懸賞金
男は裏で人身売買を続け、巨額の富を得ていた。
そのため、恨まれることが多く、男は自分の情報は極力、表に出さないように注意している。
だが、それでも情報は漏れてしまう。
ある日、男は暗殺者に命を狙われた。
そのときは命からがら逃げることに成功する。
そして、男は絶対に見つからないような場所に身を隠した。
だが、いつまた狙われるかわからない。
そこで、男は暗殺者に対して懸賞金をかけた。
すると男の元に暗殺者の頭が銃で撃ち抜かれた写真が送られてきた。
男は安堵しながらも、暗殺者が本当に死んでいるかを確認しに、写真を送ってきた者のところへ行った。
男はそこで殺された。
終わり。
■解説
写真を送ってきたのは暗殺者。
写真は偽造で、ターゲットの男をおびき寄せたというわけである。
交換
その女の子は他人が持っているものを、異常に欲しがる性格だった。
一度、欲しいと思ったものはどんなことをしてでも、手に入れようとして、何度か問題にもなったことがあるほどだ。
あるとき、その女の子は祖父が入院している病院にお見舞いに行った際、違う病室の女の子が持っているぬいぐるみを見て、欲しいと思ってしまった。
女の子はすぐに、その子にぬいぐるみを譲って欲しいと頼み込むが、その子は両親が誕生日に買ってくれたものだと言って、拒否されてしまう。
それでも諦めきれず、女の子はその子のところに通い、何度もお願いした。
すると、その子はあるものを交換してくれるなら、譲ってくれると言った。
女の子はよくわからなかったが、了承した。
交換して数ヶ月後。
女の子は息を引き取った。
終わり。
■解説
女の子が交換したのは内臓。
ぬいぐるみを持った女の子は、祖父が入院した病院で会っている。
何度もその子のところに通っていることから、その子はずっと入院しているということがわかる。
ぬいぐるみを持つ女の子はドナーをずっと待っていたのかもしれない。
防犯カメラ
ある日、老人の家に男が訪ねてきた。
男は老人が家に設置している防犯カメラをメンテナンスするために来た、業者だと語った。
男は外に設置しているカメラをテストしたいというので、任せて家の中に入った。
30分後、男はカメラのメンテナンスが終わったと言って帰っていった。
その数日後。
老人が留守の間、家に空き巣が入った。
しかし、防犯カメラには何も映っていなかった。
終わり。
■解説
老人の家に来た業者は空き巣犯の仲間で、逆に防犯カメラの電源を切っていった。
業者だからと言って、無暗に信じてはいけない。
敬虔なクリスチャン
男は敬虔なクリスチャンだった。
両親がクリスチャンだったこともあり、男は幼少時から清く正しく生きてきた。
その熱心さは神に全てを捧げたと言っていいほどだ。
毎週のミサはもちろん、教会の意向にはどんなことにも従った。
そのこともあってか、男は幸せな人生を送ることができる。
だが、死んだ後、男は地獄に落ちた。
終わり。
■解説
男は神に全てを捧げたと言っているが、一つだけ気になる点がある。
それは教会の意向にはどんなことにも従ったという点だ。
社内会議
ある会社で会議が行われている。
金子「では、動いていた新規プロジェクトはクローズということでいいでしょうか」
宮下「しょうがないでしょう。プロジェクトリーダーがあんなことになっちゃ」
田代「誰かに引き継いでやってもらうとかはどうなの? 結構、予算かかってるんだからさ」
木村「部長からは速やかにクローズして、データも消せとの通達がありました」
田代「あー、やだやだ。臭い物には蓋をしろ的な社風」
宮下「今回の件に関しては妥当な判断だろうね。死人が出たなんて話、他に漏れたら終わりだし」
金子「まあ、彼も本望でしょう。自分の研究に文字通り命を捧げられたんですから」
田代「責任を押し付けるなよ。それをいうなら、お前らだって承認したのと、結果を出せって圧力をかけた責任があるだろ」
木村「とにかく、切り替えていきましょう。このままでは会社の存続自体が危ない状況です」
田代「会社のためなら、人が死んでもいいっていうのか?」
宮下「うちのチームから新規プロジェクトの企画書を提出させてもらったんだけど。こっちの議題に移ってもらっていい?」
田代「でたよ。無理やり話を終わらせようとする、お前の悪い癖」
金子「時間は有限ですからね。先のことを考えましょう」
田代「はいはい。わかりましたよ」
金子「では、企画書の説明をお願いします」
宮下「今回の企画の概要は……」
この後の会議では新規プロジェクトの話し合いが行われたが、結局、承認するにはいたらなかった。
その議事録は木村によってまとめられた。
参加者は金子、宮下、木村と書かれている。
終わり。
■解説
参加者の中に田代の名前が入っていない。
つまり、田代は他の3人に認識されていないと考えられる。
(3人は田代の言葉に返答をしていない)
田代は新規プロジェクトのリーダーで、実験により死に至り、幽霊となって会議に参加している可能性が高い。
点字ブロック
今日、学校から帰るとき、ななちゃんと探検しながら帰ったんだ。
そしたら、道路にツブツブの黄色い板みたいなのがあったんだよね。
ななちゃんがそれにつまづいて転んじゃったんだ。
それで車に轢かれそうになっちゃんだよ。
危ないよね。
だから、私とななちゃんで、そのツブツブの上に板を置いたの。
これで、他の人も転ばないで済むよね。
終わり。
■解説
語り部が言う、黄色いツブツブは点字ブロックのこと。
これの上に板を置いてしまうと、点字ブロックを利用している人が歩くのが困難になる。
しかも、車に轢かれそうになったということは、道路の近くということになる。
もしかすると、点字ブロックを利用する人が、混乱して道路に飛び出してしまう可能性がある。
配送
俺は8年前から配送トラックの運転手をしている。
最近は物価高で不景気なせいか、人手がドンドンと減ってきている。
そのしわ寄せは全部、残った運転手が負担することになる。
そのせいで、このところ、ほとんど休めていない。
しかも夜通し走ることも少なくない。
今日も昼から出発して、深夜になった今も運転し続けている。
そんな状態だから、眠くもなってくる。
高速道路のような真っすぐな道は特に眠気を誘う。
ラジオなんかを大音量でかけてても、ダメだ。
どこかで仮眠を取りたいところだが、それだと時間に間に合わない。
このまま走り続けるしかない。
そんなことを考えていると、ふと、太陽の光が差し込んできた。
おっと、危ない。
今、完全に意識が飛んでいた。
だけど、なんか眠気がなくなった気がする。
太陽の光を浴びたからだろうか。
さてと、もうひと踏ん張りするぞ。
あれ?
それにしても、今日は随分と道が空いてるな。
俺しか走ってないぞ。
終わり。
■解説
語り部は、今は深夜と言っているのに、太陽の光が差し込んでくるのはおかしい。
語り部は居眠り運転をして、対向車線に飛び出した可能性が高い。
つまり、太陽の光ではなく、相手のトラックのライトの光だったことになる。
さらに突然、朝になっているのもおかしい。
語り部は事故により、即死してあの世に行ってしまったのかもしれない。
衝撃映像
俺はユーチューブのチャンネルを運営している。
前まではそこそこ稼げていたのだが、最近は色んなやつらが参入してきたせいで、視聴者の取り合い状態になった。
そのせいで、収入は激減。
ここいらでなんとか盛り返さないとならない。
そこで、俺はスマホを片手に町に出る。
狙うは衝撃的映像だ。
カメラを回しながら町をうろついてみる。
だが、そうそう衝撃的な映像なんか撮れないものだ。
帰ろうかと思っていた時だった。
物凄いスピードを出したトラックが突っ込んでくる。
そのとき撮った映像はまさしく衝撃的で悲惨な映像だった。
ニュースにも流れ、5年経った後も、色々なチャンネルがこの映像を使っているようだ。
皮肉なことに、その映像は俺のチャンネルでは俺のチャンネルではアップされることはない。
終わり。
■解説
トラックが突っ込んでくるとあるように、語り部の方へ突っ込んできた。
悲惨な映像ともあり、語り部のチャンネルには映像がアップされないということは、語り部はこの事故により、亡くなってしまっている。
新人研修
■解説
死者が出たと言っているのに、「新人は」誰一人欠けることはないと言っている。
つまり、その年の新人研修で出た死者は教官の方である。
男は新人たちのうっぷんが爆発し、殺されてしまった。
そのこともあり、新人は誰一人逃げられず、入社することになった。
オフ会
俺は5年ぶりに外に出た。
なぜなら、今日は初めてのオフ会だからだ。
3年前からハマったオンラインゲーム。
その中でギルドメンバーと話すのが俺の唯一の楽しみなのだ。
メンバーのharuという人と結構、仲良くなり、ギルドメンバーを誘ってオフ会をやろうということになった。
正直、部屋から出たくはなかったが、これも人生の立ち直る切っ掛けと考えて、俺は参加を承諾した。
本音を言うと、haruさんに会いたかったというのが大きい。
お店に行くと、どうやら俺が一番乗りのようだった。
少し待っていると見知った女が店に入って来て、一直線にこちらにやってきた。
「よかった、出て来てくれて。haruです」
そう言って女が俺の前に座った。
俺はただただ頭が真っ白になり、何も言うことができなかった。
終わり。
■解説
店に入って真っすぐ語り部のところに来たということは、haruは語り部の顔とハンドルネームを知っていることになる。
そして、語り部はその女性を「見知った女」と言っている。
つまり、やってきたのは母親の可能性が高い。
風呂場にて
ある日、男は風呂に入りながら、スマホでソーシャルゲームの周回を始める。
すると、すぐにメールが来て、開いて見ると、これから飲みに行かないかという友達からの誘いだった。
男は行くと返事したが、風呂に入ったばかりだったので、もう少し湯船につかりたいと思ったが、約束の時間に遅れてしまいそうだ。
なので、男は風呂に入りながら、ドライヤーで髪を乾かそうと考える。
部屋はエアコンを付けっぱなしだが、以前もエアコンと併用して使ってもブレーカーは落ちなかったから大丈夫だろうと、スイッチを入れた。
数分後。
ブレーカーが落ち、浴槽は真っ暗になった。
終わり。
■解説
なぜ、ブレーカーが落ちてしまったのか。
それは男がドライヤーを湯船に落としてしまい、漏電でブレーカーが落ちてしまったため。
つまり、男は感電死した可能性が高い。