意味が分かると怖い話 解説付き Part101~110

意味が分かると怖い話

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お取り寄せサイト

ダークウェブの中に、お取り寄せサイトというサイトがあった。

そのサイトはお金を積めば、なんでも取り寄せることができるのだという。
青年はそのサイトを5年前から使っていて、期間限定のお菓子や人気でなかなか手に入らないゲームなんていうくだらないものを遊び半分で取り寄せていた。

もちろん、普通の値段の数倍がかかるが、資産家である青年にとっては面白さや手に入るという快感の方が勝っていた。

ある時、青年はふと、「本当に何でも取り寄せることができるのか」ということが気になった。
試しに、ある有名な人物の「命」という依頼をしてみた。
すると数億という値段が返ってきた。

さすがにそんな金額を払うつもりはなく、キャンセルしたが、逆にお金さえ積めばどんなものでも取り寄せてくれるのではないかという怖さが伝わった。

なので、青年は危険なものを遊び半分で取り寄せすることはしないと決める。

そんな青年があるアイドルにハマってしまう。

とても人気なアイドルなので、ライブのチケットを手に入れるのもかなり苦労するくらいだ。
そこで青年は取り寄せサイトを使い、ライブがあれば、いつもチケットを取り寄せサイトから取り寄せてきた。

しかし、青年はいつしか、ライブだけでは満足できなくなっていった。
青年は、今度は取り寄せサイトで、そのアイドルの私物を取り寄せ始める。

かなりの金額が請求されたが、青年にとってはその金額でも安く感じていた。

青年はドンドンとそのアイドルにハマっていった。
そのアイドルの私物を手に入れていく。

そして青年は試しに「本人」を依頼してみた。
するといつもとは違い、「理由」を尋ねられた。

青年は「結婚したいから」と入力する。

かなりの高額を請求されたが、青年は全財産を投げ打って、取り寄せを依頼した。

数日後。

青年の元に、名前と印鑑が押された婚姻届け、結婚指輪、そして指が届いた。

終わり。

解説

結婚指輪を嵌めるための薬指が届いた。
その指はアイドルのものの可能性が高い。

 

年賀状

俺は昔から特に霊感がないと思っていたんだけど、どうやら違ったみたいだ。
 
この家に引っ越してきたとき、最初の1年くらいは特に何もなかったが、不可解なことが徐々に起こり始めた。
というのも、いつの間にか物の配置が変わっていたり、物がなくなったり、増えたりするようになった。
気になって調べたけど、別に事故物件というわけでもなかった。
 
おかしいなと思いつつ、特に幽霊がいるって感じがするわけじゃないけど、そういうことが続くとやっぱりちょっと不気味だ。
 
だから俺は引っ越すことにした。
年末に急に引っ越しとなると、多少は引っ越しの値段が高くなるが、新年を気持ちよく迎えたいため、引っ越しを決行することにした。
 
引っ越し自体は無事に終わり、荷ほどきまでは終わらなかったが、清々しい気分で新年を迎えられた。
 
年が明けたと同時に、友達から、あけおめメールが届く。
それを見て、そういえば誰にも引っ越したことを言ってないなと思い、あけおめメールの返信に引っ越したことを書いて送った。
 
引っ越しでバタバタしてたせいで、家の中には食材がない。
しぶしぶ、コンビニに買い物に行く。
 
そして、帰ってきたときに、ふと、郵便受けに何かが入っているのを見つけた。
 
年賀状。
 
送り主は聞いたことがあるようなないような人からだった。
 
そういえば、家族にも伝えてなかったし、郵便局にも転送届を出してないことに気づいた。
とりあえず、俺は明けましておめでとうを言うために、母親に電話を掛けた。
 
終わり。

解説

誰にも教えていない、また、転送届もしていないのに、新しい住所に年賀状が届くのはおかしい。
つまり、語り部の違和感は幽霊の仕業ではなく、ストーカーが家に入り込んでいたことの違和感だった。
また、年賀状も転送届をしていないはずなので、郵便として届けられたのではなく、ストーカー自身が郵便ポストに入れた可能性が高い。

 

居候の女の子

俺は一戸建ての家を賃貸として借りて住んでいる。
持ち主は叔父ということで、格安で貸してもらったのだ。
 
金のない俺としては本当に助かる。
ただ、使ってない部屋もあるし、掃除なんかも手間がかかりすぎてあまりやってない。
 
そんなある日、俺は仕事帰りに道端でうずくまって泣いている女の子を見つけた。
事情を聞くと親に家から追い出されて帰るところがないらしい。
 
とりあえず、今日は俺の家に来るといいと言って、女の子を誘った。
まあ、下心がなかったといえば、嘘になるけど、無理やり迫るなんてことはするつもりはなかった。
 
女の子は何も食べてないということで、家に帰る前に外食をした。
そのとき、女の子は笑顔でありがとうと言ってくれて、うれしかった。
その笑顔を見れただけで、晩御飯を奢った甲斐はあったと思う。
 
だが、これがいけなかった。
その女の子は俺の家に住み着き、一向に出ていく気はなさそうだ。
 
漫画やドラマでよくある、ここから恋愛関係になるようなことも一切なく、俺が仕事に行っている間も、ダラダラと家で過ごしている。
もちろん、男女の関係にもなっていない。
 
何もせず、飯をたかり、挙句の果てには俺の財布から金を取る女をこれ以上、意味もなく住まわせるのも限界だった。
だから、出て行けと言った。
 
すると彼女は、自分は未成年で、もし、追い出したら警察に駆け込んで、あることないことを言うと脅してきた。
 
犯罪者になるわけにはいかない。
そう思って俺は我慢することにした。
 
その俺の態度を見て、彼女はさらに調子に乗り始めた。
俺の家に友達を呼んで、一晩中騒いだりするようになった。
 
寝不足の日が続き、俺はついに限界になった。
 
そこで彼女に、寝られないんだ!何とかしないと追い出すぞと怒鳴った。
彼女は警察に駆け込むと脅し返してきたが、俺は別にいいよと言って返した。
 
彼女は少し考えたような仕草をすると、部屋へ戻っていった。
そして、すぐに出てきて、こう言った。
 
「あんたが寝られればいいんだよね?」
 
彼女は俺の腹に包丁を突き立てた。
 
終わり。

解説

彼女は包丁で刺せば、語り部は病院で寝られると考えた。
もしくは、永遠に寝られるようにしたという可能性も考えられる。

 

長距離バス

年末になると俺たち長距離バス運転手は忙しくなる。
帰郷で実家に帰る人が多くなるからだ。
 
なので会社はこの時期にあるとバスの本数を増やす。
まあ、稼ぎ時なのだから当然と言えば当然なのだが。
 
ただ、バスの本数が増えても運転手が増えるわけではない。
必然的に、俺たち運転手の稼働が高くなる。
 
もちろん俺も最近の運転続きで、疲労がピークに達している。
それは周りの人たちも同じだから、自分だけが疲れたと言って休むわけにはいかない。
今日ももちろん、出勤だ。
 
今日の担当バスは8時間の寝台バス。
400キロを越す距離だから、2人体制だ。
 
俺は後半の運転を担当する。
みんな疲労困憊だというのを知っているため、前半の運転担当から「寝てていいよ」と言われた。
お言葉に甘えて、俺はバスの乗客の数を確認し、バスの出発後に隣の席で座りながら仮眠を取らせてもらった。
 
3時間くらい寝た時だっただろうか。
ふと目を覚ますと、運転手が体を小刻みに動かしていた。
 
おそらくトイレに行きたいのだろう。
 
俺は運転手に「トイレ休憩を取ろう」と提案した。
そして、少し早いがトイレ休憩後に運転を変わることにする。
乗客にトイレ休憩をする旨をお知らせし、公衆トイレに立ち寄る。
 
本来停車する場所ではないので、周りに売店も自動販売機もないような場所だ。
とりあえず10分の休憩と告げる。
 
ここから5時間近くの運転と考えると気が滅入る。
少し早く運転を変わるといったことに少し後悔していた。
 
そんなことを考えながら運転席に座っていると、ついウトウトしてしまった。
 
乗客に「もう時間ですよ」と声を掛けられ、慌て飛び起きた。
時計を見るともう15分が過ぎていた。
 
俺はすぐに乗客を数え、全員そろっているのを確認して、バスを発車させた。
 
終わり。

解説

普通、時間が過ぎていて声をかけるとするなら、交代要員の運転手のはずである。
そして語り部は「乗客」しか確認していない。
つまり、もう一人の交代要員の運転手をトイレに残してしまっていることになる。

 

名探偵

その男はまさに探偵の申し子のようだった。
男が携わった事件で解決できないことはなかった。
 
どんな難解な事件でも、難なく解くことができた。
 
そして、事件なのか事故なのかも判別することもできる男の元には、いつも警察からの協力要請が来ていた。
 
現場でもその男が到着すれば、周りはもう解決したかのように安堵の雰囲気が漂う。
だが、それも当然のことで、警察がどんなに頭を悩ませたところで、探偵が到着すればすぐに解決してしまう。
 
事件が起きて、協力要請を受け、現場に行き、事件を解決する。
そんな日々を、男は40年続けた。
 
だが、そんな男に転機が訪れる。
あるペンションに宿泊に行ったときのことだった。
 
そこで殺人事件が起こった。
なんの工夫もない、突発的な殺人。
 
警察がやってくると、その場に男がいることを知り、捜査を男に任せた。
警察はすぐに犯人を見つけ出し、解決するだろうと思っていた。
 
しかし男は悩んでいた。
いつもなら、すぐに解決するところが、今回に関しては時間がかかった。
 
そして、ついに男はこの事件を解決することはできないと言った。
警察は驚いた。
初めて男が事件を解決できず、投げ出してしまった。
 
警察は男が解けない事件が、自分たちに解けるわけがないと早々に諦めた。
 
その事件の後、男は探偵を引退した。
 
周りは事件を迷宮入りにさせてしまったことによる罪悪感だろうと考えたのだった。
 
終わり。

解説

最後の事件の犯人は男自身。
男は犯人を見つけられない、ではなく「事件を解決できない」と言っている。
男は悩みに悩んだ結果、自首することはできなかった。

 

ライフジャケット

男は大学の夏休みに客船の乗務員のバイトをすることにした。
 
周りからは泳げないくせに、そんなバイトをして大丈夫かとからかわれたが、船が沈没することなんてないと笑い飛ばした。
周りも、確かにその通りかと男を見送った。
 
船は男が思っていたよりも小さく、乗客は15人ほどのものだった。
 
乗務員の仕事は厳しく、男は高額でもこのバイトを選んだことに後悔する。
そして、忙しい毎日が過ぎていく。
 
出発して1週間後。
船は嵐に巻き込まれた。
 
船はかなり古いものだったが、男は沈没するとは思っていなかった。
 
だが、その日の夜。
ライフジャケットを身に着けた男の上司が、大量のライフジャケットを持ってやってきた。
 
この船は沈没する。
そういわれて、男の頭は真っ白になった。
 
だが、そんな男に上司は乗客にライフジャケットを配れと指示される。
 
男は状況に頭がついていっていなかったが、とにかく、ライフジャケットを持って、乗客のところへと回る。
 
しかし、思ったよりもライフジャケットの数が足りない。
男の上司は、足りなくなるかもしれないと青ざめていたが、ライフジャケットはピッタリ、乗客15名分だった。
 
ホッと安堵のため息を吐く、上司と男。
 
それと同時に、船が大きく傾き、船が沈んでいく。
慌てて全員、船外へと飛び出す。
 
その後、ニュースでは乗客15名は全員助かったと報道された。
 
終わり。

解説

ライフジャケットの数と乗客の人数がピッタリ同じだということは、「男の分」のライフジャケットは無いことになる。
上司に声をかけられたとき、男はライフジャケットをつけていなかった。
また、ニュースでは「乗客15名は全員助かった」とあるが、乗務員も助かったとは言われていない。
つまり、ライフジャケットのない男は助からなかったということになる。

 

胃外交

その国は内戦によって経済がガタガタになってしまった。
 
このままでは全ての国民が飢えて死んでしまう。
そんな危機的状況に、ある国から援助をしてもよいという打診があった。
 
早速、交渉の場を用意し、相手の国の外交官を迎える。
その際、相手の外交官は美食家ということを聞きつけ、その国は国内の一流のシェフたちと一流の高級素材を用意した。
 
外交官に料理を美味いと言わせることができれば、交渉は成功したも同然という情報も得ていた。
そして、外交官は肉が好きだという情報も手に入れている。
そこで今回の料理の目玉は、高級品の牛ヒレのステーキにした。
滅多に手に入らないと言われている貴重な肉は、必ず上手いと言わせられる自信があった。
 
そして、当日。
相手の外交官を出迎えた際に驚愕し、頭を抱えることとなる。
それは、聞いていた報告よりも、相手の人数が一人多かったのだ。
 
相手の外交官は「妻も来たいと言い出してね」とさっと言った。
相手の気を悪くさせるわけにはいかない。
快く迎えることにする。
 
しかし、材料が足りない。
他の料理はなんとかできそうだったが、メインの牛肉だけはどうしようもない。
慌てて、各所に連絡して追加で手に入れようとしたが、無駄だった。
それどころか、牛肉はおろか、他の肉さえも手に入らなかった。
しかし、今日のメインは肉料理だと伝えてしまっている。
今更、肉以外を出すわけにはいかない。
 
交渉が始まり、料理を出していくことになる。
このままでは交渉は失敗してしまう。
そう考えたこの国の外交官はある決断をした。
 
料理を出す時間がかなり遅くなってしまい、相手の外交官を少し、苛立たせてしまったが、料理を出した途端、その苛立ちは消し飛んだ。
 
交渉は成功し、無事、相手の国から援助を受けられることとなった。
 
そして、相手の外交官は去り際にこう言った。
 
「実に美味しい肉だった。これまで食べたことがない肉だったよ」
 
終わり。

解説

相手の外交官は肉好きな上に美食家であること、そして、その高い地位からほぼすべての肉を食べたことがあるはず。
しかし、外交官は「食べたことがない」と言っている。
そして、「料理を出すのが遅くなった」のはなぜなのか。
それは「料理を作る人間が減ったから」である。
つまり、この国の外交官はシェフの一人を食材として使用した。

 

親ガチャ

親ガチャ。
それは生まれた瞬間、親によって自分の人生が確定してしまうことを言う。
親は子を選べないように、子も親を選べない。
 
少女の家はとても貧乏で、昔からよく我慢を強いられてきた。
本当はピアノの演奏家になりたかったが、ピアノを習うのはもちろん、ピアノを買うなんてことはできなかった。
 
そのため、コンクールにさえも出ることができなかった。
少女は何度も金持ちの家に生まれていれば、自分の人生は大きく変わっていただろうと考えていた。
 
少女の父親は、結婚する前に会社を経営していたが、1度の不渡りを出してしまい、倒産したと言っていた。
あのとき、お金があれば今はもっと楽な生活ができたのにという愚痴を何度も聞いている。
 
少女はその瞬間に、既に自分の人生が決まってしまったのだと思う。
自分が生まれる前に、もう自分の人生は決まっていたのだと。
 
そんなあるとき、少女は自暴自棄でもあったため、黒魔術に没頭した。
悪魔を呼び出す儀式を調べつくし、実践した。
 
そして、少女はついに悪魔を呼び出すことに成功する。
呼び出したのは、時間を司る悪魔、アガレス。
 
少女はアガレスに願った。
20年前の父親に会いたいと。
 
願いは叶い、少女は時間を巻き戻り20年前の父親に会いに行った。
会社が倒産する前の、自分の人生が確定する前のときの父親。
 
少女は父親にある日時の競馬の結果を教える。
それに従えば、大金持ちになれる、会社の危機も乗り越えられると。
 
父親がその言葉を信じるかは賭けだったが、少女は伝えたことに満足して元の世界に戻る。
 
その後、父親は少女の言葉を信じ、競馬でお金を得ることで会社の危機を乗り切った。
 
だが、少女は元の世界に戻ると同時に消滅してしまった。
 
終わり。

解説

父親は会社の危機を乗り切ったことで、お金持ちになり、本来、少女の母親となる人と結婚しなかった。
そのため、少女は生まれなかったことになり、消滅した。

 

彼女の犬

僕には好きな女の子がいる。
小学校の頃から10年以上想い続けている。
 
でも声を掛けたりはしない。
遠くから見てるだけで満足だ。
 
あとは彼女の物を収集するくらいだろうか。
例えば、彼女が鼻をかんだティッシュをゴミ箱から拾ったり、彼女の使っている消しゴムやキーホルダーなんかも取ったりしたこともある。
 
僕の一途な想いを考えれば、これくらいは許されるはずだ。
 
でも、僕の中でこの欲望がどんどんと大きくなっていく。
もっと、身近な物がほしい、そう考えていたときだった。
 
ふと、彼女がクラスメイトと週末に飼い犬の狂犬病の予防接種を受けに行くと話していた。
しかも家族総出で。
今は狂犬病が流行っているらしく、飼い犬が心配だと話す彼女の寂しそうな顔は僕の胸を締め付ける。
 
家族総出で出かけるということは、家には誰もいないということだ。
僕はこのチャンスを逃す手はないと考えた。
 
つまり、空き巣……彼女の物を手に入れる絶好のチャンスというとこだ。
 
そして週末、僕はずっと彼女の家の前で張り込みをした。
彼女の言う通り、家族で出ていくのを確認し、家に忍び込む。
 
彼女の家に入った瞬間、何とも言えない幸福感に満たされる。
だが、こんなことをしている場合ではない。
 
さっそく家の中で彼女の部屋を探す。
それはすぐに見つけることができた。
 
彼女の部屋。
そこに入ったという興奮は絶頂にも似た快感だった。
 
しばらくは彼女の部屋の床に寝そべったり、ベッドの上に乗ったりしていた。
しかし、目的を見余ってはいけない。
 
僕はすぐに物色を始めた。
こんなチャンスはもう二度とないだろう。
だからこそ、後悔のないものを持っていく。
 
もちろん、僕は彼女の下着を数枚もっていくことにした。
 
他にも何かないかと色々と漁っていたが、思ったよりも時間が経っていた。
仕方なく、下着だけを持って彼女の家を出る。
 
誰にも見つからないように、慎重に外に出る。
そして、彼女の家の敷地内から出ようとしたときだった。
 
急に足に激痛が走った。
見ると犬が僕の足に噛みついていた。
 
くそ、もう帰ってきたのか!
 
悲鳴を上げそうになったが我慢して、なんとか犬を振りほどいて、僕は逃げ去った。
 
その日の夜。
噛まれた足の傷が熱くて痛い。
 
病院に行こうと考えたが、彼女の家の犬が人を噛んだとなれば、殺処分されてしまうだろう。
それは駄目だ。
彼女が悲しむ顔なんて見たくない。
 
だから僕は我慢することにした。
 
傷の痛みはどんどんと酷くなるが、耐えてみせる。
これが僕の彼女の愛の深さなのだから。
 
終わり。

解説

彼女の家の犬が戻ってきているのなら、当然、家族も戻ってきていないとおかしい。
つまり、語り部を噛んだ犬は彼女の家の犬ではなく、野良犬。
そして、狂犬病が流行っていることから、その犬も狂犬病にかかっている可能性がある。
この後、語り部は命を落とすことになる。

 

清掃員

男は清掃員をやっている。
どこかの会社に所属しているのではなく、個人で依頼を受ける。
 
その男のことはあまり知られていないため、滅多に清掃の依頼は来ないが、単価が高いためなんとか食っていけるのだ。
 
以前は年に数回、依頼があるかどうかだが、最近は不景気のせいか月に1回は依頼がある。
 
今日も依頼があり、現場へ向かう用意をする男。
男の特性の洗剤とブラシ、ほうきに塵取り、ゴミ袋、ガムテープ、のこぎり、スコップ、ブルーシート。
いつもの道具を持って、男は家を出た。
 
依頼された場所へ行き、合鍵を使ってドアを開ける。
 
中を見て男は、今回は大変そうだとつぶやきながらも清掃を開始した。
そして、10時間後。
男は依頼通り、その部屋の清掃を終わらせた。
 
終わり。

解説

男は部屋の中にある死体も清掃する。
大変だとつぶやいたのは複数の死体があったためである。

 

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