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俺の実家は結構、田舎で娯楽といえるような施設が何もなかった。
その代わりなのかはわからないが、なにかとよくお祭りをしていた気がする。
1ヶ月に1回はかならずお祭りがあった。
子供の頃は退屈と感じることはなく、逆に毎日が充実していたと思う。
けれどそれは小学生までで、中学生になる頃には何もない村に嫌気がさしていた。
だから、大人になったら村を出て、町で暮らすのが夢にだった。
本当なら高校で村から出ていきたかったが、両親の寂しいという言葉に押し切られ、結局、高校は村に残ることになった。
意外なことに周りでは村から出ていきたいというやつは皆無で、みんな、村には不満を持っていない。
それもあってか、大学に進学したのは俺だけで、他はみんな地元に残って就職した。
そう考えると、俺は村の中ではちょっと異端だったのかもしれない。
けど、だからといって周りから敬遠されていたわけでもない。
普通に友達と遊んでいたし、親友と呼べるやつだっていた。
俺が村から出るときは見送りに来てくれ、休みになったら帰ってこいよ、なんて言ってくれた。
だから俺にとって村は刺激がなかっただけで、居心地が悪かったってことは全くなかった。
大学に通っているときは夏休みや冬休みなど、長期的な休みの時は大体は実家に帰っていたし、そのときは友達と遊んだりもした。
ただ、大学を卒業して就職した後は、長期的な休みなんてものはほとんどなく、帰郷の頻度は物凄く減った。
それでも1年に1度は必ず帰っていたし、帰れば、地元の友達と集まって飲んだりしていた。
しかし、去年はゴールデンウイークも、お盆も年末年始も仕事が忙しくて帰れなかった。
両親や友達は、仕事だから仕方ないけど、来年は帰って来るのを待ってると言ってくれた。
村を出ても繋がりが切れないことが、純粋に嬉しかった。
そんな温かい村だからこそ、みんなは村から出ようとは思わなかったのかもしれない。
正直、今なら村に残ったという人生でも、きっと後悔はしなかっただろうなと思う。
そんなときだった。
仕事がひと段落し、会社は去年ほとんど休みがなかったことを考慮してか、社員に5日の有給休暇を付与してくれた。
もちろん、全員が一気に休むのではなく、調整して順番に休みを取っていくことになった。
俺はまだ新人ということもあり、休みが取れたのはかなり後半で、しかも何も行事が重なっていない、いたって普通の平日になってしまった。
とはいえ、久しぶりの長い連休ということもあり、俺は帰郷することにした。
そのことを伝えるために両親や友達に電話したが、なぜかみんな繋がらない。
だからそのまま実家へと帰った。
村についてみると、何やら賑やかしい。
どうやら今日は祭りをやっているみたいだった。
久々に祭りを回ってみるかと思い、まずは荷物を置きに実家へと向かった。
だが、家に両親はいなかった。
とはいえ、合鍵は持っている。
だから俺は合鍵を取り出して鍵を開けようとした。
だけど、鍵が開かない。
というより、鍵穴に鍵が入らない。
ドアを見る限り変わっていないし、わざわざ鍵を変えるなんてことをするわけがない。
たぶん、違う鍵を持ってきてしまったんだろうと納得し、荷物は家の前に置いて祭り会場へと向かった。
会場にはたくさんの出店が出ていて、多くの人たちが食べ物を食べながら歩いている。
昼ご飯も食べていなかったこともあり、さっそく俺も出店へと入った。
焼きそばを注文したときだった。
さっきまでは景気よく挨拶していた店員だったが、俺の顔を見ると急に無表情になる。
「……お客さん。祭りは村の人間しか出れないんだよ」
そう冷たくあしらわれる。
何件か回ってみたが、みんな同じような対応をされた。
はっきり言って幻滅した。
ここまで排他的に扱われたのは初めてだった。
両親や友達以外の村の人間はこんな人だったのかと思うと、なんだか寂しい。
そう思っていると、出店の店員に見覚えのある人を見つけた。
友達のおじさんだ。
「おじさん、お久しぶりです」
俺はそう声をかけた。
だが――。
「……お客さん。祭りは村の人間しか出れないんだよ」
さっきの人たちと同じ態度で、そう言われてしまった。
「いやいや。何言ってるんですか。俺ですよ、俺」
「……は? 新手のオレオレ詐欺かい? そんなくだらないことは他でやってくれ」
そう吐き捨てられてしまう。
俺は混乱した。
顔を忘れられるはずがない。
だって、2年前にちゃんと会って、挨拶もしている。
去年帰れなかったからといって、1年で忘れらるなんてことはないはずだ。
それからも知り合いを見つけては声をかけるが、みんな同様に冷たくあしらわれてしまう。
俺は何度も両親や友達に電話をかけるが繋がらない。
なので、直接友達の家に行くことにした。
インターフォンを押すと、中から友達が出てくる。
「……誰?」
開口一番にそう言われた。
悪い夢を見ているんじゃないかと思い、何度も頬をつねるがそのたびに痛みを感じる。
俺はこれ以上は出回らず、実家の前で両親が帰って来るのを待つことにした。
ドアの横に座り、両親を待つ。
すると――。
「おい、人の家の前でなにやってるんだ!」
父さんがが顔をしかめてそう言った。
その横では母さんが不安そうな顔でこっちを見ている。
俺は息子だ、と言いたいところだったが、その言葉を飲み込み、走り出した。
なぜなら両親の口から否定の言葉が出てくるのが怖かったからだ。
辺りは既に暗くなり始めていたけど、俺はそのまま村から出た。
そして、家に帰り、混乱と恐怖にかられながら過ごした。
それからしばらくして、母さんから電話が来た。
恐る恐る取ってみると、いつもの調子でこんなことを言われた。
「今年の年末は帰れるの? 去年帰ってこなかったから、お父さんも会いたがってたよ」
俺は曖昧に濁して、電話を切った。
もちろん、今年は年末年始の休みは取れる。
でも、帰郷するかはいまだに悩んでいる。
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