それは大学の夏休みのことだった。
俺は休みの間にガッツリと稼ぎたいと思って、色々なバイトをやっていた。
その日は、配送の仕分けの仕事だったのだが、荷物が多くて終わったのが深夜になってしまった。
家から歩いて30分くらいのところだったからよかったけど、もし、遠い場所だったら終電も終わっているし、どこかで朝まで時間を潰さないといけないところだった。
一応は残業代ということで聞いていた金額よりも結構、多く貰えたので正直、ラッキーと思った。
家まで30分の道のりはちょっと長いなと思っていたが、夜風も涼しく、歩いているうちに深夜の散歩も悪くないと思い始めた。
そうなってくるともう少し散歩したくなってくる。
そこで俺は少し遠回りして帰ることにした。
歩いていると、ふと公園を見つけた。
そこで俺はその公園に寄っていくことにした。
公園は結構大きい。
お昼や休みの日なんかは、家族連れがやってくるんだろう。
散歩道としてもいい。
誰もいない公園をゆっくりと歩く。
ちょうど半分くらい来たところだろうか。
いきなり、腹痛が襲ってきた。
さっきまでなんともなかったのに。
最初は急いで家に戻ろうと思ったが、どう考えても間に合わない。
最悪だが、その辺でするしかないかと思ってた時だった。
ふと、目の端に公衆トイレが映った。
一瞬、公衆トイレか、と思ったがそんなことを気にしている場合じゃない。
急ぎ足で公衆トイレに入ると、思った以上に古いトイレだった。
個室も2つしかない上に、割と汚い。
最悪だと思いながら奥の方の個室に入る。
トイレは和式でそれも最悪だと思ったが、洋式だったとしても恐らくは座りたくない状態だったろう。
すぐにズボンを降ろし、用をたし始める。
すると、いきなり隣の個室からカリカリという壁を引っ掻くような音が聞こえてきた。
マジかよ。
こんな時間に俺以外に使ってるやつがいたのか。
しかも、なんで壁を引っ掻いてんだよ。
イライラしながらも踏ん張っていると、今度は声が聞こえてきた。
「うん。隣の奴を連れて行く」
野太い男の声だった。
そして、ずっと隣の個室の壁をカリカリと引っ掻いている。
俺は一気にイラつきから怖さの方が増して、すぐにズボンを上げる。
漏らすとかもう、そんなことはどうでもいいくらい怖かった。
すぐに帰ろう。
そう思って個室から出る。
すると手洗い場に40代くらいの男が立っていた。
こいつか。
俺はそいつを睨みながらすれ違い出口に向かう。
するとその男は俺が入っていた個室の隣に入っていく。
なんだ。
これから入るのか。
疑ってごめん。
トイレから出ると、今までのことが嘘だったように腹痛が引いた。
それでも俺は足早に家へと帰った。
その日以降、俺はその公園を通るようなことはしなかった。
終わり。
■解説
個室は2つだったはずである。
そして、語り部が出るまで隣の個室の壁を引っ掻いていた者がいたはずである。
それなのに、語り部が見た40代の男は『隣の個室』に入って行っている。
つまりは個室には誰もいなかったことになる。
語り部が聞いた声と「連れて行く」という言葉は一体、なんだったのか。
テレビに映る顔
うちの息子は5歳になるんだけど、最近はやたらと動画でホラー系のものを見ている。
そのせいか、やたらと「僕には霊感がある」とか「幽霊を見た」とか言い出すようになった。
怖がって外に出たがらないとか、一人で寝れないとか、そういう感じじゃなくて、どこか楽しんでいるようだから、まだいいのだが、ずーっと幽霊の話に付き合うこっちの身にもなってほしい。
この前も妻が息子に「テレビが消えてるのに、顔が映った」と騒がれたらしい。
話を聞いてみると、どうやら息子の後ろにいた妻の顔がテレビに反射して写ってたみたいだ。
妻はそのことを息子に説明したが、通じなかったらしく、その日以降に消えたテレビ画面をジッと見るようになったとため息交じりに言っていた。
俺はそのうち飽きるだろうと思って、特に気にしないようにしていた。
そんなある日の日曜日のことだった。
妻が出かけていたので、俺と息子の分の昼飯を作っていると、いきなりリビングの方から「あーー!」という息子の声がした。
なにかあったのかと思い、急いでリビングに行くと、息子は電源が入っていないテレビの前に立っていた。
「どうした?」と息子に問いかけてみると、息子はテレビを指差した。
「テレビが消えてるのに、お父さんの顔が映った!」
その言葉を聞いて、俺は妻の話を思い出した。
確かに、四六時中、こんなことを入れていたら、そりゃ、妻も疲れるだろう。
俺は息子に「それはお父さんの顔がテレビに反射して写っただけで、心霊現象じゃないんだよ」と説明した。
だが、息子はよくわからないというように、首を傾げていた。
うーん。
やっぱり、子供に説明するのは難しい。
終わり。
■解説
息子が声をあげたのは、父親がリビングに来る前である。
つまりは息子がテレビに映っていた、語り部の顔は、反射して写ったものではないということになる。
一体、息子が見たという、語り部の顔はなんだったのだろうか。
ヴァンパイア
ある小さな村で連続殺人が起こった。
犠牲者は全て若い女性で、首には噛まれたような跡があり、血を抜かれて死んでいた。
村の女性たちはヴァンパイアが現れたと恐れた。
この村では過去にも、たびたびヴァンパイアが現れて人々を襲ったという伝承がある。
今までその伝承を信じていなかった人でも、日々、教会に通ってお祈りをし、夜は家から出ないように心掛けた。
しかし、一向に犠牲者は減らない。
しかも、村に不審な者を見たという情報も出て来ない。
そこで村人たちは、ヴァンパイアが村人に化けているのではないかと考える。
村人たちは話し合い、ヴァンパイアを見つけ出す方法を考え出した。
その方法は一人ずつ教会に行き、司祭に確認してもらおうという方法だった。
教会にはたびたび現れたヴァンパイアを消滅させた聖水が置いてある。
それを司祭が、教会にやってきた人間に振りかけることで判別するのである。
もし、聖水を浴びることを拒否した人がいれば、その人間がヴァンパイアということがわかる。
次の日から、村人たちは順番に1人ずつ教会へと向かった。
そして、数ヶ月後。
全ての村人が教会で聖水を浴びた。
だが、その聖水で苦しむ村人はいなかった。
ヴァンパイアはもう逃げていったのかと、村人たちは思ったが、女性の犠牲者が減ることはなかった。
終わり。
■解説
村人たちの中で、唯一、聖水を浴びていない人間がいる。
それは司祭。
つまり、ヴァンパイアは教会の司祭に化けていた。
ジンコツスープ
ある人気ラーメン店の閉店後に、1人の男が訪ねてきた。
その男は店主の友人で、ラーメン店の成功を激励しにやってきたのだという。
「いやー、久しぶり。まさか、お前がラーメン屋を始めるなんて思ってなかったよ」
「学生の頃はラーメンなんてくだらないって思ってたんだけどさ、社会人になってから激ハマリしたんだよ」
「それで自分でラーメン屋を始めたってわけか」
「そういうこと」
「凝り性のお前らしいよ。それでさ、お前んとこのスープ、変わった味がするな」
「お? わかるか?」
「わかるよ。それが人気の秘訣なんだろ? でさ、あれ、どうやって作ってるんだ?」
「企業秘密だって。いくらお前でも話せるわけねーだろ」
「頼むよ。誰にも言わないからさ」
「うーん……」
「頼むよ。親友だろ?」
「都合のいい親友だな。……はあ。わかったよ。これからいうことは独り言だからな。お前が盗み聞きしてたってことで」
「わかった。絶対に誰にも言わない」
「うちのスープ、トンコツスープって言ってるけど、違うんだよね。実はジンコツを使ってるんだよ」
「……は? ジンコツ? ジンコツって人の骨のことか?」
「ラーメン作りの修行をするために、俺、世界中を旅したんだよ。それで、アマゾンのジャングルに行った時だった。俺はある部族に会ったんだ」
「部族……?」
「それは人食いの部族でさ。俺も食べられそうになったんだけど、ちょうど、ダイヤを持っててさ」
「ダイヤって、ダイヤモンドか」
「そしたら、それが妙に気に入ったみたいでさ、俺は特別に食べられずに済んだってわけ」
「……それと、人骨と、どんな関係があるんだ?」
「その部族は人を食べるんだ。だからさ、骨なんかもいっぱいあるわけ」
「……お前、まさか」
「その部族の人に頼んだら、持って行っていいって言われたんだよ」
「いや、ちょっと待てよ……」
「で、豚とか牛とかの骨と一緒に、持って帰ってきたわけ。まあ、空港でも一本一本、何の骨かは調べられないし」
「……」
「いや、でも、ホント苦労したよ。ジンコツの臭みを消すのにさ。意外とクセがあるんだぞ、人間の骨ってさ」
「お前、マジで洒落にならねえって」
「……なーんて、ビビった?」
「え?」
「冗談だよ、冗談。今の独り言は冗談。まさか、本気にしたのか?」
「だ、だよな? いくらなんでも、それはないよな」
「ないない。ありえないって」
「ビックリするから、そういう笑えない冗談はやめろって」
「ごめんごめん。おっと、そろそろ、仕込みの支度しないと」
「俺も帰るよ。邪魔したな」
「ああ」
「じゃあな、また来るよ」
「いや、それは無理かも」
「へ? なんで?」
「実はさ、さっきの独り言なんだけど、あの中で一つだけ、本当のことがあるんだよ」
「え? ……あ、わかった。修行で世界中を旅したところだな?」
「違うよ」
「じゃあ、どこだよ」
「ああ。それはな……」
店主はそう言って、持っていた包丁を振り上げた。
終わり。
■解説
独り言の中の真実は「ジンコツスープ」であること。
ラーメン屋の店主は部族から骨をもらい受けたのではなく、自分で調達していた。
そして、店主は男の「また来る」という言葉に「無理」と言っている。
つまり、男はこの後、スープの材料にされてしまう。
神に捧げる踊り
ある山奥に小さな町があった。
その町は山間にあるため、ほとんど人が立ち寄らず、町の住人たちで協力して自給自足の生活を営んでいた。
そのため、町では悪天候による不作は多くの餓死者を出してしまう。
そのため、この町では毎年、決まった日に選ばれた巫女が神に捧げる踊りを舞う。
その踊りで、その年の豊作を祈るのである。
また、その踊りは神聖なため1人しか習得することが許されない。
そして、かなり難しいため巫女は3ヶ月間、必死になって特訓を重ねていく。
今年も巫女に選ばれた者が、踊りの練習に明け暮れるのであった。
終わり。
■解説
神に捧げる踊りは「1人しか習得することが許されない」はずである。
では、なぜ「毎年巫女を選ぶ」のであろうか。
1人しか習得が許されないのであれば、次の年も、同じ巫女が踊ればいいだけである。
だが、それが「できない」から、選んでいるのである。
つまり、神に捧げられるのは踊りだけではなく「巫女自身」も含まれるから。
巫女は毎年、生贄として神に捧げられている。
人物画
俺の家の、ある部屋には人物画が飾られている。
親父が、その絵を見て一目惚れしたらしく、安くもないのに即買いしたようだ。
母さんにはメチャメチャ怒られてたけど。
けど、親父は満足気に、よくその人物画を眺めている。
俺と母さんは、あの人物画はあまり好きじゃない。
というより、苦手だ。
椅子に座った少女。
背景は暗く、ジッとこちらを見ているような絵だ。
なんていうか、不気味な感じがする。
友達にも見てもらったけど、二度と見たくないと言っていた。
だから、俺も母さんもあの人物画を見たくないので、飾ってある部屋には行かないようにしている。
でも、ベランダに行くためには、この部屋を通らなければならない。
今日は天気がいいから、布団を干したい。
そうなるとベランダに行かなきゃならない。
ベランダに行くと言うことは、あの部屋を通らないといけなくなる。
とはいえ、絵が怖いから布団を干さないのもなんだか、ビビりな感じがして腹が立つ。
要は、絵を見なければいいだけだ。
俺は布団を持ってあの部屋に向かう。
だけど、見ないように意識すると、逆に絵が気になってしまった。
チラリと絵の方を見ると、人物画の少女と目が合った。
くそ、やっちまった。
げんなりしながら、ベランダへ向かい、布団を干す。
凄い天気がいい。
さっきの暗い気持ちも吹っ飛んでしまった。
布団を干し終わり、ベランダから出る。
すると、また人物画の少女と目が合う。
あー、もう。またかよ。
ホント、不気味な絵だ。
終わり。
■解説
語り部は部屋に入ったときと、ベランダから戻ったときの2回、人物画の少女と目が合っている。
その2回は、人物画を見る方向は真逆である。
それなのに、目が合うのは変である。
つまり、人物画の少女の目が動いている可能性が高い。
ヨーグルト
最近、母親がヨーグルトにハマっている。
食べるのはもちろんだが、作る方のにもハマっているようだ。
とはいえ、俺の母親は結構ズボラで、面倒くさがりなところもある。
この前も家庭菜園にハマって、3ヶ月で全部枯らした実績があるのだ。
まあ、今回のヨーグルトだって、そのうち飽きるだろう。
なにより牛乳のパックにそのままヨーグルトを入れて放置するという作り方な時点で、あまりやる気が見えない。
普通は専用の容器を買ってきて、それに作りそうなものだが、それすらしない。
本当に、面倒くさがりなのだ。
それに、家族の中でヨーグルトが好きなのもほとんどいない。
妹が最初は珍しがって食べていたが、今では食べているところを見たことがない。
俺だって、あまりヨーグルトは好きじゃない。
あの酸っぱい感じがどうも苦手なのだ。
けど、そんなとき、話のはずみでAさんに、家でヨーグルトを作っていることを話したら、どうやらAさんも作っているようで、話が弾んだ。
グッジョブだ、母さん。
その中で、俺はAさんにヨーグルトを美味しく食べれる方法を聞いた。
なんでも、牛乳と割って、飲むヨーグルトにすると結構、美味しいらしい。
いや、それって薄まるだけじゃんと思ったが、そんなことは口が裂けても言わない。
それに、せっかく教えてくれたんだから、やるだけやってみよう。
もしかすると美味しいかもしれないし。
ということで、帰って、さっそく飲むヨーグルトを作ってみた。
まずはヨーグルトを作っている牛乳パックからヨーグルトを入れて、次に牛乳を入れる。
出来上がったのは、思ったよりも水っぽいものだった。
牛乳を入れる分量を間違えたかと思ったが、ちゃんと聞いた通りに作っているから大丈夫なはずだ。
とりあえず飲んでみる。
すると、物凄く酸っぱかった。
薄まるどころか、濃くなったように感じる。
そして、なんか、すげーマズい。
とりあえず、明日、Aさんには美味しかったと言っておこう。
なんてことを考えていたら、母さんが買い物から帰ってきて、こう言った。
「またヨーグルトのタネ、貰って来たの」
そして、タッパに入ったヨーグルトを掲げていた。
終わり。
■解説
ヨーグルトのタネを貰って来たということは、現在はヨーグルトは「ない」ということになる。
つまり、語り部は「ヨーグルトのようになった牛乳」を飲んでしまったのである。
この後、語り部はトイレに駆け込むか、病院に行くことになる可能性が高い。
定員オーバー
私はマンションの15階に住んでいる。
もちろん、15階も階段で登れるわけがないから、エレベーターを使う。
でも、マンションのエレベーターは凄い小さい。
200キロまでだから、すぐに定員オーバーになってしまうのだ。
帰るときはまた来るまで待てばいいんだけど、朝の急いでいるときに定員オーバーになるのは辛い。
5分、10分が分かれ目のときに、定員オーバーになって次を待っていると、完璧に遅刻だ。
だから、そういうときは、祈りながらエレベーターのボタンを押す。
けど、そういう時に限って、人がたくさん乗っていて、私が乗った瞬間に定員オーバーのブザーが鳴る。
こういうときは乗れない上に、なんか恥ずかしい。
私の体重が凄い重いように思われてるんじゃないかって。
今日も寝坊してしまって、遅刻ギリギリの状態で、慌てて部屋を出る。
お祈りしながら、エレベーターのボタンを押す。
すぐに私の階にやってきて、エレベーターのドアが開く。
中には6人ほどの人が乗っていた。
全員、大人の人だ。
これは絶対にブザーが鳴るだろうなと思いながらも、ソーっとエレベーターに乗る。
すると、奇跡的にブザーが鳴らずに乗れた。
やったーと思っていると、3階でエレベーターが停まった。
ドアが開くと、女子高生がいて、乗り込もうとする。
だけど、定員オーバーのブザーが鳴った。
女子高生はため息をついて、エレベーターから降りた。
すぐにドアが閉まり、1階へと下がっていく。
それにしても、私はギリギリだったんだな。
危なかった。
女子高生には悪いけど、若いんだから、3階くらいは階段で行こうよ。
頑張って。
終わり。
■解説
そのエレベーターは200キロまでである。
しかし、語り部が乗り込もうとしたときは6人ほどが乗っていた。
しかも、全員が大人である。
そして、語り部も乗れたので、全員で7人になる。
そうなると、1人あたり28キロの体重になってしまう。
さらに、女子高生が乗ろうとした際にはブザーが鳴ったので壊れていないようだ。
もしかすると、エレベーターに乗り込んでいた中には、何人かは幽霊が混じっていたのかもしれない。
巨大な足跡
男はオカルト好きだった。
宇宙人、UMA、妖怪、都市伝説、悪魔、未来人などなど。
何か不思議なことがあれば、すぐに飛んで行くほどだ。
何か不思議なことに遭遇したいと考え、都会よりも田舎の方が遭遇しやすいと、山奥に住むことにした。
そして、男は今日も不思議なことを探して、歩き回っている。
そんなある日の朝のこと。
家から1.5キロ離れている場所に、1つの巨大な足跡を見つけた。
その大きさは家を踏み潰すほどだ。
もしかすると、巨人が現れたのかもしれない。
そう考えると、男は興奮した。
他に足跡がないかと調べてみたが、見つけることができなかった。
しかし、その次の日の朝。
男は家から1キロ離れているところに、巨大な足跡を見つけた。
その足跡は形式から見て、同じものだ。
昨日の足跡は左足で、今日見つけたのは右足だった。
おそらく、同じ巨人の足跡だろう。
そして、次の日の朝には500メートル離れたところに巨大な足跡を見つけた。
男は写真を撮り、明日、雑誌社に持って行くことにした。
自分が見つけた巨人の足跡で世間が騒然となる。
そう考えると、男は興奮して、なかなか寝られないのであった。
終わり。
■解説
巨大な足跡は500メートルずつ男の家に近づいている。
男は朝には踏み潰されてしまう。