【洒落怖】あのお店のマネキン、お姉さんに似すぎてる

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帰りのホームルームが終わると同時に、僕はカバンを持って立ち上がる。

あっちゃんが「たまには一緒に遊ぼう」って誘ってくるけど、「ごめん」って言って玄関まで走る。
教室を出るときに、友達が「あいつ、最近すぐに帰るよな」って言ってるのが聞こえてきた。
それは正直、僕も気にはなってる。
そのうち、みんなに遊んでもらえなくなるんじゃないかって。

でも、それ以上に、僕には大切なことがある。

それは――。

「あら、ようちゃん。いらっしゃい」

服屋さんに寄ることだ。

「お姉さん、こんにちは」
「ふふ。ようちゃんは本当に洋服が好きなのね」
「う、うん……」

本当はお姉さんとお話ししたくて来てるんだけど、そんなことは恥ずかしくて言えない。
だから、服が好きって言って、いつもこのお店に来るのだ。

お姉さんに、今日学校であったことを話すと、楽しそうに聞いてくれる。
だから、僕は一生懸命、学校であったことや友達のことをいっぱい話す。

でも、お店にお客さんが来たら、お姉さんはお客さんと話さないとならないから、僕はその間、お店の中を見て回る。
お母さんよりも、もっと若い人が着るような服が並んでいる。
正直に言って、服には全然興味がない。
今着ている服だって、お母さんが適当に買ってきた服だ。

だから、お店の中を見て回っても、全然楽しくない。

早くお姉さんとお話ししたいな。

そう思いながら、チラッとお姉さんを見る。
まだ、お客さんとお話ししていた。

早く、お話が終わって欲しいと思うけど、ジッと見てるとお姉さんの迷惑になってしまう。
この前なんか、お客さんが僕が睨んでると言って、怒って帰ってしまった。
そのとき、お姉さんは困ったような顔をして、「お客さんのことはあんまり見ないでね」と言われた。

それからはなるべくお客さんの方を見ないで、なんとか時間を潰す。

お客さんが買い物をして出て行ったら、またお姉さんに話しかけるのだ。

こんな感じで、学校が終わったらすぐにお店に行って、お姉さんとお話しして、5時くらいになったら家に帰る。
毎日、こんなふうにお姉さんに会いに行っていた。

今日もいつものように、帰りのホームルームが終わったら、お姉さんに会いにお店へと向かう。

「お姉さん、こんにちは」

お店に入ると、お姉さんが泣いていた。

「だれ? この子?」

お姉さんと話していた女の人が僕を怖い目で見ながら言った。

僕はすぐにピンときた。
この女の人がお姉さんを泣かせたんだって。

「お姉さんをイジメるな!」

僕は勇気を振り絞って、女の人に怒鳴った。
だって、お姉さんを守りたかったから。

でも、そんな僕にお姉さんは涙を拭きながら、「ようちゃん。今日は帰って」って言って、店の外まで僕の背中を押してきた。

なにがなんだかわからない。
僕はただ、お姉さんを女の人から助けてあげたかっただけなのに。

だけど、お姉さんに帰ってって言われたから、帰るしかなかった。
その日は寝るときも、朝起きて、学校にいる間もずっとお姉さんのことを考えてた。

帰りのホームルームが終わったら、すぐにお店へと走る。

「お姉さん、こんにちは」
「ようちゃん、いらっしゃい」

いつものようにお姉さんは笑ってくれたけど、どこか寂しそうな感じがした。

そこで僕は昨日のことを聞いてみた。

「それがね、私、昨日マネキンを壊しちゃったの」
「マネキン?」

お店の外から見える、服を着せる人形のことらしい。

「店長のお気に入りのマネキンだったから、物凄く怒られちゃって……」

またお姉さんが泣きそうな顔になる。

僕はなんとかお姉さんに元気になってもらいたかったけど、何をしていいのかわからなかった。

いつもは僕がたくさんお話するんだけど、今日はずっとお姉さんがお話ししていた。
店長って人は、いつもお姉さんをイジメるらしい。
「要領が悪い」とか「外見がいいだけ」とか「売り上げが悪いのあんたのせい」とか、色々言ってくるみたいだ。

「そんな人とは絶交すればいいよ」

僕がそう言うと、「それができればいいんだけどね。私、このお店が好きだからなぁ」ってお姉さんが言った。

僕はそれがどういう意味かわからなかった。
でも、お姉さんはあの女の人と絶交はできないっていうのは何となくわかった。

次の日。
いつも通りにお店に行く。

「お姉さん、こんにちは」

そう言ってお店に入ったけど、そこにお姉さんはいなかった。
代わりに、お姉さんが店長って言っていた女の人がいた。

「なんなの? あんたみたいな子供が来る場所じゃないんだけど」
「あ、あの……お姉さんは?」
「ああー、あの子? 辞めたわよ」
「え?」

頭が真っ白になった。

辞めたってどういうことだろう?
お姉さんに、もう会えないってこと?

そんなことを考えてたら、女の人がギロッと睨んでくる。

「出ていきなさい!」

女の人に怒られて、僕は泣きそうになりながらお店の外に出た。

なんで、お姉さん、お店を辞めちゃったんだろう。
お店が好きだって言ってたのに。

僕は凄く気持ちが落ち込んだから、もう帰ろうと思った。

でも、そのとき、ふとあるものを見つけた。

それはお姉さんがマネキンって言っていた、服を着せる人形だ。

お店の窓のところに置いてあるマネキン。
それがなんだかお姉さんに似ている気がした。

それから僕はマネキンを見に、お店に行くようになった。

お店に行くと言っても、お店の外からマネキンを見るだけだ。
もうお姉さんには会えないけど、マネキンを見ていると、お姉さんと会っているような気持になる。

学校が終わってすぐにお店に行って、5時までずっとマネキンを見る。

時々、女の人に見つかって怒られるけど、僕はそれでも毎日、お店に通った。

そんなあるときだった。
マネキンを見ていると、マネキンが僕の方を見た。

僕はビックリして、思わず声を出しそうになった。

「ようちゃん。たすけて」

確かにそう聞こえた。
マネキンがしゃべったんだ。

だから、僕はマネキンとお話しするためにお店に入った。

そしたら、女の人に凄く怒られた。
お母さんも呼ばれた。

お母さんは何度も女の人に謝っていた。
その夜、僕はお母さんに物凄く怒られた。
もう、お店に行っちゃダメって言われた。

でも、次の日、僕は気になってお店に行った。

「あれ?」

お店はもうなかった。
お店の中を覗いても、何もない。

お姉さんに似ているマネキンも。

それでもずっとお店に行き続けた。

あるとき、お店は違うお店になってしまった。

それから僕はお店に行くことはなくなった。
学校が終わると友達と遊ぶようになっていく。

あれからもう1年くらい経って、お店のことも忘れるようになってきた。

でも、マネキンを見ると、いつも思い出す。

お姉さんに似た、あのマネキンは一体、何だったんだろうって。

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