【洒落怖】緊急病棟にて

洒落にならない怖い話

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私は緊急病棟で看護師として働いている。
主に、夜間の方の担当で、大体は昼に処置した患者さんに何かあればすぐに対処する。

時々、夜間にも患者はやってくるが、昼と比べるとそこまで多くない。
本当は昼勤も夜勤も交代でやるのが普通だけど、私は周りがバタバタするとテンパってミスするからほとんど夜勤に回されている。

最初は眠くて辛かったけど、今では大分慣れて、完全に昼夜逆転してしまった。
それを喜んでいいのか、悪いのかはわからないけれど。

そんなあるとき、あるおばあちゃんが運ばれてきた。
脳卒中だった。
緊急手術で、一命をとりとめたものの、未だに意識を取り戻していない。

そのおばあちゃんは、一人暮らしの上、親戚等がいないらしい。
なので家族を呼ぶこともできない。
治療費はもちろんのこと、意識が戻ったあとも身元を引き受けてくれる人がいないという絶望的な状況だ。

だからといって、治療しないわけにはいかない。
心電図モニターに異常があれば、すぐに駆け付ける体制になっている。
それとは別に、五時間おきには様子を見に行くことになっていた。

最初に変だと思ったのは、見回りの時だった。

普通ならピッ、ピッ、ピッと一定の間隔で音が鳴る。
それなのに、おばあちゃんの心電図モニターからは、ピピッ、ピーピー、ピッと不自然な間隔で鳴っている。
そのときは慌てて、先生を呼んだのだけど、先生が来たときには正常な音に戻っていて、特に異常は見つからなかった。

そもそも、心電図モニターが乱れれば、アラームが鳴るはずだ。
それなのに、履歴を見ても、そんなアラームが鳴った記録はない。

そして、それは次の日にも起こった。

ピピッ、ピーピー、ピッ、ピピッ、ピー、ピピッと、明らかに異様な間隔で音が鳴っている。
おばあちゃんを見てみるけど、特に異常もなさそうに眠っている。
そして、もちろん、異常を示すアラームも鳴っていない。

私は、その音の間隔にどこか規則性があることに気付く。

ジッと聞いていると、異様な間隔だけど、その中にも何か規則性のようなものを感じた。
さらにずっと聞いていると、ふと閃いた。

モールス信号。

トン、ツーの組み合わせで言葉を表すというものだ。
前に漫画か何かで読んだ記憶がある。

さっそく、私はネットで調べながら、心電図モニターの音を聞く。

『ひ、と』と読めた。
やっぱり、モールス信号だったんだ。

私は続きを聞く。

『ご、ろ、し』

一瞬、頭が真っ白になった。

『ひ、と、ご、ろ、し』

確かに、そう表している。
それを繰り返し、繰り返し、心電図モニターから聞こえてくるのだ。

もしかしたら、おばあちゃんは、私に何かを知らせたいのかもしれない。
そう思って、私はおばあちゃんの傍まで歩み寄った。

「人殺しって、誰のこと?」

そう言った瞬間だった。

いきなりおばあちゃんは目を開いて、私の腕を掴んだ。

「お前だよ!」

そう言った後、おばあちゃんは糸が切れた人形のように、力が抜け、目を閉じた。
そして、心電図モニターから警報音が鳴り響いた。

慌てた様子で、先生と先輩たちが病室に入ってきて、処置を行った。

けれど、おばあちゃんはそのまま亡くなってしまった。

結局、おばあちゃんの遺体の引き取り手がなく、無縁仏に入れられることになった。

それにしても、どうしておばあちゃんは、私を人殺しと言ったのだろう。
あのときのおばあちゃんの形相は5年たった今でも忘れることができない。